前政権が解散を決意してから、わが国の経済環境は文字通り様変わりの変化を見せています。
新政権への期待の大きさに、少々怖くなるような変わりようですが、同時に、遅まきながらあの時点で解散を決意してくれた前政権に感謝したいと思います。
ただ、何が変化したかと考えてみますと、対ドル相場がほんの10円ばかり円安方向に動いたことと、それによる株式市場の上昇で上場株式の総価格は大分増加しましたが、実は、実体経済で特別な変化が実現しているわけではありません。
それにしても、「景気は気から」とかいうそうですが、今回ばかりはこの言葉の凄さを見せつけられた気持ちです。
さあ、そこで、この、物語にしても信じられないような二カ月ばかりの間の変化を、実体面で良い方向で実現していくことが大切です。そのためには、この半年ばかりが正念場だと思うのです。
今回の変化の基となったものを見てみますと、円安と公共事業を中心とした財政支出への期待が主なものです。
「三本の矢」などと、実に古典的なたとえを示してくれていますが、たとえは古典的であろうとなかろうと、実行・実現されるかどうかが重要なのです。規制緩和や成長分野の育成などということは、これまでも聞き飽きるほど聞かされたテーマです。本気で実行するかどうかなのです。
そして、これも予想したことではありますが、「円安」の副作用について唱える人たちが頑張り始めています。当たり前のことで、円安になれば輸入価格が上昇することなど誰にでも分かることです。その面だけを強調していては、デフレ脱却など不可能です。もっともっと円安方向に誘導して、国内の雇用を確保することが重要なのです。
公共事業を中心とした財政出動に対しても反対意見がぼつぼつ聞こえ始めました。「公共事業性悪説」のような意見を述べる人もたまに見ますが、あまりにも単純な発想なので無視するとしましても、財政規律を心配する考えを無視することは出来ません。しかし、わが国の財政は、いくら緊縮財政を実施しても膨大な国の借金を減らすことなどできません。何としても、税収を増やすことが大切なのです。出来ることなら、この時期の消費税の引き上げなどという愚策以外の方法で。
政府発表によれば、補正並びに13年度予算が予定通り実行された場合、年度末の国債発行残高は、750兆円になるそうです。
同年度の税収見込みが43兆円ほどですから、この分の10%を返済に充てていっても、180年近くかかる計算になります。つまり、もはやわが国の財政は、学校で習ったような知識では、完全に返済することなどできない状態になっているのです。
では、どうすればよいのか。といっても、そんな方法が簡単に見つかるわけはないはずです。ただ、あえて挙げるとすれば、「税収と税外収入を飛躍的に増やす」か「借金など返す必要がないという有無を言わせぬ理論を確立させること」の二つのように思うのです。もっとも、千倍程度のインフレにするというのもあるかもしれませんがこれは論外とします。
いずれにしても、今私たちは、経済再生の正念場にあります。優れた技術を、優れたシステムを、そして強い「円」をどんどん売っていくことが必要とされています。
( 2013.02.09 )