雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

祈りのある生活 ・ 小さな小さな物語 ( 121 )

2010-07-04 18:21:10 | 小さな小さな物語 第一部~第四部
今読んでいる小説の中に、王朝時代の宮中における出産の様子を描写しているシーンがありました。
有力寺院などには安産の祈祷を命じ、高僧たちは側近くに控えてひたすら祈る。弦を鳴らして悪霊を祓い、お付きの女官たちも、かの神社、かの寺院、かの祠といわず、霊験あるとされるあらゆるものにすがる・・・。


ある古老の話。
小さな子供の頃、農作物の番をする小屋にお祖父さんといるとき、大風に襲われたことがあったとか。その時お祖父さんは「ホーイ、ホーイ」と両手を振りまわし「大風よ向こうへ行け」と叫び続けたそうな。
そんなことが何の役にも立たないはずだが、子供心にすごく安心したのを覚えていると、その古老は語る。



現在の病院には、そこがどれほど充実した病院であっても、祈祷の部署はないし、その専門家もいないようだ。
人間の心は弱く、まして重い病を背負ったり、付き添っている近親者にとっては、時には科学の力だけでは闘い抜けない時もあるのではないだろうか。
最近では、そのためのケアーが重視されつつあるが、神や仏に縋りなさいという指導は多分ないのでしょう。
宗教系の病院などでは、このあたりのことは少し違うのでしょうか。


その一方で、怪しげな祈祷や霊験あらたかだという玉や壺や印章などを売りつける詐欺集団も少なくなく、だまされる人も、これまた少なくないとか。
わが国は八百万の神々がおわします所です。その国で、自分が頼りにできる正しい神様を一人も見つけられないのはなぜなのでしょうか。
科学の力を無視したり、迷信を信じ過ぎるのもどうかと思いますが、日常の生活の中で八百万の神々の全員とはいいませんが、何人かと親しくすることも大切なのではないでしょうか。

( 2009.12.21 )

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