夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ラブレス』

2018年04月23日 | 映画(ら行)
『ラブレス』(原題:Nelyubov)
監督:アンドレイ・ズビャギンツェフ
出演:マリヤーナ・スピヴァク,アレクセイ・ロズィン,マトヴェイ・ノヴィコフ,
   マリーナ・ヴァシリヴァ,アンドリス・ケイス,アレクセイ・ファティーフ他

先にUPしたパギやんの『歌うキネマ』の前に。
早起きすれば2本観ることも可能だったのですが、前日の土曜日には苦楽園口で外食。
言うほど飲んでいないつもりが、昼間も飲んでたしなぁ。
というわけで、シャキッとは起きられずにダラダラと。
ま、今年は量より質ということで、本当に観たかったこれ1本だけに。

ロシアの鬼才の呼び声高いアンドレイ・ズビャギンツェフ監督。
『父、帰る』(2003)が強く印象に残っていますが、
これまでのどの作品も、心が元気なときでないと観られないものばかり。
本作も冷え冷えとしていて、凍えそうです。
第90回アカデミー賞外国語映画賞のノミネート作品。

ボリスとジェーニャは離婚間近の夫婦。顔を合わせれば罵り合い。
お互いにすでに再婚を考えている恋人がおり、
目下の問題は、12歳の一人息子アレクセイをどちらが引き取るかということ。
夫婦ともに引き取る意志はなく、押しつけ合っている。

いっそアセクセイを施設に入れてしまえればいいのだが、
ボリスの勤める一流企業の社長は、熱心なクリスチャン。
もしも離婚したうえに子どもを施設に預けたとバレたら、解雇されるかもしれない。
美容サロンを経営するジェーニャにとっても、アレクセイは邪魔でしかない。
もともと不用意にできてしまった子ども。引き取るなんてまっぴら。
そんなふたりの会話を耳にして、声を殺して泣くアレクセイ。

ある日、ジェーニャのもとへ学校から連絡が入る。
2日続けてアレクセイが登校していないとのこと。
警察に電話するも、単なる家出と決めつけられ、
殺人事件等で忙しいからバカなガキのために人員は割けないと言われる。

警察からボランティア団体に依頼することを勧められ、
イワンという男性が仕切る一団に相談。
親身になって聞いてはくれるが、息子のことを何も知らない両親に呆れ顔。
こうして大がかりな捜索が始まるのだが……。

両親が言い争う部屋の外、ドアの陰で泣くアレクセイの表情に胸が押しつぶされそうです。

愛を欲してばかりの大人たちは、自分が愛を与えることはできません。
部屋も食事も着替えも十分に与えていても、息子の顔は見ない。
一日中スマホの画面を見ているジェーニャに嫌悪感。
自分の出世ばかり気にしているボリスにももちろん共感できず。
息子に友だちが何人いるのか知らないし、好きなものも嫌いなものも知らない。
アレクセイがいなくなって取り乱してはいるけれど、
もしかしたらこのまま帰ってこないほうがいいと思っているのでは。

親はそうじゃない、どんな親でも子どものことは大切なんだと思いたい。でも思えない。
見つからないままであることに空虚な思いぐらいは抱いているのか。

冷たい冷たい作品なのに、心を捉えて離しません。

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