今年も浅草サンバカーニバルがやってきた。
昨年は途中で雨が降り、S2リーグはほとんど見られなかった。今年こそ快適に撮りたいが、今年も雨の予報である。でも今年は降るまいと高をくくり、雨具の類は一切持たなかった。
午後1時すぎに浅草に着いた。浅草サンバカーニバルは一般の人出もものすごいが、だからといって、先乗りして車道の席を取るほどオレは熱心ではない。この時間に着いても、歩道の2列目ぐらいから撮れるから、それでいいのである。
撮影場所は雷門を過ぎた進行方向の右側で、ここがオレのベストポジションである。
車道は見物客が3~4列で固めていたが、ほぼ座っているからよい。歩道のオレの前は婦人1列だけなので、撮影に支障はない。今年はここに決めた。
だが、ナナメ左前、車道の前から2列目に、男がひとり立っているのが気になった。さらに正面のやや右の2列目でも、青年が立っていた。
ものすごくイヤな予感がした。彼らの背中が、「これからパレードの終了まで、ここで立ちっ放しで撮影します」と宣言していたからである。
今のオレの位置から写真を撮った人は分かると思うが、車道の2列目で立たれると、もう撮影の障害になってしまう。
さらに恐ろしいのは彼らの右や後ろに座っている人で、横や前で人が立てば見えないから、自分たちも立ってしまう。その余波でその隣の人も…と、結局壁ができてしまうのである。
今回も早晩そうなる。必ずなる。
それならオレが別の場所をあたればいい、ということになるが、この時間から別の場所を探すのはイヤだ。
オレの正面の車道は車椅子の老婦人がいるので、ここは絶対に障害物にならない。立っている彼らは邪魔だが、ここで辛抱するしかないと思った。
パレードが始まった。まずはオープニングで、実行委員会と消防署のパレード。例年ここにはなぎら健壱がいるのだが、今年は確認できない。
ナナメ左で立っている男から2人置いて、オッサンが立った。案の定だ。オッサンはにこやかな顔でパレードの隊列を見送っているが、明らかに撮影の邪魔である。オッサン、オレがうらめしい視線を送っているのには気付かなかったろう。
ダンスチームがやってきた。ここで最初のタンガダンサーが現れたが、角度と例の障害物の関係で、オレが撮れるのは一瞬である。しかも彼女らが通過したのち、その後ろ姿を撮ろうとしても、正面右には立っている青年がいるし、その右もポツポツ立つ人が現れたので、もう撮影はできない。
田原小学校のバンド・フラッグ隊、浅草小学校の音楽隊が通る。ここは撮れなくても構わないが、それにしたって撮影範囲が狭くなった。
いよいよS2リーグの開幕である。1チーム目は「モシダーヂ・バガブンダ」。何ですか、このチームは。全体的に仮装行列な感じで、よく分からない。
気が付けば、ナナメ左の客席は、男とオッサンの間の2人も立ち、総勢4人の「壁」になっていた。
こうなるんだよなあ。やっぱりこうなるんだ。しかし今年は「壁」の出現が早くないか?
