夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『夜明けの祈り』

2017年08月10日 | 映画(や行)
『夜明けの祈り』(原題:Les Innocentes)
監督:アンヌ・フォンテーヌ
出演:ルー・ドゥ・ラージュ,アガタ・ブゼク,アガタ・クレシャ,
   ヴァンサン・マケーニュ,ヨアンナ・クーリグ他

狂言初体験の話を挟みまして、映画の話に戻ります。

梅田ブルク7で『東京喰種 トーキョーグール』を観たあと、
グランフロント大阪の中を通って梅田スカイビルへ移動。
数年前から外国人観光客だらけの新梅田シティは、
ここから花火を観るつもりの人が多いせいか、この日は日本人も多い。
花火の前に映画を観るのでしょう、浴衣姿の人もちらほら。

フランス/ポーランド作品。
ルクセンブルク出身のアンヌ・フォンテーヌ監督の作品はこれまでにも数本観ています。
『美しい絵の崩壊』(2013)はいかにも女性的でしたが、
『ボヴァリー夫人とパン屋』(2014)は男性目線の面白い作品で、ユーモアもあり。
本作は聞くだに暗くて重そうな内容で鑑賞を迷ったものの、
いまは観てよかったと心から思える佳作です。

1945年12月、第二次世界大戦直後のポーランド
フランス人患者しか受け入れないフランス赤十字病院に、
ポーランド人の若い修道女がやってくる。
彼女から助けを求められたフランス人の女性医師マチルドは、
ポーランド人を診ることはできないと断って追い出すが、
病院の外でひざまずいて祈りつづける彼女の姿にほだされる。

片言のフランス語から推測するに、修道院に重病人がいる様子。
マチルドは修道女を車に同乗させて、遠く離れた修道院へ。
するとそこにはベッドの上でもがき苦しむ妊婦がいた。

帝王切開して無事赤ん坊を取り上げるが、なんとほかにも何人もの妊婦が。
大戦末期、修道院に複数回にわたって押し入ったソ連兵にレイプされ、
7人もの修道女が妊娠したというのだ。

赤十字に戻って上司に報告しようとするマチルドに対し、
修道院長らは激しく抵抗の意思を見せる。
事実が外部に漏れれば、まちがいなく修道院は閉鎖されると。
マチルドは口外せずにたったひとりで彼女らの面倒をみることを決意。
本来の病院勤務をしながら、その合間を縫って修道院へ通いはじめるのだが……。

実話に基づく。こんな悲惨な話があったなんて。

身籠もった修道女らの大半は、たとえ女医であっても診察を拒否します。
肌を見せたり触らせたりするのは修道女にあるまじきこと。
マチルドが彼女たちの信用を得て結果的には救世主に。

修道院を守りたい一心の院長は恐ろしい行為を繰り返します。
たとえレイプされて生まれた命であっても、生まれてきた子に罪はない。
命は何よりも尊いもの。修道女たちが行動する勇気。

24時間のうち、23時間59分は苦悩に満ちていても、1分の希望がある。
信仰とはそういうものなんだとの台詞がわからないようなわかるような。
わかりたい。

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