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『獄友』

2018年04月25日 | 映画(か行)
『獄友』
監督:金聖雄

毎週土曜日に外食をして体重が増えるため、
わが家の日曜日の晩ごはんは16時が定刻。これで体重を元に戻します。
16時に晩ごはんを食べようとすると、
日曜日は朝イチで映画を観に行ってもせいぜい2本止まり。
しかしこの間の日曜日はダンナが飲み会に出席するので、
晩ごはんをつくらなくてもよくなりました。
ならばと朝から晩まで映画のハシゴの予定を組む私。

1本目は十三の第七藝術劇場にてドキュメンタリーを。
とても観たかった作品です。

獄友=獄中で一緒だった友だち。
しかもここに登場するのは、殺人犯の濡れ衣を着せられた冤罪被害者ばかり。

1963(昭和40)年に埼玉県の女子高校生が殺害された「狭山事件」。
強盗強姦殺人の容疑で逮捕され、一審で死刑判決を受けた石川一雄さん。
31年7カ月におよぶ獄中生活の後、仮釈放。今も無実を訴える石川さん。
金聖雄監督は無罪が確定するまで石川さんを撮り続ける約束をしています。

1967(昭和42)年に茨城県で一人暮らしの男性が殺された「布川事件」。
強盗殺人の容疑で逮捕された桜井昌司さんと杉山卓男さん。
獄中生活29年の後、仮釈放され、2011(平成23)年に無罪確定。
残念ながら杉山さんはそれからわずか4年後に病死。

1990(平成2)年に4歳の女児が遺体となって発見された「足利事件」。
犯人として逮捕された菅家利和さん、獄中生活17年6カ月。
DNAの再鑑定によって無実が証明され、2010(平成22)年に無罪確定。
これについては『殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件』
是非あわせてお読みください。

そして、1966(昭和41)年、静岡県で会社役員一家4人が殺され放火された「袴田事件」。
犯人とされた袴田巌さんは、2014(平成26)年に48年ぶりに釈放されました。
検察が即時抗告したため、現在も死刑囚のまま。

冤罪被害に遭って、青春時代のほとんどを獄中で過ごした人たち。
他人には決してわからない思いでいらっしゃるでしょうが、
本作で彼らが見せる表情は、暗さよりもむしろ明るさが感じられるもの。

獄中生活がいちばん短かった菅家さんのことを
いちばん後から入ったくせに最初に出て行っちゃってと皆が笑い、
菅家さんもすみませんと笑います。
杉山さんは逮捕される前の不良時代を振り返り、
「刑務所に入れられてよかったよ。だってもし入らなかったら、
俺なんて殺されてるか、ヤクザになってるかだもん」。

笑い飛ばしてはいるけれど、親の話をするときのひと言が心に沁みます。
つらいときには親のことを意外と思い出さない。
でも、無罪が確定したときなど、嬉しいときほど親のことを思い出すという話。
きっと一緒に喜びたかったろうと思います。

死刑囚は、毎朝、今日死刑が執行されるのではないかと怯える。
9時になって、今日の執行はないと安堵するときの気持ち。
執行の恐怖にさらされながら何十年、精神がおかしくなるのももっとも。
釈放後に袴田さんの様子に驚きました。
3年経ってようやく、脈絡のある話ができ、将棋を打てるように。

奪われた人生はどうやっても戻らない。
そんななかで、どうにか前向きに生きてゆこうとする冤罪被害者たち。
冤罪のない世の中にしなければ。

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