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『ボーダー 二つの世界』

2019年10月26日 | 映画(は行)
『ボーダー 二つの世界』(原題:Grans)
監督:アリ・アッバシ
出演:エヴァ・メランデル,エーロ・ミロノフ,ステーン・リュングレン,
   ヨルゲン・トゥーソン,アン・ペトレン,シェル・ウィレルムセン他
 
前日に飲み会帰りの映画鑑賞に挑んで爆睡してしまったにもかかわらず、
この日も出かけた帰りにシネ・リーブル梅田へ。
劇場の売店でエビスプレミアムブラックとつまみを少々。
ロビーで飲みながら本を読んで20:40の開映待ち。
 
スウェーデン/デンマーク作品。
原作は『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008)と同じくヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの同名短編小説。
シネコンでメジャー作品しか観たことがないという人には決して鑑賞をお勧めできません。
変態の極みとも言える作品で、第71回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ受賞。
 
スウェーデンの税関で働く女性ティーナには人間の感情を嗅ぎ分ける才能がある。
違法な物を持ち込もうとする人間は、怒りや恐れ、あるいは羞恥などの感情を持つから、
ティーナは入国審査でそういった人間を即座に見極めることができる貴重な人材。
 
しかし、その容貌はあまりにも醜い。
犬のハンドラーであるローランドとティーナの持ち家で同棲中ではあるものの、肉体関係はなし。
求められてもティーナが自分には無理だと頑なに拒んでいる。
 
ある日、いつもどおり税関で勤務中のティーナは、
自分と非常に似通った醜い容貌の旅行者ヴォーレと出会う。
彼にどこか良くない匂いを感じ取り、ティーナの同僚が身体検査をしたところ、
見た目はれっきとしたヴォーレにペニスはなく、膣があった。
性転換手術を受けたわけでもないらしい。
 
犯罪者のごとく調べたことを謝るティーナだったが、ヴォーレは気にする必要はないと言う。
ティーナは自分の家の離れを貸すとヴォーレに提案、彼はその提案を受け入れる。
 
一方、町では児童ポルノビデオを撮影している場所があることがわかり、
悪事に対する嗅覚が優れているティーナが摘発に協力するのだが……。
 
ネタバレすると、己を単なる醜い人間だと信じていたティーナは人間ではなくて、
ヴォーレによれば「トロール」
同類だからか、ヴォーレにどうしようもなく惹かれてしまったティーナが、
お互いに欲情して繋がるところは、かなりキモい。
見た目は男なのに膣があるヴォーレに、股からいきなりニョキニョキとペニスが生えてきたティーナが挿入。
普通にシネコンで上映している映画しか観ない人は引きますよ、きっと(笑)。
 
同じトロールであったとしても、人間を激しく憎み、復讐しようとするヴォーレに対し、
ティーナは人の心を持っている。
いくら醜い容貌であっても、同僚は彼女をきちんと認めているし、
近隣の住人も彼女の人となりを知っていて、普通につきあっている。
だから、ティーナはみんながみんな悪い人間だなんて思っちゃいないんですね。
 
ヴォーレに惹かれつつも、彼のおこないは許せない。
彼の思いどおりにしてはいけないと思う。
でも、目の前に自分と同じ遺伝子の赤ん坊がいるとしたら。
 
人にはよう薦めないけれど、観たことを決して忘れない作品です。
あ、ここまで強烈だと、なんぼへろへろでも睡魔には襲われません(笑)。

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