Dr-Hの船外機のお話

船外機のメンテナンス

BF115Aと係留保管で水洗する工夫

2011-05-31 20:32:56 | ブログ

皆様ご機嫌いかがでしょうか?

今回はコメントをいただきました「サンマルクさん」のご質問に、

私なりの回答をさせていただきたいと思います。

ご質問は「、BF115Aを係留保管しているが、真水で水洗できるか?」とのことです。

まず、BF115Aの水洗経路から説明します。

(画像をクリックすると拡大します)

Bf115a2

イラストの黒いボールペンの部分に「ジョイントASSYホース」を差込み、水道

ホースをつなぎます。

真水は「フラッッシング ウォーター ホース」内を流れ、さかのぼり

上の赤いボールペンで指している「フラッシュバルブカバー」に達し、エンジン内に

流れ込み、エンジンを真水で洗うことができます。

Bf1151

「ジョイントASSYホース」は、イラストではメーター2個の右側の

「2」番の番号のOリングと、その下の真鍮のパイプです。

税別定価¥3,820- 部品番号は19270-ZW1-000です。

さて、「真水で洗うべきかどうか」ですが、確かにいろいろなご意見があります。

ここからは、私の個人的な意見です。

エンジンが停止すると、当然冷却システムも停止します。

すると、エンジンは、余熱により停止前より一時的に温度が高くなります。

停止後20分ぐらいが一番高いとか言われたりします。

これが、曲者で、エンジン内に残った海水を液体から固体へ変化

させる手助けをしていると思います。

で、私の意見としては、できるだけエンジン停止後20分以内に真水で

エンジン内を洗浄することが、塩害に対して有効と考えています。

(なお、塩害と電蝕は、似ていますが同じ現象ではありません。

真水で洗えば電蝕にも大変有効ですが、犠牲の亜鉛が効いていないと

航行中でも電蝕は進行します。亜鉛(アノード)の交換を!)

私がお世話しているお客様には、日立や工進のビルジポンプを

ボートに取付て、ポリタンクの水で洗えるように艤装させていただいているものが

多いです。

Bf1154

ヤマハ発動機(ワイズギア)さんが出してる「ソルトル」も、

使える洗浄機です。

Bf115a5

コツとしては、はじめに、エンジンにつなぐ前に、ホースに真水を満たして、

俗にいう「送り水」状態を作っておきます。

わたしは、ホースを差す手前で止めて電源をONし、水がきたら一旦OFFして

ホースを差し、あらためてONにします。

残念ながら、メーカーは水道水での洗浄を想定しているのか、

ビルジポンプでは水圧が少し低く、「フラッシュバルブカバー」内の

逆止弁(リリーフバルブ)が開きにくく、

送り水が必要な場合が多いです。

Bf115a3

逆止弁(リリーフバルブ)は、上記のような構造です。

通常はエンジンの冷却水が漏れなうように塞いでいて、

真水で洗うとき、水圧で開くようになっています。

さて、どうしてもビルジポンプで逆止弁が開かないオーナー様には

私は、オーナー様と相談し、お互いが責任を共有するということで

逆止弁「リリーフバルブ」をコントロールしている

「フラッシュバルブスプリング」を少しずつカットして、

ばねの力を弱め、洗浄の真水が浸入しやすくしています。

カットしては仮組みし、ビルジポンプで水を流し、またエンジンを掛けて

漏れて逆流してこないか・・・・

2~3度テストして、大体1巻き~2巻きカットしています。

切りすぎるとエンジン内の海水が逆流して出てきます。

その場合は、新しいスプリングを買ってセットし直してください。

スプリングのカットは、自己責任でお願いします。

カットした時点で、メーカー的には「改造」とみなされます。

ここも、よく考えて判断していただければ幸いです。

あと、過去に一度も洗ったことの無いBF115Aの場合、この

「フラッシュバルブカバー」や「フラッシングウォーターホース」、

また逆止弁「リリーフバルブ」が塩害でスムーズに機能しなくなっている

場合があります。

その場合、この部分の分解メンテナンスが必要です。

なお、ポリタンクの真水に「ソルトオフ」や「ソルトターミネーター」

など除塩に効果のあるケミカルを混ぜていけば、

エンジン内で「ぶくぶく」と泡になり、塩を溶かして

意外と有効です。

毎回でなくてもいいので、ぜひご検討を!

さて、「サンマルクさん」、

疑問にお答えできたでしょうか?

