Dr-Hの船外機のお話

船外機のメンテナンス

BF9.9D の整備の続きと BF150A4 のプラグ変更

2010-09-24 19:41:15 | ブログ

近くタバコが値上がりするそうですね。

私は「喫煙」する人なので、悩ましいです。

昔、仕事でアメリカに行ったとき、向こうの仕入先の方と会食したのですが、

タバコが高いとぼやいていたのを思い出しました。

その方はヨーロッパからアメリカに移り住んだ元べルギー人だったと思うのですが喫煙派。

スパスパ吸う私に「日本はタバコが安いんだね?うらやましい」、「アメリカはすう場所も

限られているんだよ」と言われました。

当時はすでに、飛行機の中はNG、向こうの空港も建物の中はNG、で、国際線から

国内線への乗り換えのときもわざわざ空港の外のタクシー乗り場まで行って、居合わせた

スパニッシュ系の方々に混じってスパスパしていました。

やめればいいのでしょうが・・・きっぱりやめた方!尊敬申し上げます。

さて、BF135A4/BF150A4のMMCは以前に申し上げましたが、スパークプラグが

イリジウムの「IZFR6K-11」から、通常タイプの「ZFR6K-11」に変更になっております。

価格が安くなりましたが、寿命は短くなると思うので、良く乗る方はできれば毎年

交換してください。最近のエンジンは高性能、低燃費の為か高圧縮傾向にありますので

チビるのも早く感じます。たまに「ピンチ、エンジン不調だ~」と言われて行くと、

プラグが1本死んでる~なんてことがあります。

プラグ1本に交通(出張)費を払うのは、非常にもったいないと思います。

できれば予備も積んでおきましょう。

で、BF9.9Dの整備の続き、今度は「タペット調整」です。

まず、タペットカバーをはずします。

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このカバーにはゴムのパッキンがついています。再使用可能ですが、

ヘタるとオイル漏れを起すので、その場合は交換です。

次にフライホイールカバー(リコイルASSY)をはずして、フライホイールとカムプーリーを

むき出しにします。スパークプラグもはずします。

(写真をクリックすると、拡大します)

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フライホイールにはTマーク(タイミングマーク)がありますので、写真のように

ボディー側の印とあわせます。次に、カムプーリーの1番の印とボディー側のTマークが

あっているか確認し、2番になっていれば、フライホイールを360度まわして

1番にあわせます。回転は、必ず時計回転の方向に回します。

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1番がTマーク位置にあるときが、1番(上の)ピストンが上死点にある位置です。

実はピストンは両方同時に上下していますが、点火は別々です。で、1番が

「圧縮上死点」でも2番は「掃気中」なのでバルブは閉じていません。

で、IN側0.15~0.19、EX側0.21~0.25に調整します。

ロックナットとタペットアジャストスクリューを緩めてシックネスゲージ(隙間ゲージ)

をバルブとの間に入れて、スクリューを締めて隙間を計ます。

隙間が調整できたら、ロックナットを締めて、再度隙間を確認します。

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1番ができたら、次は2番(下側)です。フライホイールを360度まわして、カムプーリーの

