タイトル:ゆきゆきて、神軍/邦画
ジャンル:ドキュメンタリー/1987年/122分
映画館:シネマスクエア東急(224席)
鑑賞日時:2005年1月29日(土)9:00から約50人
傑作度:85%
オススメ度:85%
DVD :4935円税込
この作品について書くのは正直、気が重い。でも自分はこの作品が
ドキュメンタリーでの最高傑作と思うので、稚拙であれなんであれ
ここでなにも書かずにとおり過ぎることはできないと、追い込まれた
感じがするほど強烈な作品であった。
第二次世界大戦、終戦後23日たってからふたりの日本兵士が
隊長により銃殺されるという事件があった。38年後、処刑した
上官達をたずねて、前科3犯奥崎謙三が真相に迫るドキュメンタリー。
その真相以上に衝撃的だったのは、執拗に迫る奥崎謙三その人の存在
であり、対峙する元兵士達の表情から垣間見られた戦争の狂気だった。
この奥崎謙三という人、ニューギニア戦線からの数少ない生き残りであり、
昭和天皇にパチンコを撃ったことで有名な人。自分の家のシャッターや
車に大きな字で「田中角栄を殺すために記す」と書き、暴力を肯定。
実際この映画でも話相手にいきなり殴りかかるシーンが何度かありました。
常に警察が尾行しているようで、本人も「あと10年刑務所にはいることに
した」と言ってるぐらいですから怖いものなし。そんな人に、絶対に
死ぬまで心の中にしまっておこうというようなことをえぐりだされるので
あるから見ていて気分が悪くなる。「いったいあなたは神様か?」
「覚悟さえしていれば何をやってもいいのか?」と叫びたくなる。
※登場した上官のなかには、名字が戦争当時と変わっている人が多かった。
さらに悪いことには、この人のエネルギーの一部には、映画撮影されている
ということがあるようで、まったくの主演男優気取り。(実際、神戸拘置所前
での撮影の後に「どうでしたか?私の演技は」と言ったことが制作ノート:
「ゆきゆきて、神軍」話の特集 に書かれていた。)ということは
映画を見ている自分も、この人のエネルギーになっていると考えだしたり
してますます気分が悪くなる。
撮る方も撮る方だ。いい絵がとれるからと、止めに入らなくていいのか?
きっといいのだろう。でも、カメラで撮るから、主演男優がますます
悪乗りしていませんか?
とまあ、けちをつければきりがないのですが、それでもやはり傑作だと
思います。おもえば、いままで私が見たドキュメンタリーというのは、
情報量が多かったり、過去の貴重なフィルムだったり、インタビューの
やりとりがおもしろかったり、状況説明がわかりやすかったりと、
そういうものでした。でも、この作品は、事件の時代背景や場所の
説明もほとんどなし。ちなみにニューギニア・ロケをしたものの、
最後に警察でフィルム没収。奥崎の人となりの紹介のために
普段の?活動が撮られている程度だ。
それだけに、38年たって、いまその場で起こっている話合いだけで
戦争の狂気を浮き彫りにしたのだから、凄いと思います。CGも、
説明の絵もないことが、余計にその狂気を際立たせたのかもしれません。
唯一つかわれたのが、こたつの上にならべられたみかん。
なぜか朝の5時に、その家を訪れた奥崎は、話の途中で
お盆のみかんをとり並べる。5つが一列に、それと並行して
少し距離をおいたところに2つを並べる。
「銃殺用の拳銃は5挺だったんですか」
「実砲が四発あったんですね。」
「それで目隠しなんかして」
「(隊長は)うしろで命令したのですか、横ですか」
「軍医はどこにおったですか」
「あなたはどなたの心臓をねらわれたんですか?」
この映画の撮影の後、奥崎は殺人未遂で、懲役12年の実刑判決を受ける。
現在は、出所して再び地元神戸で健在という。
ジャンル:ドキュメンタリー/1987年/122分
映画館:シネマスクエア東急(224席)