一部歯切れの悪い表現がありましたがお許しください。

大人の事情というやつです・・・

BF115Aがいつまでも調子よく、活躍しますように!


BF25Aとインペラーがバラバラ

2011-05-27 18:42:21 | 修理

皆様、ご機嫌いかがでしょうか。

とうとう近畿地方も梅雨入り(入梅)です。

と、いうことは、カツオの時期がやってきたのでしょうか?

おいしいカツオ、初鰹、本鰹、ソウダガツオ?

将軍丸

http://ameblo.jp/shougun0739/page-3.html#main

八百盗 中村屋

http://blog.rebass.jp/user/yaotou/nakamuraya/

まだ、釣れていないようですね。

今年こそは、自分で釣ったおいしいカツオが食べたいものです。

さて、先日の話ですが、出社すると「連絡ください」とお客様から

FAXが入っていました。

BF25Aですが、エンジンが吹けないので修理をして欲しいとのことです。

Bf25a1

夜遅く入院だったので、次の日に症状確認の為、エンジンスタートさせました。

「ブルン」一発始動しました。

そのまま少しスロットルを吹かせますが、

「ブルッ、ブブブ・・・モォ~~ブブ・・・モォ~~」

1気筒死んでいるような、重い回転です。

「さて、暖気を・・・あっ!STOP、STOP!」自分で自分に命令して

緊急停止させます。

エンジンが掛かってすぐに「チョロッ」と出たのですが、その後

検水口から水が出ていません。

すぐにインペラーの確認です。

ロワケースをはずす前に、証拠が欲しいので点検を兼ねてウォーター

スクリーンをはずしてみると・・・

「あった・・・」

Bf25a2

インペラーの破片がいます。

ここまできている場合、「えらいこと」になっている事が

多いです。

ロワケースをはずして、インペラーを確認しますが、

「うわあぁ!」

Bf25a3

予想以上に重症です。

先ほど一瞬だけ「チョロッ」と出てきた水は、幻だったのか?

シリンダー内に残っていた水???

インペラーはバラバラで、ポンプケースは溶けており、

内側のカップにインペラーの羽根?ポンプケースの一部が

熱で溶けてへばりついています。

水が無い状態で長時間ポンプが回ると、このような壊れ方をするのですが、

(インペラーの摩擦熱でポンプのボディーが溶ける)

このBF25Aはメインのウォータースクリーンが詰まっても、

もう一つサブのウォータースクリーンがキャビテーションプレートの裏に

付いているので、多少のゴミの引っ掛かりでは

「完全水欠」には、ならないと思うのですが・・・

Bf25a4

インペラーと破片を残らずかき集めます。

パズルをするまでも無く、全然足りません。

・・・・・・時間が掛かることになったので、少し休憩します。

「ふうっ」

コーヒーとビスケットを食べて、気分転換します。・・・・・・

20分後、気持ちの充電が完了したので、再スタートします。

Bf25a5

下側のダンパーを分解し、エクステンションケースを

はずします。

Bf25a6

細いパイプが、冷却水を上げるパイプです。

ちなみに太いのは排気管、その上がオイルケース(オイルパン)です。

Bf25a7

冷却水管をはずして、インペラーの破片が詰まっていないか

確認していきます。

Bf25a8

さらに、ウォータージャケットのカバーをはずして、捜索します。

(BF25Aのアノードの一つは、ここにあります。

あと2つは、インテークマニホールドをはずすとあります。

係留保管の方は、必ず定期交換を!)

下からエアガンで「プシュ~」と吹いたりして・・・

もう、大変です。

オーナー様に電話して確認しましたが、確かにアラート(ブザー)は

鳴っていたとのことですが・・

(一瞬だけ鳴ったようだとのことで・・・ということは、センサーやブザーの点検も

必要なのかもしれません・・・こちらは試運転できるようになってから・・)

このオーナー様のボートは、すごくきれいで、装備品も整頓されていますから、

おそらく、不注意ではなく、不可避な事故だと思います。

さて、ご依頼の「エンジンが吹けない」ですが、

この後、各部点検し、犯人発見しました。

長くなるので、こちらは後日にでも・・・

(つづく・・・であろう)


船外機を真水で洗わないと、塩で詰まる

2011-05-26 12:25:16 | 修理

みなさま、ご機嫌いかがでしょうか?

昨日、メールチェックをすると、沖縄県のお客様より

インペラーなど部品のお問い合わせ及びご注文が

入っておりました。

台風が来るからボートを上架したので、ついでに整備をするとのこと!

