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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 夏 六月

2015年06月14日 | 日本古典文学-夏

六月
ぎおんつしまに サテことならぬ 中橋(なかばし)あるいは小舟町(こぶなちょう) 四谷 蔵前 四天王 いづれおとらぬ にぎやかさ あついまなかに ひとの山 天王様は 酒ずきか 笹とさか木に よつたやら よいよいわいわいはやされて それからみこしが すはります
(とっちりとん「十二ヶ月」~岩波文庫「江戸端唄集」)


季節表現 夏 六月

2015年06月14日 | 日本古典文学-夏

六月(ろくぐわつ)
 照(て)り曇(くも)り雨(あめ)もものかは。辻々(つじつじ)の祭(まつり)の太鼓(たいこ)、わつしよいわつしよいの諸勢(もろぎほひ)、山車(だし)は宛然(さながら)藥玉(くすだま)の纒(まとひ)を振(ふ)る。棧敷(さじき)の欄干(らんかん)連(つらな)るや、咲(さき)掛(かゝ)る凌霄(のうぜん)の紅(くれなゐ)は、瀧夜叉姫(たきやしやひめ)の襦袢(じゆばん)を欺(あざむ)き、紫陽花(あぢさゐ)の淺葱(あさぎ)は光圀(みつくに)の襟(えり)に擬(まが)ふ。人(ひと)の往來(ゆきき)も躍(をど)るが如(ごと)し。酒(さけ)はさざんざ松(まつ)の風(かぜ)。緑(みどり)いよいよ濃(こまや)かにして、夏木立(なつこだち)深(ふか)き處(ところ)、山(やま)幽(いう)に里(さと)靜(しづか)に、然(しか)も今(いま)を盛(さかり)の女(をんな)、白百合(しらゆり)の花(はな)、其(そ)の膚(はだへ)の蜜(みつ)を洗(あら)へば、清水(しみづ)に髮(かみ)の丈(たけ)長(なが)く、眞珠(しんじゆ)の流(ながれ)雫(しづく)して、小鮎(こあゆ)の簪(かんざし)、宵月(よひづき)の影(かげ)を走(はし)る。
(泉鏡花「月令十二態」~青空文庫より)


「岩垣清水」用例

2015年06月13日 | 日本国語大辞典-あ行

 「岩垣清水」という単語の早い用例として『日本国語大辞典・第二版』は1265年の「続古今集」和歌をあげていますが、もっとさかのぼる用例があります。

掬ぶ手の石間をせばみ奥山の岩垣清水飽かずもあるかな
(古今和歌六帖、第五、初めてあへる)
『校註国歌大系 第九巻』国民図書、1929年、450ページ

こけちもる-いはかきしみつ-むすひかね-あくへくもあらぬ-きみにもあるかな
(基俊集・84)日文研HPの和歌データベースより


「氷室守(ひむろもり」用例

2015年06月12日 | 日本国語大辞典-は行

 「氷室守(ひむろもり」という単語は、『日本国語大辞典・第二版』では1532年の俳句を早い例としてあげていますが、さかのぼる用例が有ります。

冬とぢし岩戸あけても氷室守夏はとほさぬ関路なりけり
(6・俊成五社百首、日吉社百首和歌、433)
『新編国歌大観 第10巻』角川書店、1992年、95ページ

氷室
松か崎いそく都のつとにおきて氷をはこふ氷室守かな
朝氷室
木の間もる朝日に出たす氷室守やかてしつくや袖に涼しき
(草根集)日文研HPより

いとど氷室の構へして立ち去ることもなつかげの水にも澄める氷室守夏衣なれども袖冴ゆる気色なりけり(「氷室」)
『謡曲集・下(新潮日本古典集成)』伊藤正義校注、1988年、144ページ


古典の季節表現 夏 六月

2015年06月06日 | 日本古典文学-夏

 おなし人みなつきはかりにはきの青き下葉のたはみたるを折て
これをみようへはつれなき夏萩のしたはこく社思ひ乱るれ
(清少納言集~群書類従15)

釣殿(つりどの)に御堂作りはてたれば、佛皆遷し奉り給ひて、蓮(はちす)の花ざかりに供養ありて、これより八講行はせ奉り給ふ御心まうけ、尋常ならず。(略)そこ清く払ひ流されたる池のおもて、緑深う霞み渡りたるに、蓮の花のいろいろ開けわたるほど、誠に極楽の八功徳、血の池もかうこそあらめとおもひやられて、すゞしくいみじきに、(略)
(浜松中納言物語~「日本文学大系」)

