堀川院の御時、百首の歌奉りける時、五月雨の歌とてよめる 藤原基俊
いとゝしく賎のいほりのいふせきに卯花くたし五月雨そする
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
伏見院の御時五十番歌合に、夏雨を読侍ける 前大納言経親
樗さく梢に雨はやゝはれて軒のあやめにのこるたま水
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)
嘉元百首歌に、五月雨を 後山本前左大臣
かはつなく沼の岩かき波こえてみくさうかるゝ五月雨の比
(風雅和歌集~国文学研究資料館HPより)
ござさしく古里小野の道のあとをまた澤になすさみだれの頃
(山家集~バージニア大学HPより)
崇徳院に百首の歌奉りける時、よめる 前参議親隆
五月雨は水のみかさやまさるらしみおのしるしも見えすなり行
(千載和歌集~国文学研究資料館HPより)
つくづくと軒の雫をながめつゝ日をのみくらす五月雨のころ
(山家集~バージニア大学HPより)
題知らず 古里尋ぬるの権大納言
晴るくべき方こそなけれつれづれと眺め暮らせる五月雨の空
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)
題知らず 見れども飽かぬの関白
五月雨の空とおぼゆる心かないつの雲間に晴れんとすらむ
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)
先帝の宣耀殿の女御いまだ参り侍らざりけるに、五月雨の晴れ間なきころたまはせける 女の宿世知らずの第二のみかどの御歌
人知れぬながめもいとどくらされて慰めがたきころの空かな
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)
題しらす 躬恒
五月雨にみたれそめにし我なれは人を恋路にぬれぬへら也
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
四月一日比、雨ふりける夜忍ひて人に物いひ侍て後、とかくひむあしくて過けるに、五月雨の比申つかはしける 皇太后宮大夫俊成
袖ぬれしその夜の雨の名残よりやかて晴せぬ五月雨の空
(玉葉和歌集~国文学研究資料館HPより)
ふりくらすさつきのそらのなかめにはねのみなかれてひとそこひしき
(夫木抄~日文研HPより)
物思ひけるころ、五月になりてはいとどひまなき空のけしきにつけても、思ひやるかたなかりければ みかはに咲ける前関白
我が思ふ人に見せばや五月雨の空にもまさる袖の滴を
(風葉和歌集~岩波文庫「王朝物語秀歌選」)
雨の降侍りけるよ女に 藤原長能
かきくらし雲まもみえぬ五月雨はたえすもの思ふわか身也けり
(後拾遺和歌集~国文学研究資料館HPより)
さみたれにとふひともなきやまさとはのきのしつくのおとのみそする
(六条宰相家歌合~日文研HPより)
歎く事侍けるに、なか雨少はれま有比よめる 民部卿顕頼
五月雨の空も限は有物を心のやみのはるゝまそなき
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)
前大納言為家身まかりて後、日数過るほとに、前大納言為氏許に申つかはしける 入道前太政大臣
五月雨の日数はよそに過なからはれぬ涙や袖ぬらすらん
(新後撰和歌集~国文学研究資料館HPより)
(略)れいのうちわたりにもすみぞめにてはへばえしきこともなし
五月雨はいとなみだもよほすつまなり
すきにし御こともおななじほどにのみおはしませば故院の大貳の三位のもとに少将のないし
又もなをのこりありけりさみたれにふりつくしてしなみだとおもふに
かへし
さみだればむかしもいまもなみたかはおなじながれとみつまさりけり
(栄花物語~国文学研究資料館HPより)
中園入道前太政大臣かくれ侍ての比、先師益守僧正おなしく身まかりける又のとしの夏、五月雨を 前大僧正杲守
ほしわひぬ去年の涙の藤衣ころも忘ぬさみたれの空
(新続古今和歌集~国文学研究資料館HPより)