彼らはきっと、混雑する浅草カーニバルなのに、見晴らしのいい場所でサンバを撮影できることに、意外性を感じているだろう。でも裏を返せば、その陰で見づらく思っている人もいるということだ。
参考までに水着撮影会では、2列目は中腰になる。少しでもモデルを下方から撮りたいからだ。ここでカメラマン同士の息が合うと、カメラマンの撮影位置が後方にいくにつれ徐々に高くなって、ヒマワリの花びらのような見事な形状を形作る。
もちろん最前列や2列目でも立つバカはいるが、それは同好の士から白眼視される。
浅草に話を戻すが、そもそもなぜ彼らは立つのか。その前、つまり最前列の人は、おしなべて折り畳み椅子に腰掛けていた。
車道は端に行くにつれ低くなるから、これでは2列目でも前が見えない。それで2列目のバカが立ってしまうのである。
また最前列の人も、そこにいるなら腰掛ける必要もないと思うが、これから5時間の長丁場だし、何より体勢がラクだから、そうするわけだ。
まぁもっとも、サンバカメコが後方に配慮しないのは、志村その他のイベントを見れば明らかである。最前列の人は後ろの視界など配慮しないし、2列目以降も同じことだ。自分がエロい写真を撮れればいい。
要はオレが快適にダンサーを撮りたければ、3時間でも4時間でも早く来て、車道の最前列を確保すればよかったのだ。最前列組は、お前がそれをしなかったんだから、ここで愚痴るなバカヤロウ、と反論するであろう。
このあたりから、空模様が怪しくなってきた。
2チーム目は「ブロッコ・シズオカ」。今年不出場のソゥ・ナッセンチに代わる期待の地方チームだ。
もちろんタンガダンサーもいる。しかし例の壁で、よく見えない。唯一のシャッターチャンスは壁3人目と4人目の肩越しの生じている隙間から撮るものだが、これだってその隙間にダンサーが来ないことには話にならない。
もう、撮りようがないのである。しかもダンサーがオレの正面に来た時は、彼女らが横位置になって最もつまらないポーズになる、というのは以前書いた通りだ。
3チーム目は「カンタ・ブラジル行進部」。このあたりから雨脚が若干キツくなってきた。
雨による水没は大宮で経験しているからカメラを保護しなければならないが、オレはタオルはもちろん、ハンカチさえ忘れてきていた。しょうがないからコンビニのポリ袋でカメラを保護する。しかしこれでは撮影もしづらい。
さらに車道の3列目の人が、コンデジを撮りだして撮影を始めた。しかし例の壁が邪魔で、腕を上げ気味にして撮っている。これも当然オレの視界に入ってきた。
加えてオレの前にいた歩道の婦人が、カバンから折り畳み傘を取り出した。振り向いてオレを見るから、オレは「傘は困る」という顔を精一杯したのだが、婦人はおかまいなしに傘を広げた。
オレの視界が一瞬にして、黒い傘で塞がれた。
<以下、つづく>
昨年は途中で雨が降り、S2リーグはほとんど見られなかった。今年こそ快適に撮りたいが、今年も雨の予報である。でも今年は降るまいと高をくくり、雨具の類は一切持たなかった。
午後1時すぎに浅草に着いた。浅草サンバカーニバルは一般の人出もものすごいが、だからといって、先乗りして車道の席を取るほどオレは熱心ではない。この時間に着いても、歩道の2列目ぐらいから撮れるから、それでいいのである。
撮影場所は雷門を過ぎた進行方向の右側で、ここがオレのベストポジションである。
車道は見物客が3~4列で固めていたが、ほぼ座っているからよい。歩道のオレの前は婦人1列だけなので、撮影に支障はない。今年はここに決めた。
だが、ナナメ左前、車道の前から2列目に、男がひとり立っているのが気になった。さらに正面のやや右の2列目でも、青年が立っていた。
ものすごくイヤな予感がした。彼らの背中が、「これからパレードの終了まで、ここで立ちっ放しで撮影します」と宣言していたからである。
今のオレの位置から写真を撮った人は分かると思うが、車道の2列目で立たれると、もう撮影の障害になってしまう。
さらに恐ろしいのは彼らの右や後ろに座っている人で、横や前で人が立てば見えないから、自分たちも立ってしまう。その余波でその隣の人も…と、結局壁ができてしまうのである。
今回も早晩そうなる。必ずなる。
それならオレが別の場所をあたればいい、ということになるが、この時間から別の場所を探すのはイヤだ。
オレの正面の車道は車椅子の老婦人がいるので、ここは絶対に障害物にならない。立っている彼らは邪魔だが、ここで辛抱するしかないと思った。
パレードが始まった。まずはオープニングで、実行委員会と消防署のパレード。例年ここにはなぎら健壱がいるのだが、今年は確認できない。
ナナメ左で立っている男から2人置いて、オッサンが立った。案の定だ。オッサンはにこやかな顔でパレードの隊列を見送っているが、明らかに撮影の邪魔である。オッサン、オレがうらめしい視線を送っているのには気付かなかったろう。
ダンスチームがやってきた。ここで最初のタンガダンサーが現れたが、角度と例の障害物の関係で、オレが撮れるのは一瞬である。しかも彼女らが通過したのち、その後ろ姿を撮ろうとしても、正面右には立っている青年がいるし、その右もポツポツ立つ人が現れたので、もう撮影はできない。
田原小学校のバンド・フラッグ隊、浅草小学校の音楽隊が通る。ここは撮れなくても構わないが、それにしたって撮影範囲が狭くなった。
いよいよS2リーグの開幕である。1チーム目は「モシダーヂ・バガブンダ」。何ですか、このチームは。全体的に仮装行列な感じで、よく分からない。
気が付けば、ナナメ左の客席は、男とオッサンの間の2人も立ち、総勢4人の「壁」になっていた。
こうなるんだよなあ。やっぱりこうなるんだ。しかし今年は「壁」の出現が早くないか?
