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『天使のいる図書館』

2017年02月25日 | 映画(た行)
『天使のいる図書館』
監督:ウエダアツシ
出演:小芝風花,横浜流星,森永悠希,内場勝則,森本レオ,香川京子他

奈良県のご当地ムービー、しかも図書館が舞台と聞いていそいそと。
大阪ステーションシティシネマにて。

奈良県の中西部に位置する葛城地域。
大和高田市、御所市、香芝市、葛城市、広陵町でつくる葛城地域観光協議会は、
昨年4月25日に「葛城地域観光振興シネマプロジェクト」を発足。
地元の魅力を映画で伝えるべく、撮影はすべて葛城地域で。
奈良県では2月11日から先行して上映開始、
18日からは関東、東海、北陸、関西地区にて順次公開と相成りました。

広陵町立図書館の司書を務める吉井さくら(小芝風花)。
数字に強く、歴史の知識も並外れ、さまざまな資格を持つが、
他人とコミュニケーションを取ることが大の苦手で、
就職先を消去法で選んだ結果、司書になった。

ところが、図書館は思いのほか他人と関わらねばならない。
来館者から本についていろいろ聞かれ、
そのたびに知識だけに頼った返答をするものだから、みんなドン引き。
たとえば「泣ける本を教えてほしい」と言われたさくらは、
死刑や拷問の歴史が綴られた本を推薦。
さくら曰く、「泣けるかどうかは主観によるもの。痛みによる客観的涙は共通」。

そんなさくらを周囲は変人扱い。
上司の上嶋弘美(飯島順子)や同僚の森本舞子(吉川莉早)は
レファレンス窓口にさくらを置くのは危険だとすら考える。

ある日、開館時から本を借りるでも読むでもなくたたずむ老婦人にさくらは気づく。
彼女は昔この辺りに住んでいたという芦高礼子(香川京子)。
さくらが思いきって声をかけてみると、彼女は古ぼけた写真を差し出す。
そこには若かりし頃の礼子と誰か男性が写っていた。
葛城地区のことならすべて頭に入っているさくらは、
ただちにその写真の場所がどこかを言い当ててみせ、礼子をその場所へと案内する。
以来、礼子が一枚また一枚と差し出す写真の場所へさくらは同行。

一方、礼子が現れたのと同時期に周辺をうろつきはじめた青年(横浜流星)がいた。
村上春樹の『海辺のカフカ』に出てきそうな青年だからと、
彼のことをひそかに「カフカ」と呼ぶ図書館の職員たち。
そのカフカにどうもストーキングされているようだとさくらは思い込み……。

葛城地域の景観が美しく、人と人との交流も温かいドラマです。

図書館に勤め、本は好きだというさくら。
しかし主観によって書かれた本など意味がないと信じる彼女は、
小説はまったく読みません。
彼女が好きな本は、地図と辞書、図鑑なのですから。
そんなさくらがどう変わってゆくか。

惜しむらくは関西弁(笑)。
さくらの父親役の内場勝則が完璧な関西弁なのは当たり前。
母親役の小牧芽美も京都府の出身で問題なし。
ただ、大女優の貫禄がある飯島順子の関西弁がキショイ。
しゃべれないならば標準語で通してくれるほうがいいなぁ。
同じく図書館の職員を演じる森本レオのように。

ちょっとしたミステリーでもあり、その謎は爽やかに解けます。
切なさも含んだ優しいご当地ムービー。
奈良の方はぜひどうぞ。

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