この方は、先日もソルトオフ(塩害腐食防止剤)をご購入いただきました。

船外機も大変長持ちすることでしょう。うれしい限りです。

さて、先日のヨットハーバーさんからの依頼の修理の部品が届きました。

で、サーモスタットが塩害で壊れていたYAMAHA 8Bのシリンダーヘッドを

めくってみると・・・

8b6

(画像はクリックすると大きくなります)

えらい事になっております。塩、塩、塩・・・

全く洗っていなかったのでしょう?これでは冷却水が流れずに、オーバーヒート

しても仕方ありません。

では、連続して、塩害の怖さをご堪能ください。

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ドライバーの先が、刺さるほどの塩の堆積・・・・

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全く隙間無く詰まった塩・・・さすがのヤマハ船外機も、これでは機能しません!

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シリンダーヘッド側だけで、これだけ塩が回収できました。

これ、掻き出すのに結構時間を食います。

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最終兵器の「エンバイロクリーンプラス」です。

環境にやさしいのに、黄ばみ汚れや錆び、油汚れだけでなく、

カルシウムにも効きますので、マルチで便利なプロ用洗剤です。

洗艇やこのような修理のときに大活躍しています。

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「エンバイロクリーン・・・」のおかげで、きれいに仕上げできました。

これから取り付けます。

さて、部品が来たので、恒例の新旧比較のコーナ~♪

サーモスタット編です。

8b12

古いのは、全開のまま死亡。

よくこれでエンジンが壊れなかったと関心しております。

このサーモスタット、消耗品ですが、定期交換しない人、

すごく多いです。

インペラーと同じで、分解しないと状態が見れませんから、

期間や使用時間で区切って定期交換するのがベストです。

本田技研工業の取扱説明書では、1年又は200時間での

点検となっています。

私が管理などお任せいただいているエンジンなどは、

2~3年おきに、ズバッと新品に交換しております。

数千円の部品の交換をためらって、船外機が壊れたり

海上で漂流したなんてことになったら、

ご先祖様に「アホンダラ!!」と叱られてしまいます。

おっと、1月からお墓参りに行っていないのを思い出しました。

お盆には必ず行きますので、

どうか私にご加護を・・・

(かしわ手)パン・パン???


船外機を真水で洗わないと、どうなるのか?

2011-05-23 19:22:52 | 修理

皆さま、ご機嫌はいかがでしょうか。

本日も雨、なにやら九州は例年より20日も早い梅雨入りとか・・・

早く梅雨の時期に入るなら、終わるのも早くなって欲しいものです。

なら、夏が長~くなるので、海に入れる時期も長くなり、

ビールのおいしいシーズンも長くなり、言うこと無しです。

先週、ヨットハーバー様より一気に5台の船外機の修理依頼が・・・

うち4台は倉庫で長い眠りに入っていたので、起して欲しいと??

では、王子様が眠りから覚ませてあげましょう! チュッ

Obs

まずは8CWH、これは最近まで使っていたのかキャブとプラグのトラブルを

解消し、修理完了しました。

(画像をクリックすると、巨大化します)

8cmh1

お次は9.9DMH、リードバルブは問題なさそうです。

99dmh

でも、キャブレターは・・・・ニードルまで固着しています。

お掃除、お掃除

99d1 99d4 99d2 99d3

久しぶりに液に漬け込みました。ニードルも、ジェットも、きれいきれい!

お次はインペラーです。

インペラーは問題がなさそう・・・でも・・怪しい、プレートの下が・・・

おっと、やっぱり・・・これでは水が、上がりません。

99d5 99d6 99d7 99d8

お次は、懐かしい8Bです。

8b5

まだ、部品があります。(全部ではありませんが・・・)

さすが、ヤマハさん。

こいつはなんと、ポイント点火です。

キャブや電気系を点検し、試運転します。

古いので掛けるのにコツが要りますが、始動したら絶好調・・・???

あれ・・・検水口からでる水の温度が、少し高そうです。

温度計で測ると・・・確かに高い。

8b4

サーモスタットを見てみると・・・チーン♪

8b1 8b3

全開で開いたまま、死亡しています。

しかも、通路に塩が詰まって・・・これでは水が流れません。

サーモスタットの内部も、塩だらけです。

これは、後日シリンダーヘッドをめくることになりました。

実はインペラーを試運転前に点検していたのですが・・・

これも、塩、塩でした。

M12c6 M12c4

次はトーハツM12Cです。12馬力って、あったの???