鑑賞日時:2005年1月29日(土)9:00から約50人
傑作度:85%
オススメ度:85%
DVD :4935円税込
この作品について書くのは正直、気が重い。でも自分はこの作品が
ドキュメンタリーでの最高傑作と思うので、稚拙であれなんであれ
ここでなにも書かずにとおり過ぎることはできないと、追い込まれた
感じがするほど強烈な作品であった。
第二次世界大戦、終戦後23日たってからふたりの日本兵士が
隊長により銃殺されるという事件があった。38年後、処刑した
上官達をたずねて、前科3犯奥崎謙三が真相に迫るドキュメンタリー。
その真相以上に衝撃的だったのは、執拗に迫る奥崎謙三その人の存在
であり、対峙する元兵士達の表情から垣間見られた戦争の狂気だった。
この奥崎謙三という人、ニューギニア戦線からの数少ない生き残りであり、
昭和天皇にパチンコを撃ったことで有名な人。自分の家のシャッターや
車に大きな字で「田中角栄を殺すために記す」と書き、暴力を肯定。
実際この映画でも話相手にいきなり殴りかかるシーンが何度かありました。
常に警察が尾行しているようで、本人も「あと10年刑務所にはいることに
した」と言ってるぐらいですから怖いものなし。そんな人に、絶対に
死ぬまで心の中にしまっておこうというようなことをえぐりだされるので
あるから見ていて気分が悪くなる。「いったいあなたは神様か?」
「覚悟さえしていれば何をやってもいいのか?」と叫びたくなる。
※登場した上官のなかには、名字が戦争当時と変わっている人が多かった。
さらに悪いことには、この人のエネルギーの一部には、映画撮影されている
ということがあるようで、まったくの主演男優気取り。(実際、神戸拘置所前
での撮影の後に「どうでしたか?私の演技は」と言ったことが制作ノート:
「ゆきゆきて、神軍」話の特集 に書かれていた。)ということは
映画を見ている自分も、この人のエネルギーになっていると考えだしたり
してますます気分が悪くなる。
撮る方も撮る方だ。いい絵がとれるからと、止めに入らなくていいのか?
きっといいのだろう。でも、カメラで撮るから、主演男優がますます
悪乗りしていませんか?
とまあ、けちをつければきりがないのですが、それでもやはり傑作だと
思います。おもえば、いままで私が見たドキュメンタリーというのは、
情報量が多かったり、過去の貴重なフィルムだったり、インタビューの
やりとりがおもしろかったり、状況説明がわかりやすかったりと、
そういうものでした。でも、この作品は、事件の時代背景や場所の
説明もほとんどなし。ちなみにニューギニア・ロケをしたものの、
最後に警察でフィルム没収。奥崎の人となりの紹介のために
普段の?活動が撮られている程度だ。
それだけに、38年たって、いまその場で起こっている話合いだけで
戦争の狂気を浮き彫りにしたのだから、凄いと思います。CGも、
説明の絵もないことが、余計にその狂気を際立たせたのかもしれません。
唯一つかわれたのが、こたつの上にならべられたみかん。
なぜか朝の5時に、その家を訪れた奥崎は、話の途中で
お盆のみかんをとり並べる。5つが一列に、それと並行して
少し距離をおいたところに2つを並べる。
「銃殺用の拳銃は5挺だったんですか」
「実砲が四発あったんですね。」
「それで目隠しなんかして」
「(隊長は)うしろで命令したのですか、横ですか」
「軍医はどこにおったですか」
「あなたはどなたの心臓をねらわれたんですか?」
この映画の撮影の後、奥崎は殺人未遂で、懲役12年の実刑判決を受ける。
現在は、出所して再び地元神戸で健在という。
トラックバックありがとうございました。
本当にこの作品は、色々な是非が問われるものですよね。
奥崎の奥さんのご苦労を思うと、なんともいえません。
「神様の愛い奴」も興味は惹かれますが
ちょっと怖くて観られません(^^;