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古典和歌をメインにブログを書いてます。歌題ごとに和歌を四季に分類。

古典の季節表現 五月 五月雨

2013年05月31日 | 日本古典文学-夏

堀川院の御時、百首の歌奉りける時、五月雨の歌とてよめる 藤原基俊
いとゝしく賎のいほりのいふせきに卯花くたし五月雨そする
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

伏見院の御時五十番歌合に、夏雨を読侍ける 前大納言経親
樗さく梢に雨はやゝはれて軒のあやめにのこるたま水
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

嘉元百首歌に、五月雨を 後山本前左大臣
かはつなく沼の岩かき波こえてみくさうかるゝ五月雨の比
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

ござさしく古里小野の道のあとをまた澤になすさみだれの頃
(山家集~バージニア大学HPより)

崇徳院に百首の歌奉りける時、よめる 前参議親隆
五月雨は水のみかさやまさるらしみおのしるしも見えすなり行
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

つくづくと軒の雫をながめつゝ日をのみくらす五月雨のころ
(山家集~バージニア大学HPより)

題知らず 古里尋ぬるの権大納言
晴るくべき方こそなけれつれづれと眺め暮らせる五月雨の空
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

題知らず 見れども飽かぬの関白
五月雨の空とおぼゆる心かないつの雲間に晴れんとすらむ
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

先帝の宣耀殿の女御いまだ参り侍らざりけるに、五月雨の晴れ間なきころたまはせける 女の宿世知らずの第二のみかどの御歌
人知れぬながめもいとどくらされて慰めがたきころの空かな
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

題しらす 躬恒
五月雨にみたれそめにし我なれは人を恋路にぬれぬへら也
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

四月一日比、雨ふりける夜忍ひて人に物いひ侍て後、とかくひむあしくて過けるに、五月雨の比申つかはしける 皇太后宮大夫俊成
袖ぬれしその夜の雨の名残よりやかて晴せぬ五月雨の空
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

ふりくらすさつきのそらのなかめにはねのみなかれてひとそこひしき
(夫木抄~日文研HPより)

物思ひけるころ、五月になりてはいとどひまなき空のけしきにつけても、思ひやるかたなかりければ みかはに咲ける前関白
我が思ふ人に見せばや五月雨の空にもまさる袖の滴を
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

雨の降侍りけるよ女に 藤原長能 
かきくらし雲まもみえぬ五月雨はたえすもの思ふわか身也けり 
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

さみたれにとふひともなきやまさとはのきのしつくのおとのみそする
(六条宰相家歌合~日文研HPより)

歎く事侍けるに、なか雨少はれま有比よめる 民部卿顕頼
五月雨の空も限は有物を心のやみのはるゝまそなき
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

前大納言為家身まかりて後、日数過るほとに、前大納言為氏許に申つかはしける 入道前太政大臣 
五月雨の日数はよそに過なからはれぬ涙や袖ぬらすらん 
(新後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)

(略)れいのうちわたりにもすみぞめにてはへばえしきこともなし
五月雨はいとなみだもよほすつまなり
すきにし御こともおななじほどにのみおはしませば故院の大貳の三位のもとに少将のないし
  又もなをのこりありけりさみたれにふりつくしてしなみだとおもふに
かへし
  さみだればむかしもいまもなみたかはおなじながれとみつまさりけり
(栄花物語~国文学研究資料館HPより)

中園入道前太政大臣かくれ侍ての比、先師益守僧正おなしく身まかりける又のとしの夏、五月雨を 前大僧正杲守
ほしわひぬ去年の涙の藤衣ころも忘ぬさみたれの空
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

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古典の季節表現 夏 郭公・時鳥(ほととぎす)

2013年05月31日 | 日本古典文学-夏

題しらす よみ人しらす
いつのまにさ月きぬらん足曳の山郭公いまそ鳴なる
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

ほとときすはなたちはなのあさつゆにをはうちならしいまそなくなる
(為忠家後度百首~日文研HPより)

よになれぬたたひとこゑもほとときすはなたちはなにかくれてそなく
(元真集~日文研HPより)

おなし心(聞郭公)を 入道二品親王性助
ほとゝきすたゝ一こゑもほのかにて雲まの月に猶またれつゝ
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

