雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

趣味は何ですか? ・ 小さな小さな物語 ( 428 )

2013-02-06 19:12:35 | 小さな小さな物語 第五部~第八部
「趣味は何ですか?」と尋ねられて、返答に困る人って案外多いのではないでしょうか。
実は私などはその典型的な人だったのですが、最近それをクリアーすることが出来ました。
どうしてなのか、少々与太話に付き合って下さい。


かつて、バブル華やかし頃、ある会社の男性社員に趣味を尋ねると、およそ半数が「ゴルフ」と答えたそうです。その傾向は、この会社だけではなかったようです。
確かにある時期、猫も杓子もゴルフ、ゴルフといった傾向があったように思います。しかし、どうでしょうか、ひと月に一度コースに出るか出ないか程度で、しかも、仲間内でゴルフが出来ないというわけにもいかず、営業上の付き合いとしても必要なこともあり、乏しい小遣いをやりくりしながら始めたゴルフ、確かにコースに出れば楽しいのは楽しいのですが、さて、これは趣味といえる類のものなのでしょうか。
読書というのも同様です。相当以前のことになりますが、その頃の履歴書に書く趣味のナンバーワンは読書だったそうです。でも、人様に趣味ですと広言出来る読書とは、どの程度のものを指すのでしょうか。
最近では、ウォーキングやジョギングが人気のようですが、それも、ダイエットや健康管理のために必死に頑張っているものも趣味の部類に入るのでしょうか。


そもそも趣味とは何か、例によって広辞苑の力を借りることにしました。
趣味とは、「①感興をさそう状態。おもむき。あじわい。 ②ものごとのあじわいを感じとる力。美的な感覚のもち方。このみ。 ③専門家としてでなく、楽しみとしてする事柄」とあります。
ついでに、よく似た言葉である道楽も調べてみました。
道楽とは、「①本職以外の趣味などにふけり楽しむこと。また、その趣味。 ②ものずき。好事(コウズ)。 ③酒食・ばくちなどの遊興にふけること。放蕩。遊蕩。また、その人」とあります。
道楽という言葉は、最近あまり見かけませんが、こちらの方は、家族に迷惑をかけ、身代を傾けるほどのものでなければ、使ってはいけない言葉です。ちまちまと、懐を気にしているようでは、とても道楽などには値しないと思うのです。但し、これは私見ですが。
趣味も、本来の意味は現在私たちが使っているものとは少し違っています。私たちが趣味として使っているのは、③の意味がほとんどなのです。本当は、「趣味が良い」といった風に①や②の意味も、少しは含まれていなければならないと思うのですが、これもまた私見です。


そこで、私は今、「趣味は何ですか?」と尋ねられますと、堂々と、「園芸です」と答えます。
私の園芸の腕前といえば、時間だけはそこそこ使っていますが、園芸と称している時間の半分は「草抜き作業」です。青菜を植えれば、虫たちの食料供給者として感謝される状態ですし、トマトはダイコン風味だと珍重され、ダイコンは、一休さんでも「小根とはいわない」と言ってくれるかどうか心配な出来栄えです。でも、楽しいのです。土と汗にまみれて、まことに優雅な時間なのです。
そもそも、趣味などというものは、玄人のような腕前というものはその範疇から外れているのです。「趣味の域を超えている」という言葉があるでしょう。あまりの上手は、趣味ではないのです。
また、「趣味に命をかける」とか「趣味が生きがい」というほどのめり込むのもどうかという気がします。道楽の説明にもあるように、スケールの小さな道楽の域に迷い込む恐れがあるから注意が必要です。
趣味とは、たずさわっている時は楽しく、かといって、別の用事があれば簡単に中止することが出来、その手際や出来栄えが平均を超えない程度のもの、そういったものを指すのです。
以上は、全く自分のためだけの定義ですので、反論はご勘弁ください。
「ところで、あなたの趣味は?」

( 2012.08.25 )

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