秋風に音(おと)はすれども花薄ほのかにだにも見えぬ君かな(新後拾遺和歌集)
秋の雨に濡れつつ居ればいやしけど我妹が宿し思ほゆるかも(万葉集)
宮木野のもとあらのこ萩つゆをおもみ風を待つごときみをこそ待て (古今和歌集)
秋萩の枝もとををに置く露の消なば消ぬとも色に出でめやも(万葉集)
秋づけば尾花が上に置く露の消ぬべくも我は思ほゆるかも(万葉集)
秋山に朝立つ霧の峰こめてはれずも物をおもふころかな(続千載和歌集)
わが恋のなかめを見せむあかしがたこぎゆく船にあきのあさ霧(仙洞句題五十首)
君こふる涙は秋にかよへばや空もたもとも共にしぐるる(玉葉和歌集)
我も思ひ君も忍ぶる秋の夜はかたみに風の音(おと)ぞ身にしむ(新勅撰和歌集)
思ひやれ秋の夜すがら寝覚めして歎きあかせる袖のしづくを(新続古今和歌集)
鳴く鹿の声きくごとに秋萩の下葉こがれて物をこそ思へ(玉葉和歌集)
秋萩のした葉に人はあらねども心ははやくうつろひにけり(続古今和歌集)
秋風に山の木の葉のうつろへば人のこころもいかがとぞ思ふ(古今和歌集)
うつりゆく人の心のあきの色にしぐれも待たずぬるる袖かな(風葉和歌集)
長月のしぐれにぬれぬ言の葉もかはるならひの色ぞかなしき(新勅撰和歌集)