りなりあ

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約束を抱いて 第四章-8

2008-02-28 18:54:31 | 約束を抱いて 第四章

「相談って、何を?」
瑠璃は何か気付いているのだろうか?
「何をって、それは分からないけれど、何か悩んでいる事ぐらい分かるわ。碧さんもピリピリしているし。」
「大丈夫だと、思うよ。晴己が知っているだろう。」
このパーティの招待状を晴己自ら届けたのだから、その時に晴己が何か対処しているはずだ。
「そう…ですよね。」
瑠璃がホッとした表情を見せ、そして次には不安そうな顔をする。
「どうかした?瑠璃さん。」

「不思議なの。私が、こんな気持ちになるのが。あの頃、私がむつみちゃんと関わる事になるなんて考えもしなかったから。」
「あの頃?」
「えぇ。私が中学3年の時。杏依が新堂さんと出会って、斉藤むつみという女の子の存在を知って。私が、むつみちゃんが傷つかないように、そんな事を思うなんて、考えもしなかった。」
涼は、自分と同じ事を考えている瑠璃に驚いていた。
「対比、かな?」
「え?」
「あまりにもあの子は杏依と違いすぎる。性格や雰囲気、容貌も。当然だけど、杏依とは間逆にいる。同じように、“新堂晴己が愛する人”なのに。」
「そういえば、そうだな…。」
「“妻”という位置は、怖いぐらい強力なのね。もちろん、むつみちゃんと新堂さんが、それは想像できない事だけど。」
瑠璃の言葉に、涼は笹本絵里を思い出していた。
『どうして晴己様は結婚なさったの?斉藤むつみが成人するのを待てば良かったでしょう?』
直樹が所有するマンションに優輝を迎えに行った時、絵里が言った言葉は、涼に嫌悪感を抱かせた。
「あの頃は、こんな状況になるなんて分からなくて、知らなくて。あまりにも私達の住む世界と違ったの。だから、何度もノートを見たわ。今日も来る前にノートを開いて。」
「ノート?」
瑠璃が少し恥ずかしそうに笑う。
「人数が多過ぎて理解できなくて。杏依が新堂さんに家庭教師をしてもらっていて、でも、それには色んな人が関わっている事が分かって。私の友人が新堂さんの事を知っていて色々と教えてくれたの。でも、登場人物が多くて複雑で、ノートに関係図を書いたの。」
「その気持ち分かるな。俺もこれだけの人数、頭が痛い。ところで、その友人って?」
「目黒祥子(めぐろしょうこ)。涼さんは、笹本絵里さんを御存知?」
「あぁ。」
「彼女は、絵里さんの従妹。だから、いろんな事情を詳しく知っていて。それで、気になる事が…。」
「何?」
「むつみちゃん。最近、時々帽子を被るの、知ってます?」
「帽子?」
「そう。グレーの、まぁ、夏用の日よけにはなるかなぁ、って感じの帽子。」
「それが何か?」
「むつみちゃんの帽子、可愛いわね、って言ったら、あの子、何て言ったと思う?絵里さんがくれたのって嬉しそうに笑うのよ。」
「え?」
「正確には貸してくれただけだから、返さなきゃいけないけど、可愛いから貰いたいって。だから私から祥子を通じて絵里さんに聞いて欲しいって。嫌いな人からの帽子なんて、貰いたくないでしょ?」
涼と瑠璃は、むつみの姿を探した。
この会場で目立つのはゲームが行なわれている一角で、その見学者の中に優輝の姿は確認出来るが、むつみの姿は見えない。
「不思議だなって思って、でも質問するのも迷って。そんな私に彼女は何て言ったと思います?」
瑠璃の表情は複雑だった。
嬉しそうな、楽しそうな、だけど困っているようにも感じる複雑な表情。
「今の私には優輝君がいるから大丈夫って。」
その言葉に、涼は瞬きを繰り返す。
「それ、結構平然とした顔で言っていただろ?」
「えぇ。照れもせずに。あれが思春期特有なのかしらね?聞いている私の方が恥ずかしかったわ。でも、凄く幸せそうだった。」
そう話す瑠璃も幸せそうで、再度、涼はむつみを探した。



1 コメント

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Unknown ()
2008-02-28 20:54:08
絵里さんがむつみちゃんに帽子?
絵里さんの考えてることが読めない・・・。
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