緑陰茶話   - みどりさんのシニアライフ -

エッセイとフォト

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ルリビタキが“なた隠し”と呼ばれるわけ

2020年11月29日 | 野鳥
昨日、天気も良いので庭仕事に精をだしました。
プランターにお正月用の花を植えこんだり。


雑草を抜いたり、大量の柿落ち葉を集めてゴミ袋に入れたり。

ふと気が付くと花切狭がありません。
使ったことは覚えているので庭中探しまくりました。

うちの庭、昔の一戸建てなので結構広いです。
絶対にどこかに置いてある、ルリビタキもいないのに無くす筈がない、そう思いました。
結局、落ち葉を入れた大きなゴミ袋の中身を、同じ大きさのゴミ袋に入れ替えながらゴミの中を探したら、落ち葉と一緒にありました。

えっ? 花切狭を無くすのとルリビタキが何の関係があるのかって?
あるんです、それが。
昔からルリビタキには“なた隠し”という異名があって、冬場に山仕事をしている人のなたを隠してしまうんです。
なただけじゃなく、持っていた道具を隠すんです。

そもそもルリビタキはこういう鳥です。

今年の3月、京都御苑で撮った子。
2歳くらいかな。
ルリビタキの♂は、羽が青いのですが 、齢を重ねるほど綺麗な青になるのです。
写真の子は若いです。

ルリビタキは冬鳥で、夏は高山で繁殖し、冬になると人里近くの山林で暮らすのです。
で、なぜ人が持っているなたを隠すのかです。

それは、ほだ木とかを集めに人が山に行くと、冬枯れの景色の中で青いルリビタキはとても目立つんです。
しかもルリビタキは近づいてきてチラチラと人を見ます。
明らかに自分を見ているのです。
そうなると、山仕事をしていても段々ルリビタキの事が気になってきます。

ついには、ひょっとして、自分のことをついて来いと誘っているのではないかと思ってしまいます。
で、ついついルリビタキを追いかけてしまいます。
するとルリビタキは逃げるんですが、それでもチラチラとつぶらな瞳で自分のことを見ています。
だから、なおもルリビタキの跡を追ってしまうんです。

そうこうする内にハタと我に返ります。
自分は小鳥の後なんか追いかけて何をやっているのだと。
仕事に戻ろうと。
その時、手にしていた筈のなたが無いのに気づきます。
いつの間にかどこかに置いてきたのです。
そうして冬の山の中をなたを探しまくる破目になります。

それって、ルリビタキがなたを隠したわけじゃない、単に人がなたをどこに置いたか忘れただけじゃないかって話です。
でもルリビタキの不審な行動によって引き起こされた事態です。
種を明かせば、ルリビタキは縄張り意識が強くって、縄張りの中に入ってきた人が気になって見ていただけなんですけど。

いずれにしても、古来より、冬場に山仕事をした人はルリビタキのおかげでなたを探しまくることになり、その結果、ルリビタキはなた隠しという異名を持つことになったのだそうです。
私はこの話を神戸森林植物園のおじさんから聞きました。

神戸森林植物園にもルリビタキはいるでしょうけど、12月になれば、京都御苑に行って、ルリビタキに会おうと思います。
同じ場所に戻ってくる筈だから同じ子に会えるかもしれません。
3月に見た時より綺麗な青になっているかもです。