2番マークとTマークを合わし、同じように調整します。

ちなみに、作業は冷間時(エンジンが冷えているとき)に行います。

そして、BF9.9Dのロックナットの締め付けトルクは8Nmです。

自分で作業する自信の無い方は、もよりのマリンショップなどに依頼してください。

但し、その方でも、「どういうことをしないといけないのか」と知っておいていただきたい

と思います。

私がいつも感じているのは、ほんの少しの簡単な調整でエンジンのコンディションが

維持できるのに、あまりこういった情報が広まっていないのがもったいないと

思っています。シックネスゲージがあれば、BF9.9Dならそんなに時間は掛かりません。

4ストロークエンジンにはバルブがつきものです。

オーナー様が自分でされるようなら、本当にうれしい限りです。

マリンショップに整備に出すとき「ついでにバルブのタペットも調整しといて」

といったいただければ、それも最高です。

エンジンとうまく付き合い、最低限の費用で長期間使用してください。

それで、もっと海や湖で遊ぶ方が増えたら・・・・・

大変うれしい限りですね。

では、ここらで一服しますか・・・スパスパスパ・・・・


BF9.9D のインペラー交換その2

2010-09-22 18:02:37 | ブログ

昨日は緊急スクランブルでとあるホンダ船外機の販売店さんへ。

お客様がおられる話なのであまり詳しく書けませんが、ホンダ船外機が初期トラブルを

起していて、販売店様の助っ人でした。

エンジンが中速域にて息つきをします。

はじめは販売店様も、私も???でしたが、燃料ホースの部分にねじれを発見。

部品を新品に交換し、無事解決できました。

決してあってはならないことですが、人間の作るもの、やはり0%にはなりません。

そんな時のために私たちは日々訓練し、製品には保証があります。

皆様に安心して購入いただけるようにシステムができております。

では本題に・・・今回はBF9.9Dのインペラー交換の続きです。

前前々回の記事も参考にしてください。

以下の写真は、インペラーの回り止めのキー(キーウッドラフ)です。

Photo

インペラーを挿入するとき、溝にこのキーが入るようにします。

写真は、グリスを利用してくっつけています。

Photo_2

ポンプケースを取り付けるときは、ケースを上からかぶせて、バーチカルシャフトを

回転させると、スポッと入ります。

Photo_3

留めるボルトには、グリス、シリコンボンド等を塗布してから締め付けてください。

でないと塩かみで次回にはずせなくなります。

Photo_4

ポンプケースの上に、このようなゴムのブーツが付いている機種があります。

今回は抜けて、上側の吸水管にくっついていました。必ず確認してください。

(ポンプケースと一体になっている機種もあります)

最後に試運転です。

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カバーをはずして運転し、不具合が無いか確認しながら試運転します。

ついでにオイルフィルターの交換も。

Photo_5

サイドのカバーをはずすと、現れます。

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オイルフィルターのサイズにあったカップレンチを持っていると便利です。

通販工具のストレートやアストロプロダクツで安く購入できますよ。

各地に店舗があるので、フィルター交換前にフィルターを持って、お店に

購入に行けば確実です。

新品のオイルフィルターを締め付ける前に、必ずOリング部(写真の丸い黒いゴム)

