雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

絶好調 ・ 小さな小さな物語 ( 422 )

2013-02-06 19:18:26 | 小さな小さな物語 第五部~第八部
ロンドンオリンピックの前半戦は、メダル獲得数で見る限り、日本は絶好調のようです。もっとも、金メダルの獲得数からいえば、皮算用に比べかなり物足りないようですが。
いずれにしても、それぞれの競技において、トップクラスで競う人たちには、ごく一部の例外の人を除けば、それほど大きな差があるわけではなく、その日にコンディションを最高潮に持っていけるかどうかが大切な要件の一つのようです。


「運も実力のうち」といわれることがありますように、あらゆる努力を重ねてきても、どうにもならない「運」といったものはあるみたいです。
例えば、今回度々話題になっている誤審や採点方法などについても、個々の選手ではどうすることも出来ない「運」の一つのように思われます。無気力試合とかで失格にされた選手たちに対して、あるテレビのコメンテーターは、「あの試合は全く問題ない。メダル獲得を至上命令とされている選手なら、あらゆる可能性を求めるのは当然のことだ。問題があるとすれば、そのような競技体系をつくった運営組織であって、選手に罰を与えるなんてとんでもない」と発言されていました。全く同感で、少々選手やコーチ陣もやり過ぎだとは思いますが、彼らが社会的な制裁を受けないよう願うばかりです。
柔道競技においてもこんなシーンがありました。「主審が『一本』を示したため、攻めていた選手はそれを確認して攻撃を中断しました。ところが、その後『技あり』に変更され、それまでの獲得技の関係で負けとなりました」、これなども、仕方がないといえばそれまでですが、攻めていた選手にすれば、相手を倒した後押さえ込みに入れる体制だったのを、『一本』として、試合の中断を強制されてしまったのです。


古い話になりますが、第二次世界大戦直後、「フジヤマのトビウオ」と称せられた水泳選手がいました。しかし、敗戦国であるわが国はオリンピックに参加することが出来ず、絶好調の時代にオリンピックで活躍する機会を与えられませんでした。
その後にも、モスクワオリンピックを西側諸国の一員としてボイコットしたことがありますが、政治的な問題はともかく、そのため絶頂期での活躍を封印されてしまった選手もいます。


今、わが家の庭では、蝉が絶好調です。そんなに張りきらなくてもよいのにと思うほど、懸命に鳴いています。
熱中症を恐れて、この一週間ばかり手抜きをしていると、チャンス到来とばかり雑草たちは絶好調です。
いつもたくさんの実を付けてくれるキンカンは、まだ少し実が残っているのに白い花をいっぱいつけて、目下落花の真っ最中です。案外、今がキンカンの絶好調の期間なのかもしれません。
さて、そこで、我が身をちょいと見つめてみますと、何とまあ、絶好調に縁のない人生だと少々考えこんでしまいます。
ただ、オリンピック選手にしても、蝉にしても、雑草にしても、キンカンにしても、絶好調の時以外の方が遥かに長く、その時を懸命に生きているのだと思われます。こんな例えの中にオリンピック選手を入れると叱られますが、そこそこの状態で生きて行くのも、これもまた人生かもしれません。

( 2012.08.07 )

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