子規をよめる 権僧正永縁
きく度にめつらしけれは時鳥いつもはつ音の心ちこそすれ
(金葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

待つことは初音までかと思ひしにきゝふるされぬ時鳥かな
(山家集~バージニア大学HPより)

題しらす 藤原基名 
待人のためならすともほとゝきすをのか五月に声なおしみそ 
(新後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

嘉元百首歌に 二品法親王覚助
めくり逢おなし五月の郭公聞ふるしても猶そあかれぬ
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

をりしもあれすすしくくもるむらさめのくもまにきなくやまほとときす
(後鳥羽院御集~日文研HPより)

入道前関白右大臣に侍ける時、百首歌よませ侍ける時、時鳥歌 皇太后宮大夫俊成
雨そゝく花橘に風過てやまほとゝきすくもになくなり
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

夏山の木末の茂に霍公鳥鳴き響むなる声の遥けさ
(万葉集~バージニア大学HPより)

 窓のもとにひとりこゝろすまして侍りけるおりふし時鳥のなきわたるをきゝてよみ侍りける
ねかはしなわかゐる園に時鳥心のまゝに聞よしもかな
(櫻井基佐集~群書類従15)

郭公を 前大納言為兼
おりはへていまこゝになく時鳥きよくすゝしき声の色かな
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)

さむしろにあやめのまくらそはたててきくもすすしきほとときすかな
(為忠家後度百首~日文研HPより)

さつきやみくらふのやまのほとときすほのかなるねににるものそなき
(拾遺愚草~日文研HPより)

かたらひしその夜の聲は時鳥いかなるよにもわすれむものか
(山家集~バージニア大学HPより)

人々によませ侍ける百首に、郭公を 中務卿親王
一声をあかすも月に鳴すてゝ天の戸わたるほとゝきすかな
(続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

月前郭公といへる心をよめる 賀茂成保
五月雨の雲のたえまに月さして山時鳥空に鳴なり
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

題しらす 後鳥羽院御製
夏の夜の夢路にきなく子規さめても声は猶残りつゝ
(新後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

郭公なべてきくには似ざりけりふかき山邊のあかつきのこゑ
(山家集~バージニア大学HPより)

たいしらす 後鳥羽院御製
ほとゝきす雲のいつくにやすらひて明かたちかき月に鳴らん
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

よもすからかたらひおきてほとときすいつちゆくらむあけほののそら
(正治初度百首~日文研HPより)

暁聞時鳥といへる心をよみ侍ける 右大臣
ほとゝきす鳴つるかたを詠れはたゝ在明の月そ残れる
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
.

聞霍公鳥喧作歌一首
いにしへよ偲ひにければ霍公鳥鳴く声聞きて恋しきものを
(万葉集~バージニア大学HPより)

いにしへに恋ふらむ鳥は霍公鳥けだしや鳴きし我が念へるごと
(万葉集~バージニア大学HPより)

寛平御時きさいのみやの歌合のうた きのとものり
さみたれに物思ひをれは時鳥夜ふかく鳴ていつち行らん
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

宝治元年十首歌合に、五月郭公 右近大将通忠
橘のにほふさ月のほとゝきすいかに忍ふるむかしなるらん 
(続拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)

なげきわびもの思ふころは郭公わがためにのみなくかとぞ聞く
(宗尊親王御百首)

病にしつみ侍ける比、郭公をきゝて 太宰権帥為経
年ことに聞し雲ゐの時鳥この五月こそかきりなりけれ
(新千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

 ほととぎす、ありつる垣根のにや、同じ声にうち鳴く。「慕ひ来にけるよ」と、思さるるほども、艶なりかし。「いかに知りてか」など、忍びやかにうち誦んじたまふ。
 「橘の香をなつかしみほととぎす花散る里をたづねてぞとふ
(略)
 「人目なく荒れたる宿は橘の花こそ軒のつまとなりけれ」
(源氏物語・花散里~バージニア大学HPより)