彼らはきっと、混雑する浅草カーニバルなのに、見晴らしのいい場所でサンバを撮影できることに、意外性を感じているだろう。でも裏を返せば、その陰で見づらく思っている人もいるということだ。
参考までに水着撮影会では、2列目は中腰になる。少しでもモデルを下方から撮りたいからだ。ここでカメラマン同士の息が合うと、カメラマンの撮影位置が後方にいくにつれ徐々に高くなって、ヒマワリの花びらのような見事な形状を形作る。
もちろん最前列や2列目でも立つバカはいるが、それは同好の士から白眼視される。
浅草に話を戻すが、そもそもなぜ彼らは立つのか。その前、つまり最前列の人は、おしなべて折り畳み椅子に腰掛けていた。
車道は端に行くにつれ低くなるから、これでは2列目でも前が見えない。それで2列目のバカが立ってしまうのである。
また最前列の人も、そこにいるなら腰掛ける必要もないと思うが、これから5時間の長丁場だし、何より体勢がラクだから、そうするわけだ。
まぁもっとも、サンバカメコが後方に配慮しないのは、志村その他のイベントを見れば明らかである。最前列の人は後ろの視界など配慮しないし、2列目以降も同じことだ。自分がエロい写真を撮れればいい。
要はオレが快適にダンサーを撮りたければ、3時間でも4時間でも早く来て、車道の最前列を確保すればよかったのだ。最前列組は、お前がそれをしなかったんだから、ここで愚痴るなバカヤロウ、と反論するであろう。
このあたりから、空模様が怪しくなってきた。
2チーム目は「ブロッコ・シズオカ」。今年不出場のソゥ・ナッセンチに代わる期待の地方チームだ。
もちろんタンガダンサーもいる。しかし例の壁で、よく見えない。唯一のシャッターチャンスは壁3人目と4人目の肩越しの生じている隙間から撮るものだが、これだってその隙間にダンサーが来ないことには話にならない。
もう、撮りようがないのである。しかもダンサーがオレの正面に来た時は、彼女らが横位置になって最もつまらないポーズになる、というのは以前書いた通りだ。
3チーム目は「カンタ・ブラジル行進部」。このあたりから雨脚が若干キツくなってきた。
雨による水没は大宮で経験しているからカメラを保護しなければならないが、オレはタオルはもちろん、ハンカチさえ忘れてきていた。しょうがないからコンビニのポリ袋でカメラを保護する。しかしこれでは撮影もしづらい。
さらに車道の3列目の人が、コンデジを撮りだして撮影を始めた。しかし例の壁が邪魔で、腕を上げ気味にして撮っている。これも当然オレの視界に入ってきた。
加えてオレの前にいた歩道の婦人が、カバンから折り畳み傘を取り出した。振り向いてオレを見るから、オレは「傘は困る」という顔を精一杯したのだが、婦人はおかまいなしに傘を広げた。
オレの視界が一瞬にして、黒い傘で塞がれた。
<以下、つづく>