に指でオイルを塗布してから締め付けてください。

手で思いっきり締めて終わりにする人がいますが、誤差が出るので、

最後はカップレンチで軽く締め付けたほうがいいと思います。

そのとき、あまりきつすぎると、フィルターの塗装がはがれて、そこから錆が沸くので

ほどほどの力で締めましょう。

たまに、純正品でない高価なオイルフィルターをつけている方もおられますが、

純正の安いもので十分です。要は交換頻度です。

1年に1回ほどしかオイル交換をしないなら、毎回フィルターも交換してください。

但し、エンジンオイルの交換は100時間ごとにお願いします。

1年に100時間以上乗る方は、200時間おきにフィルターを交換してください。

大切なエンジンです。定期的なメンテナンスで10年でも20年でも使用してください。

ホンダ船外機は、エンジンオイルの管理をしっかりしていれば、簡単には壊れません。

皆様のエンジンが、末永く活躍してくれることを祈っております。


BLASTとBF150A4のMMC

2010-09-18 11:34:40 | ブログ

いまは~もう秋~♪・・・誰もいない海~♪ 

レトロな歌で大変失礼しました、誰も海に行かなくなると大変です。

皆さん、海に出かけましょう。フィッシングには最高の秋、到来です。

で、今回は、HONDA船外機の誇る加速装置「BLAST」をご説明したいと思います。

以前に「BF115Dデビュー」のご紹介のときにも簡単に触れましたが、そのときに同時に

BF150とBF135もMMC(マイナーモデルチェンジ)し、「BLAST」搭載となりました。

これで、ホンダ船外機のEFIモデルは、すべてBLAST付きとなりました。

Function_blast

BLASTは「Boosted Low Speed Torque」を略した言葉で、機構としては

「空燃費連動型点火時期制御」を行う本田技研工業㈱の特許技術です。

Bf1501

エンジンの点火時期に関する基本理論に「Minimum  Advance for the Best Torque」

と言うのがあるとのことで、この理論を応用した機構とのことです。

ピストンが圧縮のために上昇したとき、一番高い位置を「上死点」と言いますが、

実際のエンジンは、上死点に達する少し手前でスパークプラグを点火させています。

クランクシャフトは回転しているので、その回転が360度する、たとえば-10度とか

手前で発火しています。そのタイミングをどんどん手前にしていけばいずれ、

エンジンがノッキングするポイントに達するのですが、ノッキングするポイント

の直前が一番トルクが大きいので、それを活用し、船外機が走行をスタートし、

滑走に入るまでの間、ノック直前ポイントで点火をし続け、加速時のトルクを

大幅に増大させる技術なんです。

簡単に書きましたが、実際に技術にするのは至難の業です。

ECU(コントロールユニット)も賢いやつが必要です。

しかも、加給器など追加せず、既存の構造で可能な技術ですから、

耐久性やメンテナンス性が低下する心配もありませんね!

燃料の噴射量も同時に制御され、加速時には多めに噴射されます。

これはノッキング防止と、スタートからプレーンまでの時間の短縮の為。

ボートは通常、スタートからプレーニングに入るまでの間、燃費が悪いので時間短縮は

燃料の節約に貢献します。

この「BLAST」の効果は絶大です。少々きつめのプロペラでも、いつもより多めの人数が

乗り込んでも、大漁の収穫物を載せても、「平気のへっちゃら」で加速していきます。

加速感は、例えると、2ストロークがパワーバンドに達する少時間の「タメ」みたいな

あと、ウイリーして、パタンとお辞儀しながらロケットスタートしていくと例えると、

BLASTはスタートからモリモリと、少しバウアップしたかなと思ったら、あまり姿勢を

変えずにそのまま瞬時に中速~高速まで入っていく感じです。

で、BF150のMMCですが、見た目では以下が変更になっています。

Bf1502 Bf1503 Bf1504

電装系のカバー、ヒューズボックスなど変更、スピードメーターチューブの位置の変更

そして、クランクケースカバーの塗装がアルマイト処理となっています。

このBF150A4はVTEC付ですから、BLASTからVTECにバトンタッチするような

走りは、まさに圧巻、非常に気持ち良いです。

さて、BLASTの説明は、うまくできていたでしょうか?

できるだけ専門用語を省いて書いたつもりですが、うまく伝わっていれば幸いです。

さて、今度はいつ、どのような新機種が登場するのか?

また次回も想像も付かないような「魔法の技術」が

登場することが待ち遠しい、私でした。


BF9.9Dのサーモスタット交換

2010-09-16 19:33:23 | ブログ

今回も好評?のエンジンの整備に関する内容で行きます。

今回の患者さんはBF8D、ちなみにBF9.9D、BF15D、BF20Dも構造は、ほぼ同じです。

(BF15/20Dは排気量が違うので、サービスデーター、数値は違う場合あり)

まずサーモスタットです。ホンダ船外機の場合、2馬力は空冷なので違いますが、5馬力以上は

水冷なので、サーモスタットがついています。

サーモスタットの役割は水温の管理です。BF8Dの場合60℃に達すると、開いて冷却水を

シリンダー近辺の冷却通路に送り込み始め、70℃で全開になります。

それを下回ると、今度は閉じて、冷えすぎるのを防ぎます。

オーバーヒートやオーバークールにならないように常に働いています。

この温度管理は、エンジンの安定した燃焼(爆発)に非常に重要です。

特に4サイクルはシビアです。

さて、サーモスタットをはずしてみると・・・

(写真をクリックすると、拡大します、ぜひ拡大してみてください)

