麗しの枕草子物語
夕涼みの頃
とても暑い季節、夕涼みを楽しみたくなる時刻、そうですねえ、人の顔などがはっきりとは見えなくなった頃でしょうか、男性の車がね、ええ、先払いを立てているような御方はもちろんですが、それほどでもない男性であっても、車の後ろの御簾を上に巻き上げて、二人であれ一人っきりであれ、すごい速さで走らせているのが、見るからに涼しげですばらしいのですよ。
その上に、車上で琵琶を掻き鳴らしたり、笛の音など聞こえてきたりしますと、すれ違ってしまうのがおしいほどです。
そんなすばらしい車と出会った時には、あの下品なはずの牛の引き綱の匂いまでが、何だかうっとりさせられるように感じてしまうのですから、何だか、少し変ですわねぇ。
(第二百七段・いみじう暑き頃、より)
夕涼みの頃
とても暑い季節、夕涼みを楽しみたくなる時刻、そうですねえ、人の顔などがはっきりとは見えなくなった頃でしょうか、男性の車がね、ええ、先払いを立てているような御方はもちろんですが、それほどでもない男性であっても、車の後ろの御簾を上に巻き上げて、二人であれ一人っきりであれ、すごい速さで走らせているのが、見るからに涼しげですばらしいのですよ。
その上に、車上で琵琶を掻き鳴らしたり、笛の音など聞こえてきたりしますと、すれ違ってしまうのがおしいほどです。
そんなすばらしい車と出会った時には、あの下品なはずの牛の引き綱の匂いまでが、何だかうっとりさせられるように感じてしまうのですから、何だか、少し変ですわねぇ。
(第二百七段・いみじう暑き頃、より)
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