「雪の花」という用法があるなら、「雪の花園」という用法もあるのではないかと思い、調べてみると複数の用例がありました。ちなみに、日本国語大辞典には立項されていません。意味は、「雪の降り積もった情景を花園に見立てていう語。」。
竹河の橋より見れは木にもあらす草にもあらぬ雪の花園
(『契沖全集 第13巻』岩波書店、1973年、194ページ。漫吟集類題、巻十・冬歌下、雪、3279)
夜の間にやふりつもるらんよし野山のこる枝なき雪の花園
(『本居宣長全集 別巻三』筑摩書房、1993年、691ページ。歌合評補遺、明和七年寅閏六月初度 十六番歌合、朝雪、十六、右)
志賀の浦やふるき都は道絶えて雪の花園行く人もなし
(『新編国歌大観 第八巻 私家集編4 歌集』角川書店、1990年、696ページ。35・雪玉集、故郷雪、5703)
さゝ波やふるき宮木は埋れて又このころの雪のはなその
(塙保己一編『群書類従 第十一輯(訂正三版)』続群書類従完成会、1993年、24ページ。巻第百六十三・為尹卿千首、冬、故郷雪)
あれにける志賀の山里冬くればところもわかぬ雪の花ぞの
(『校註国歌大系 第廿一巻』国民図書、1930年、528ページ。夫木和歌抄巻第十八・冬部三、雪、為家)
ふりにける跡ともけさはみえぬかな志賀のみやこの雪の花園
(塙保己一編『群書類従 第十一輯(訂正三版)』続群書類従完成会、1993年、244ページ。巻第百七十・正治二年第二度百首和歌、藤原雅経、雪)