 その後は、いとど行ひにのみ心を入れつつ、明け暮れ経読み、念仏申しつつ、いとのどかにて明かし暮らし給ふに、都にては、雲居はるかに聞きしほととぎすも、軒近き花橘に声惜しまぬもいとあはれにて、侍従、
  いにしへを汝(なれ)もや偲ぶほととぎす花橘に来ゐつつぞ鳴く
少し鼻声になりて言へば、姫君、
  いにしへも何偲ぶらんほととぎす死出の山路の道しるべせよ
(兵部卿物語~「兵部卿物語全釈」武蔵野書院)

紫の上かくれ侍りて後、ほととぎすの鳴きけるを聞かせ給ひて 六条院御歌
亡き人をしのぶる宵の村雨にぬれてや来つる山ほととぎす
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

一条院隠れさせ給ひて後、花橘のかをれるほどに、ほととぎすま近く声すればよませ給ひける 床中のみかどの御歌
昔のみ恋ふと知りてやほととぎす花橘をとめて来つらん
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)

ほととぎすは、なほさらにいふべきかたなし。いつしかしたり顔にも聞えたるに、卯の花・花橘などにやどりをして、はたかくれたるも、ねたげなる心ばへなり。五月雨のみじかき夜に寝覚をして、いかで人よりさきにきかむとまたれて、夜ふかくうちいでたるこゑの、らうらうじう愛敬づきたる、いみじう心あくがれ、せんかたなし。六月になりぬれば、音もせずなりぬる、すべていふもおろかなり。
(枕草子~岩波文庫)

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古典の季節表現 夏 盧橘

2013年05月31日 | 日本古典文学-夏

四月のつごもり、五月のついたちなどのころほひ、橘の濃くあをきに、花のいとしろく咲きたるに、雨のふりたる翌朝などは、世になく心あるさまにをかし。花の中より、 實のこがねの玉かと見えて、いみじくきはやかに見えたるなど、あさ露にぬれたる櫻にも劣らず、杜鵑のよすがとさへおもへばにや、猶更にいふべきにもあらず。
(枕草子~バージニア大学HPより)

題しらす 読人しらす
さ月まつ花たち花のかをかけはむかしの人の袖のかそする
(古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

盧橘暮薫といへる心を 基俊
袖ふれし昔の人そ忍はるゝ花立はなのかほる夕は
(続千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

 二十日の月さし出づるほどに、いとど木高き影ども木暗く見えわたりて、近き橘の薫りなつかしく匂ひて、女御の御けはひ、ねびにたれど、あくまで用意あり、あてにらうたげなり。
 「すぐれてはなやかなる御おぼえこそなかりしかど、むつましうなつかしき方には思したりしものを」
 など、思ひ出できこえたまふにつけても、昔のことかきつらね思されて、うち泣きたまふ。
 ほととぎす、ありつる垣根のにや、同じ声にうち鳴く。「慕ひ来にけるよ」と、思さるるほども、艶なりかし。「いかに知りてか」など、忍びやかにうち誦んじたまふ。
 「橘の香をなつかしみほととぎす花散る里をたづねてぞとふ
(略)
 「人目なく荒れたる宿は橘の花こそ軒のつまとなりけれ」
(源氏物語・花散里~バージニア大学HPより)

家の歌合に盧橘をよめる 中納言俊忠
さ月やみ花たちはなのありかをは風のつてにそ空にしりける
(金葉和歌集~国文学研究資料館HPより)

花橘薫枕といへる心をよめる 藤原公衡朝臣
おりしもあれ花たちはなのかほるかな昔を見つる夢の枕に
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)

花山院宰相中將、いろにてこもりゐられたりしに、南殿のたち花さかりなりしを、一枝をりてつかはすとて、兵衞督どのにかはりて、辨内侍、
あらざらむ袖の色にも忘るなよ花たちばなのなれし匂ひを
返し、宰相中將色のうすやうにかきて、しきみの枝につけたり。
いにしへに馴れし匂ひを思ひ出で我袖ふればはなやゝつれむ
(弁内侍日記~群書類從)

子の身まかりにけるつきの年の夏、かの家にまかりたりけるに、はな橘のかほりけれはよめる 祝部成仲
あらさらむ後忍へとや袖の香を花たちはなにとゝめをきけん
(新古今和歌集~国文学研究資料館HPより)

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