M12c2_2

電気系など点検し、キャブレターを清掃調整します。

こいつは塩害が無いです。

洗ってもらっていたのか?

次は、トーハツM9.8B、これは比較的新しいのですが・・・

M98b1

写真では仮で塞いでいますが、シリンダーヘッドの冷却通路のメクラフタが

電蝕で穴があいて、ヘッドを交換したいのですが、ヘッドボルトが全部、

塩噛みで回りません。(全く真水洗いしていなかったようなので)

で、ボルトを全部折って修理すると、すごい金額になるので・・・

ほかにブラケットも塩害で、高額部品の交換が必要です。

まるで、末期がんの患者さんです。

いま、修理継続するのか、お悩み中です。

さて、お題の「船外機を真水で洗わないと、どうなるのか?」

上記のように、大変なことになります。

皆さん、毎日使うようなプロは別として、プレジャーでのご使用の場合は、

ボートでも、ヨットの補機でも、海水使用なら、真水で洗って終わりにしましょう。

係留でも洗う方法は、いくらでもあります。

昔、あるオーナー様がメインエンジン(ボルボV8)が故障し明石沖で漂流。

補機の船外機9.9馬力を掛けた途端・・・・すぐに焼きついたとか。

非常用になっていませんやんかって。

なんぼ関西でも、こんなオチはいりません。

さて、部品の手配をしますか・・・


船外機のパソコン診断

2011-05-18 14:23:20 | ブログ

みなさま、ご無沙汰しております。ご機嫌はいかがですか?

ゴールデンウィークも無事に過ぎて・・・あぁっと・・ない・・・ない・・・・

そうなんです、ブログネタがない・・・

あちこちに行ったり、修理をしたり・・・でも、面白いブログネタが無かったり、

大人の事情で公開不可能だったり・・で、お久しぶりで書いております。

そうそう、先日琵琶湖が・・・あふれかえっておりました。

マリーナさんも、水辺のキャンプ場も、白い砂浜の恋人たちの海岸線も・・・

で、琵琶湖の「栓」である南郷の水門も「全開」で放水しておりました。

Photo

普段はここ、水門の下流側は川原というか、陸が見えていたりするのですが、

水門をはさんで上流と下流の高低差が・・・ありません。

聞くと、「危険水位」とのことで、こんなに水位が高いのは「初めて?」

だとか・・・

さて、ホンダ船外機のパソコン診断機Dr-Hのご紹介第3弾です。

Dr-Hは診断したお客様の船外機の情報を記録できるのですが、

その中に「サービスレポート」というメニューがあります。

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これは、パソコン診断した結果のうち、お客様にもわかりやすい項目を

抜粋し、印刷できるメニューです。

私をはじめ、知人のサービス店さまは定期点検後の報告に

この「サービスレポート」をお客様にお渡ししております。

どういうことが書いてあるかというと、

①電圧情報

・バッテリー電圧

②スイッチ情報

・始動回数

・VTEC作動回数

・アラート(警告)回数(オーバーヒートなどで警告音の発令回数)

③時間情報

・総運転時間

・アイドル運転時間

・トローリング運転時間(アイドル回転でクラッチつながった状態)

・全開運転時間

・パーシャル運転時間(トローリングと全開の間)

・IBA作動時間(可変吸気システム作動時間・・・だったと思います)

④その他

・DTC合計数(Diagnostic Trouble Code=トラブルコード診断)

などなどの情報を、印刷してオーナー様にお渡しできます。

最近のボートは、アワーメーターなどが付いていないことが多いので、

これで、「前の定期点検でオイルやインペラー交換してもらったのは

何時間目だったかなあ?」とか、一目瞭然です。

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私たちも、「〇〇さん、もう400時間も経っているので、高圧側の燃料フィルター

交換しましょうよ」とか、活用しております。

お客様もどんどん、これらのレポートを私たちに要求してください。

具体的な数字での管理をすることが、勘に頼った管理を超えて、

皆様の安全にもつながると思います。

昨日も本日も南方の島の方から、アラートに関してのご質問や

部品のご注文などの電話がありますが、今すぐにでも私のパソコンを

つなげてあげたいぐらいです。

(他の方法で故障診断をしています。ご安心を・・でも、できることが限られるので

やはりパソコン診断の方が、圧倒的に強力です。)

さあ、シーズン真っ盛りです!

釣りに、ウエイクに、水上スキーに、クルージングに、梅雨に入る前に

すること、行くとこいっぱいですね。

楽しみましょう!