夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『サッドヒルを掘り返せ』

2019年04月03日 | 映画(さ行)
『サッドヒルを掘り返せ』(原題:Sad Hill Unearthed)
監督:ギレルモ・デ・オリベイラ
 
先週、次年度に繰り越せない有休があと1日残っていたため、
晩の飲み会に合わせて火曜日に休みを取りました。
火曜日はテアトルグループの劇場の鑑賞料金が1,000円。
2月で有効期限の切れたメンバーズカードを新たに申し込み、
入会金1,000円を払って4本観ても5,000円というのは嬉しい。
シネ・リーブル梅田にて。
 
同劇場で上映中の『ウトヤ島、7月22日』と本作のどちらを観るか迷って、
明るい気分になれそうなこちらを選択。
レビューサイトでの評判はイマイチでしたが、私はすごく楽しかった。
 
ローマ出身のセルジオ・レオーネ監督。
1960年代にイタリア製の西部劇をヒットさせたことで有名です。
マカロニウェスタンブームの火付け役となった『荒野の用心棒』(1964)に始まり、
『夕陽のガンマン』(1965)、『続・夕陽のガンマン』(1966)が世界中で大ヒット。
“サッドヒル”とは、『続・夕陽のガンマン』のクライマックスシーンに登場する墓地の名前です。
 
サッドヒルのセットは、スペイン北部ブルゴス郊外のミランディージャ渓谷に作られました。
5千もの墓が同心円状に建てられ、まるでコロシアム(=円形闘技場)のよう。
スペイン政府の協力を得て、スペイン軍の兵士たちが設営に携わった巨大なセットですが、
撮影が終了した後、十字架は解体されて近所の家の雨漏り修理に使われたとか。
 
2014年、『続・夕陽のガンマン』をこよなく愛する地元の映画ファン4人が、
サッドヒルの復元に乗り出します。
まずは土を搔いてサッドヒル中心部に埋め込まれていたはずの石を掘り当てることに。
週末2回ほど費やせばできるだろうと思っていたが甘かった。
もっと人数を増やせないものかとSNS等を利用、活動についてUPしたところ、
ボランティアを希望するファンがヨーロッパ中から集まりました。
みんなが鋤や鍬を手に駆けつける姿を想像すると微笑ましい。
 
こうして始まった一大プロジェクト。
2016年に『続・夕陽のガンマン』撮影50周年記念イベントが開催されるまでの全貌が
フィルムに収められています。
 
『続・夕陽のガンマン』はアメリカの南北戦争時代の話。
それをイタリア人監督がスペインで撮っていたのですねぇ。
当時のスペインはフランコ政権
こんな反戦映画の撮影が許されるわけもないと思いきや、
アメリカの話だから別に関係ないさと許可が下りたそうで。
しかも兵士たちはお手伝いせよとの上からの命令に背くこともできず、
あれにもこれにも力を貸すことになった様子。
 
そんな当時の裏話も楽しい。
作曲家エンニオ・モリコーネや美術監督、兵士にもインタビュー。
さまざまな映画評論家の解説がとても面白いです。
 
主要キャスト3人のうち、悪玉役のリー・ヴァン・クリーフと
卑劣漢役のイーライ・ウォラックはすでに亡くなっていますが、
善玉役のクリント・イーストウッドはご存じのとおり健在。
『運び屋』ではシワシワ爺さんの裸、もうええっちゅうねんと言った私ですが、
このクリントは文句なくカッコイイ。泣かされてしまった。
 
『続・夕陽のガンマン』を観たくなると同時に、メタリカを聴きたくなる作品です(笑)。
メタリカが30年使い続けているコンサートのオープニング映像と曲が、
『続・夕陽のガンマン』の終盤で流れる“The Ecstasy Of Gold”だから。
メタリカのボーカル、ジェイムズ・ヘットフィールドもいっぱい登場。
 
プロジェクトの発足人たちは言います。
ここをテーマパーク化する気はこれっぽっちもない。
観光客が続々と押し寄せる場所になっても嫌だ。
静かに、でも人々に忘れ去られることはない場所であってくれたら。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2019年3月に読んだ本まとめ | トップ | 『おっさんのケーフェイ』 »

映画(さ行)」カテゴリの最新記事