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かろうじて生きていましたが、塩分の付着や腐食、汚れでひどい状況です。

自動車と違って、船外機は海の水をそのまま冷却に使っているので、仕方ありません。

新品と比較すると、一目瞭然です。エンジン内部も掃除機で吸って、耳かきして掃除します。

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長期間メンテナンスしていなかったエンジンのサーモスタットを点検すると、

寿命がきて、弁が開きっぱなしになっているものが多いです。

その場合、オーバークールになってしまいます。

不具合の症状としては、爆発が不安定になって燃費悪化、さらにプラグがかぶる。

またキャブレターモデルでは、一旦気化した混合気が、燃焼室に入るときに液体

(ガソリン)戻るような現象が起こり、そういったエンジンのエンジンオイルは増えて

ガソリンと混じった乳化現象を起しています。

オイルはミルクコーヒー状態で、ガソリンの臭いがします。

逆にサーモスタットが壊れて開かなくなると、オーバーヒートします。

ホンダではまだ見たことが無いですが、2ストローク船外機では、たまにあります。

サーモスタットは大変大事な部品です。

メーカーでは1年または200時間で点検し、場合により交換となっています。

5年以上何もしていない方がおられたら、至急、点検するか、なじみのマリンショップに

ご相談することをお勧めします。

また、インペラーは交換して、検水口から水が出ているのにオーバーヒートブザーが

なるという方は、もう壊れているかも?(BF8D~20Dの場合、オーバーヒートが

発生すると、回転制御し、回転が半分ぐらいに制御されます。さらにそのままの状態が

1分間続くと、エンジンを停止させます。エンジンは再スタート可能ですが、オーバヒートが

続く限り、上記の状況が繰り返されます)

オーバーヒートするからといって、たまにサーモスタットをはずしていると言う人が

いると聞きますが・・・・・・・恐ろしいことです。

皆さん、サーモスタットも管理をしっかりお願いしますね。


アメリカ沿岸警備隊とBF225A

2010-09-14 13:41:36 | ブログ

やっと秋の気配を体感できるようになりましたね。

食欲の秋、味覚の秋、ビールの・・・おっと、これは年中です!!

先日のミニボートフェスティバルで本田技研工業のUさんと話をしていて、

久しぶりに思い出したので少し、ほんの少々自慢話をさせていただきます。

アメリカ合衆国の沿岸を守っているのはご存知USCG、沿岸警備隊です。

このUSCGのロゴは、輸入品のアメリカ製ライフジャケットなどマリン用品

(特に安全備品類など)やボートのキャパシティープレート(定員の表示などのプレート)

にもこっそり表示されていたりして、この業界ではお目にかかることしばしばです。

でも、なんと本国の警備艇のエンジンに、ホンダ船外機が採用されているのを

ご存知でしょうか?

Uscg1_2 Uscg2

このボートは、アルミボートとゴムボートを組み合わせたようなボートです。

こんなのもあります。

Uscg3

アメリカなんですから、なぜに日本製のエンジンをわざわざ採用するの?

このBF225Aは静岡産です。

良く見ると、レーダーも日本のFURUNOさんが付いています。

大国アメリカの沿岸を守るのですから、性能が悪いのをわざわざ

採用することは無いでしょう。

沿岸警備隊内でのエンジンの講習も実施しているそうです。

Uscg4

なにやら話では、犯罪者のボートを追っかけるときはかなりハードなようで、

時にはクイックターンの連続で、信じられない部位が非常に痛むとのこと。

そういった情報もフィードバックし、耐久性の向上に役立てているとのこと。

それで採用されているのかな?

でも、こんな自慢話、なぜに企業広告で採用しないの?と

Uさんにお尋ねしましたが・・・・・理由は下の写真

Uscg5

(クリックすると、写真が拡大します)

企業広告に「機関銃」はNGだからとのこと。

いやはや、もったいない。

でもホンダ船外機の耐久性は、世界中で認知されていると思うと、非常にうれしい

限りです。

自慢話でスイマセンでした。