雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

伝統と改革 ・ 小さな小さな物語 ( 725 )

2015-09-24 14:51:08 | 小さな小さな物語 第十三部
世間の注目を浴びていた家具販売会社の主導権争いは、株主総会で決着させるというドラマチックな形で一応の終演となりました。
経営の実権者や経営方針などを株主総会で決着させるというのは、ごくごく当たり前のことですが、実際にはめったにお目にかかることがないようです。
これまでにも世間の注目を浴びた経営権争いが、株主総会での決着が注目されたことがありますが、それらのほとんどは、外部からの買収や、外部勢力の支援を受けて社内が対立した場合などがほとんどで、創業者一族による争いが株主総会まで流れ込むというのは大変珍しく、大いに興味がありました。

その対立の中心点が、経営方針にあるのか、肉親間の軋轢なのかは微妙に思われますが、これだけ大きく報道されてしまったことは、今後に様々な影響を与える可能性は否定できないでしょう。
テレビなどのコメントやインタビューなどでは、「家族がもめている店で家具など買いたくない」という声がかなり多く報道されていましたが、人の心理はそれほど単純なものではないはずです。
今回の騒動のテレビなどの報道が、同社の知名度を格段に高めたことは確かで、もし広告としてこれだけの報道媒体を使えば数十億円になるそうですが、実際はその視聴率や関心度の高さを加味すれば、百億円を超えるのではないでしょうか。
いくら世間の注目を浴びても、マイナスイメージが定着したという意見もあるようですが、そうとは限らないと思われます。
無事株主総会を乗り切った女性経営者の凛とした姿は、少なからぬファンを誕生させたのではないでしょうか。不祥事などで登場してくる、企業や官公庁の責任者などと比べてみて、その魅力の差は多くの人が感じたのではないでしょうか。
しかし、経営は、人気投票で決まるものではありませんから、注目度が高くなった分、これからのハードルは高いものになるでしょう。真価を発揮するのは今後の経営力次第といえましょう。
健闘を大いに期待しています。

ところで、わが国には長寿企業といわれる会社が多いそうです。その数は、世界的に見た場合突出しているそうです。
創業100年を越える会社は2万社ともいわれ、200年、300年という企業も相当あり、創業1000年を超える企業も数社存在しているそうです。
簡単に創業100年といっても、それらのどの企業にも、存続の危機といわれるような時が一度や二度はあったはずです。三百年、四百年となれば、社内事情による危機ばかりでなく、第二次世界大戦ばかりでなく明治維新という大きな社会変革を乗り越えてきていることになります。
今回の家具販売会社のお家騒動も、同社にとっては小さな事件ではないでしょうが、100年、200年の歴史を刻むのだとすれば、当然経験しなければならない試練だったのではないでしょうか。

わが国に長寿企業が多い最大の理由は、家族による経営が重視され、お家大事、お店大事の精神が引き継がれてきたことだそうです。もちろん、全くなかったわけではありませんが、ヨーロッパなどに比べて、内戦や外国からの侵略が少なかったことも大きな要因になっているのでしょうが、例えば、大阪船場の老舗の家訓などを見れば、営々と家業を引き継いでいく知恵が熱く伝えられているように思われます。
しかし、特に近代ともなれば、伝統を重んじるばかりで企業を存続させることなど難しく、常に改善・改革が求められるのでしょう。そして、伝統と改革が衝突し、御すことが出来なかった企業はその姿を消していったのでしょう。
伝統を守ること、新しい知恵を加えていくこと、このバランスはなかなか難しいようです。

( 2015.03.31 )

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