注意!今回はエンジンの調整方法についてご紹介しますが、取扱説明書では本来、「販売店に作業を依頼してください」と書かれている項目になっております。お客様自身でされる場合は自己責任でお願いします。また、作業に自信の無い方は購入店に持っていって調整をされることをお勧めしますし、特に海上では絶対に作業をしないでください。
では本文に・・・
最近、お問い合わせや修理のご依頼で、アイドルエンストと思われる症状が多くなっているのが気になったので、今回は調整方法をご紹介します。
アイドルエンスト・・・一旦掛かったエンジンがアイドリング時に自然に停止してしまうことです。
状況としては、BF2Dの場合、アイドリング回転数は2000rpmとなっており、その回転を維持するようにキャブレターの弁の開き具合などで吸入空気や燃料を調整しています。
たとえば最近の自動車はEFI(電子制御燃料噴射)となっており、燃料は噴射しますが、空気はアイドルエアーコントロールバルブというバイパス空気通路に付いた電磁弁がコンピューターから来た情報により吸入空気の量をこまめに調整し、規定のアイドリング回転数を維持しています。
このバイパス通路は、アクセルペダルからつながったバルブ(弁)とは別の空気通路になっている場合が多いです。
よって、温度、酸素濃度、湿度、季節など自然環境の変化があっても、弁や通路が汚れて狭くなって吸入量が減っても、EFIエンジンは自動的にアイドリングを維持できます。
ところがBF2Dのようなキャブレタータイプのエンジンは、自然環境の変化や汚れに伴う空気量の変化(汚れによる燃料の量も)があっても、自動的に調整する機能はありません。
もともと工場で組み立てたときの温度や湿度で最適に調整されていますし、最近の工場は空調管理が完璧です。
で、季節やエンジンの使用状況でアイドリングを調整しないといけません。
方法としては、キャブレター上部にある「アイドルストップスクリュー」を調整します。
注意!「パイロットスクリュー」ではありません。パイロットスクリューはキャブレターの横にある燃料を調整する為のものです。これは絶対に触らないでください。
私の行う手順としては①エンジンオイル量を確認する。②燃料を確認する。③スパークプラグやその他を確認する。④プロペラをはずす。⑤エンジンスタンドに立てて、バケツに突っ込み、バケツに水を張る。⑥チョークを引きエンジンを始動する。その後チョークを戻す。
バケツに水を張る量は、アンチキャビテーションプレートより5~10cm上ぐらいまでです。ボートにエンジンを付けた場合に海に浸かっているのと同じ高さとお考えください。
これにより、排気熱によるエンジン各部の損傷を防ぎます。
エンジンを1~2分暖気し、スロットルを完全に戻したとき、エンジンが止まってしまうならアイドルエンストです。
以下、写真で説明します。(クリックすると、拡大します。)
キャブレター上の隙間から、「アイドルストップスクリュー」が見えています。
ドライバーで時計回りにまわすと、アイドル回転が上がります。
作業がしにくい人は、写真のように上部サイレンサーをはずしてください。
で、キャブレター上にある、ばねの付いているネジを回します。
時計回転でアイドル回転が上がります。(反時計回転で、アイドル回転が下がります)
スロットルグリップを完全に戻しても、エンジンが掛かり続けるところに調整します。
無意味に回転を上げないでください。エンジンがかかり続けるギリギリよりほんの少しだけ余裕がある程度です。無意味に回転を上げすぎると、遠心クラッチがつながり、プロペラシャフトが回り始めてしまいます。
エンジンが掛かり続けている状況でバケツに手を突っ込んでプロペラシャフトを触って回転していないか確認します。(必ず初めに書いたように、プロペラは先にはずしておくこと。はずさないと大変危険です。)
プロペラシャフトを触って、回転していなければ調整は完了です。
もし、プロペラシャフトを触って、少しでも回転していれば、残念ながら購入した販売店にご相談ください。キャブレターが調整不可能なほど汚れているなど、上記の方法だけでは解決できないと思われます。
プロペラシャフトが回った状態なのにプロペラをセットして、ボート上でエンジンを掛けるとボートは急発進します。絶対にやめてください。
あと、キャブレターをはずしたことのある方で、キャブレターガスケットを再使用していると、キャブとエンジンの隙間から2次エアーを吸い込んでアイドル不調になる場合がありますのでガスケット(パッキン)の再使用は絶対にやめてください。
上記の方法を理解して、事前に調整のうえ海に行けば、現地で不快な思いをすることも無く1日楽しんでいただけます。ご自分で調整するか、販売店に調整してもらうかは自己の責任でご判断ください。
もしご質問があれば、メールなどでお気軽にお問い合わせください。
皆様の安全かつ快適なマリンライフに少しでもお役に立ちますように・・・
地上のスタンド上ではエンジンがかかります。
ボートに装着し海に浮かべる前でも始動しますが、海に浮かべた状態で始動しようとしてもかかりません。
何が原因でしょう
クラッチのベアリングの固着やバーチカル
シャフトの固着が考えられると思います。