「平家花ぞろへ」より、平清経を植物にたとえている文章を抜き出します。(「室町時代物語集成12」横山重・松本隆信編、角川書店、1984年)
平清経は、清盛の孫で、横笛の名手として知られる人物です。
この上達(かみたち)のやうに、藤、さくらなどの匂ひおほきかたはなけれど、そこはかとなくあざやかになまめかしく、人のこころめづべきさまぞし給へる。向腹(むかへばら)にて、またことにもてなさるる世のおぼえもことならむかし。
長月のはじめつかた、虫の音(ね)やうやう鳴きからし、草むらの露、ことさら白く見えて、肌寒き風うち吹きたるほど、尾花の穂に出(い)で、折れ返りなびくけしき、ちぐさの花の中にもなほ目とまるなどぞ申したく侍る。
うちなびく尾花が末の気色(けしき)にはたれか心をとどめざらまし