六月になりぬ。暑さ所せきにも、まづこぞの此の頃は、事もなく御心地よげにあそばせ給ひて、堀河のいづみ、人々見むとありしを、何とおぼしめししにか、あながちにすすめつかはししかば、思召しし事なれば、まづあすとて我は出でて人たち待ちしに、二車ばかりのりつれて、日ぐらし遊びて帰りしにみればこよひとまりて心やすき所にてうちやすまんと思ひてとどまりしを、常陸殿といふ女房、「あなゆゆし。たゞ参らせ給へ。扇引など人々にせさせんなどありし。御扇どもまうけて待ち参らせ給ふに」とあれば、此の人たちに具して参りぬ。待ちつけて、泉のありさまうちうちに問ひなどして、「扇引、こよひさは」と仰せられしかば、「あけんが心もとなさに、こよひと思ふに、人たちのけしきのくらくて見えざらんこそ口をしく候へ」と申ししかば、つとめて明くるやおそきと始めさせ給ひ、人たち召しすゑて、大弐三位殿をはしつめてゐあはれたりしに、「まづ引け」と仰せられしかば引きしに、うつくしと見しをえ引きあてで、中にわろかりしを引きあてたりしを、上に投げおきしかば、「かかるやうやある」とて笑はせ給ひたりし事を、但馬殿といふ人の、「家の子の心なるや。こと人はえせじ」など興じあはれしに、そのをりは何ともおぼえざりし事さへ、いかでさはし参らせけるにかとなめげに、けふはありがたく覚ゆる。
(讃岐典侍日記~岩波文庫)

かくてつれづれと六月になしつ。ひんがしおもてのあさひのけいとくるしければみなみのひさしにいでたるに、つゝ ましき人のけぢかくおぼゆればやをらかたはらふしてきけばせみのこゑいとしげうなりにたるを、おぼつかなうてまだみゝをやしなはぬおきなありけり。にははくとてはゝきをもちてきのしたにたてるほどに、にはかにいちはやうなきたればおどろきてふりあふぎていふやう「よいぞよいぞといふなはぜみきにけるは、むしだにときせちをしりたるよ」とひとりごつにあはせてしかしかとなきみちたるにをかしうもあはれにもありけんこゝちぞあぢきなかりける。
(蜻蛉日記~バージニア大学HPより)

 みな月のころ中殿の作文せさせ給題は式部大輔藤範たてまつる久しかるべきは賢人の徳とかや聞えしにや。女のまねぶへき事ならねばもらしつ。上達部殿上人三十餘人まいれり。関白殿〈房実〉計直衣にて御几帳のうしろにさふらはせ給ふ。うへは御ひきなをし御琵琶〈玄上〉ひかせ給ふ。右大将〈実衡〉琵琶。春宮大夫箏。権大納言〈祖房〉笙。権中納言氏忠和琴左宰相中将〈兼泰〉笙。右衛門督〈嗣家〉笛。右宰相中将〈光忠〉篳篥。拍子はれいの左のおとゞ〈実泰〉すゑは冬定なりしにや。うへの御琵琶のねいひしらずめでたし。右大将はなどにかあらむ心がけてもかきたてられざりき。御遊はてゝのち文臺めさる。蔵人内記俊基人++の文をとりあつめて一度に文臺のうへにおく。披講のをはる程に。みじか夜もほの++とあけはてぬ。御製を左のおとゞかへす++誦じてうるはしく朗詠にしたまふ。こゑいとうつくし。おりふし郭公の一聲なのりすてゝすぎたるはいみじくえんなり。
(増鏡~国文学研究資料館HPより)

かりはやすあさのたちえにしるきかななつのすゑはになれるけしきは
(夫木抄~日文研HPより)

水無月の河原に生ふる八穂蓼のからしや人に逢はぬ心は
(古今和歌六帖~校註国歌大系・第九巻)

ゆふだちて夏はいぬめりそほちつつ秋のさかひにいつかいるらん
(古今和歌六帖~新編国歌大観2)

夏と秋と行あひちかき空なればさぞな夜渡る月はすずしき
(宝治百首~新編国歌大観4)

シテサシ「半ゆく空水無月の影更けて。秋程もなみ御秡川。
二人「風も涼しき夕波に。心も澄める水桶の。もちがほならぬ身にしあれど。命の程は千早振る。神に歩を。運ぶ身の。宮居曇らぬ。心かな。
下歌「頼む誓は此神によるべの。水を汲まうよ。
上歌「御手洗の。声も涼しき夏陰や。声も涼しき夏陰や。糺の森の梢より。初音ふり行く時鳥なほ過ぎがてに行きやらで。今一通り村雨の。雲もかげろふ夕づく日。夏なき水の川隈汲まずとも影は。疎からじ汲まずとも影はうとからじ。
(謡曲・賀茂~謡曲三百五十番)

六月の比、あやしき家にゆふがほの白く見えて、蚊遣火ふすぶるもあはれなり。六月祓またをかし。
(徒然草~バージニア大学HPより)