りなりあ

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約束を抱いて 第四章-28

2008-04-06 04:14:36 | 約束を抱いて 第四章

パーティが終わり、晴己達は来客者を見送っていた。
「「斉藤むつみさん。」」
自分を呼ぶ声が左右から聞こえて、むつみは両隣を見た。
「すみません。お先にどうぞ。」
声を出した右側に立つ男性を、むつみは知らない。
「いいえ。どうぞ。」
左側に立つ声の主には、見覚えがあった。
「すみません。すぐに済みますので。」
むつみを挟んで会話をする2人の男性を、むつみは交互に見た。
「あなたに、お礼を言いたくて。」
「私に、ですか?」
見上げた先にある顔を、むつみは知らない。
「はい。私の」
「すみませーん。」
言葉を遮る大声の主が駆けて来る。
「あ、ごめんね、むつみちゃん。ちょっと悪いけど。」
久保は、そう言うと男性の腕を取る。
「さっきの商品ですけど、もう少し他の色も見せてください。」
「あぁ。構わないですが。」
男性が戸惑いながら、でも久保の声に負けている。
「早速ですね。これから。」
「え?これからですか?」
久保に引き摺られるようにして、男性が去っていく。
その後姿を見ながら、むつみは首を傾げた。
「いいのかな?話が途中だったみたいだけれど。」
むつみは振り向いた。
「多分…というか、私、あの方にお礼を言ってもらうようなこと、覚えがないので。あの…私に何か?」
見下ろしてくる彼を、むつみは不思議に思った。
「あ…いや。ごめん。似ていたものだから。いや…似ていないかな?」
「母にですか?」
彼は答えない。
「母には似ていないと思います。似ているのは髪だけです。」
「そうだね。髪が…とても。」
また、彼は黙る。
「むつみちゃん?」
瑠璃の声がして、むつみはホッとした。
例え碧の親しい知り合いでも、男性に見つめられるのは抵抗がある。
「今度、撮影を見においで。」
彼は背中を向けるが、すぐに振り向き、またむつみを見た。
「…監督さんと、知り合い?」
「ううん。あの時、お母さんのホテルで一緒に食事をしただけ。」
「行きましょう。」
瑠璃は怪訝に思ったのだろう。
むつみの手を取り、その場から離れた。

◇◇◇

「むつみちゃん。」
加奈子と杉山が香坂純也に連れられて会場を後にし、優輝と涼の姿も見えなくなった頃、鈴乃がむつみの名を呼んだ。
鈴乃と、彼女の夫である早川修司と、そして舞が並んで立っている。
「おねえちゃん。まいね、とってもたのしかったの。もっと、おねえちゃんと、おはなしがしたいの。また、あえる?」
舞の問いに、むつみは確信のない答えを返す。
「会えるわ。私も舞ちゃんと、もっと、たくさん、話がしたいわ。」

舞の髪には小さな花が飾られている。
それを見て、初めて新堂のパーティに来た時の杏依を思い出す。
「可愛いわ。舞ちゃんの髪。」
「いいでしょう?あいちゃんがしてくれたの。」
舞が嬉しそうに笑う。
杏依の中に、あの時の出来事が、しっかりと残っている事に、むつみは嬉しくなる。
修司と舞が、その場を離れると、鈴乃がむつみの手を取った。
「ありがとう。」
鈴乃の言葉を聞いても、泣いてはいけない、そう思った。
パーティは終わっているし、残っている人も少ない。
泣いても許される状況だが、むつみは出来る限り耐えようと思った。
「鈴、さん?」
だが、むつみの手を包む鈴乃の両手に雫が落ちる。
「ごめんね。むつみちゃん。あなたに何も言わず、何もしてあげられなくて。ごめんね。」
「いいえ、つらかったのは…鈴さん達ですから。」
「絵里を…許してあげて。」
涙を流す鈴乃に、むつみは答えられなかった。
「私が言うのは間違っているわよね。絵里を追いつめたのも、絵里に重荷を背負わせたのも私なのに。」
「鈴さん。私は大丈夫です。」
「むつみちゃん。私と絵里はね、あなたが幸せでいてくれるのなら、凄く嬉しい。」
「鈴さん?」
「それだけじゃないわ。私達も…救われる。」
むつみは鈴乃の言葉を聞いて、過去に縛られているのは自分だけではないのだと、改めて感じた。



2 コメント

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Unknown (まこと)
2008-04-06 12:08:55
新しい人、登場!?

続き、楽しみにしてます♪
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Unknown (みのり)
2008-04-07 22:37:28
パーティの話が、どんどん長くなってしまって、
色んな人を登場させてしまいました…。
系図を近々書き直しますね。
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