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『64―ロクヨン― 前編』(TOHOシネマズ1ヶ月フリーパスにて鑑賞の9本目@梅田)

2016年05月15日 | 映画(ら行)
『64―ロクヨン― 前編』
監督:瀬々敬久
出演:佐藤浩市,綾野剛,榮倉奈々,夏川結衣,緒形直人,
   窪田正孝,坂口健太郎,瑛太,永瀬正敏,三浦友和他

GW最終日の日曜日、甲子園でデーゲーム観戦前に1本
前日はいつもの土曜日と変わらず夜中まで食べて飲んでいたため、
日曜日の朝もいつもと同じく寝不足気味。
かなりしんどかったけれど、これはやはり観ておかなくては。

横山秀夫による原作は上下巻。上巻は約350頁、下巻は約430頁。
昨年購入してすぐには読まずに映画公開直前に読み始めました。
下巻をあと50頁ほど残した状態で映画を鑑賞。

わずか7日間だった昭和64年、群馬県警管内で起きた少女誘拐事件。
1月5日、漬物店を営む雨宮(永瀬正敏)の一人娘で7歳の翔子が誘拐される。
サトウと名乗る犯人から連絡を受けた雨宮は身代金2千万円を支払うも、
1月7日、翔子は無残な遺体となって発見される。
同日、昭和天皇が崩御。メディアはその記事のみでいっぱいに。

平成14年、犯人は逮捕されないまま、あと1年で時効が来る。
事件発生当時、刑事部に所属していた三上(佐藤浩市)は警務部に異動し、
広報室の広報官を務めている。
私生活では高校生の娘あゆみ(芳根京子)が家出失踪中。
あゆみからいつ連絡があるやもしれぬからと、
妻の美那子(夏川結衣)はほとんど家を出ようとしない。
身元不明の遺体が上がったと聞けば、どこであれ夫婦で確かめに駆けつける。
そのたびにあゆみではないことに安堵するとともに、
どこにいるかわからぬ娘を想い、辛くなる。

あゆみの身体特徴に似た遺体を青森まで確認に行った翌日、
出勤した三上は、秋川(瑛太)や手嶋(坂口健太郎)らをはじめとする新聞各社の記者の応対に追われる。
そのさなか、警務部長の赤間(滝藤賢一)から呼び出され、
警察庁長官が視察に来る予定だと聞かされる。
ロクヨン犯人逮捕に向けて、現場の士気を高めるという建前のPRだ。
長官が雨宮と面会できるように段取りをつけろとのこと。

雨宮を訪ねた三上は、彼の妻が1年前に他界したと知る。
事件の解決を見ずに亡くなったことが無念でならなかったろう。
長官との面会がマスコミに取り上げられれば、
犯人逮捕に繋がる新たな情報が寄せられるかもしれないと三上は持ちかけるが、
雨宮はその申し出を丁寧に、しかしあっさりと断る。
長官との視察を実現させるのが三上の仕事。雨宮の頑な態度は何故なのか。
いったいどうすれば受け入れてもらえるのか。

一方、管内では妊婦が老人を車で撥ねる事故が発生。
県警は加害者の心理状態に考慮して匿名を貫く姿勢。
記者たちが実名を求めて三上に噛みつくのだが……。

原作にほぼ忠実な映画版。とても上手く端折った印象。
ロクヨンの犯人逮捕のために警察が一丸となって突き進む話ではありません。
時間を割いて描かれるのは、刑事部と警務部の対立。
そのせいで矢面に立たされた三上が記者たちから突き上げられます。

原作と大いにちがうのは、三上の容貌。
佐藤浩市演じる主人公は、原作では「鬼瓦」と呼ばれる醜男。
娘からその顔に似たことを呪われるほどの顔です。
対する妻は顔立ちのせいで知らぬ間に恨まれるほどの美人。
この点のみが原作と映画のちがいと言ってもいいぐらいです。

警察内部の組織について詳しい一般人などそうそういないと思われ、
原作を読んでいないと理解しづらい部分もあります。
実際、上映終了後に漏れ聞こえてきた会話には、
「組織のことわからんから、ついていきにくいな」というものもありました。
ややこしかったという方は、ぜひ原作をお読みください。

原作の下巻160頁付近、電車内で読んでいて泣きました。
ちょうどそのシーンが本作のラストになります。
生きていくうえでは駆け引きが必要なことも多いけれど、
誠意を持って接しなければ、人の心は掴めない。
「戦略なき戦略」が強く心に残ります。
映画版でもこのシーンではやっぱり泣きました。

聞くだけで豪華なキャスト。
1年前にNHK「土曜ドラマ」でTVドラマ化されたさいのキャストと比較すると、
どちらもうなずけておもしろいので、並べて書いてみます。
←の前が映画版、←の後がTVドラマ版。

三上:佐藤浩市 ← ピエール瀧
その妻:夏川結衣 ← 木村佳乃
雨宮:永瀬正敏 ← 段田安則
三上の部下:綾野剛榮倉奈々新井浩文山本美月
三上の同期エリート:仲村トオル吉田栄作
三上が敬愛する元上司:三浦友和柴田恭平

なるほどという感じですよね。
原作のイメージにより近いのはTVドラマ版かと思いますが、
あまりに映画の予告編を観すぎてしまったので、
映画版の配役しか頭に浮かびません。

こんなところに出ていると嬉しくなったのは、宇野祥平菜葉菜
どちらも台詞の多い記者役で出演しています。
『どんずまり便器』(2012)で共演していた2人であることを思い出して苦笑い。

余談が多くなりました。
映画の合間に書店へ行けば原作山積み、ビデオも流れて、
遠藤憲一の声と小田和正の歌が流れ、頭の中もエンドレス状態。
後編が待ち遠しいです。

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