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『ミッシング』

2024年05月23日 | 映画(ま行)
『ミッシング』
監督:吉田恵輔
出演:石原さとみ,青木崇高,森優作,有田麗未,小野花梨,小松和重,
   細川岳,カトウシンスケ,山本直寛,柳憂怜,美保純,中村倫也他
 
イオンシネマ茨木にて暗い暗い2本ハシゴ。
1本目大森立嗣監督、2本目のこの吉田恵輔監督ともに、ハッピーエンドは望めません。
精神状態のよくない人は観ないほうが良いと思います。
 
静岡県沼津市に暮らす森下沙織里(石原さとみ)と豊(青木崇高)が授かった一人娘・美羽(有田麗未)。
目の中に入れても痛くないほど可愛がっていたが、あるとき失踪する。
 
その日、沙織里は大好きなバンドのコンサートに行くため、
弟の圭吾(森優作)に美羽を預けて出かけていた。
公園で遊んだ後に美羽を徒歩5分の距離の自宅へ帰らせたという圭吾。
しかし豊が帰宅しても美羽の姿はなかった。
 
6歳だった美羽が失踪してから半年が経ち、沙織里と豊は街頭でビラを配り、
ローカルテレビ局の砂田(中村倫也)に依頼してその様子を流してもらうなど懸命。
ところが当日沙織里がコンサートに行っていたことがわかると、SNSは炎上。
また、圭吾を無理やり取材に応じさせたところ、圭吾まで嫌がらせを受けるように。
 
何の手がかりもないまま2年が経ち、同市内でまた女児失踪事件が起きる。
母親の交際相手が怪しいと言われるなか、沙織里は同一犯の仕業ではないかと、
その女児を捜すためのビラを作成し、美羽も見つけられればと思うのだが……。
 
吉田監督作品は、大森監督に負けず劣らず暗い。
私が初めて吉田監督を知ったのは『机のなかみ』(2010)で、それは暗くなかったのに、
いまや撮る作品すべて暗い。というのは言い過ぎですね(笑)。
でも、『机のなかみ』も含めて明らかなハッピーエンド作品というのは見当たらない。
 
本作の石原さとみの演技は鬼気迫っていて、楽しいものではありません。
娘をひとりで帰らせた弟を責め、自分よりも落ち着いて見える夫のことも責める。
だけど本当は、自分がコンサートに行ったせいだという思いが消えない。
子育てに明け暮れて、2年ぶりに行ったコンサート。
たまには息抜きしたっていいじゃないかと思いつつも、罪の意識が消えません。
 
これだけヒステリックに責め立てられたら離婚も不思議ではないのに、耐えて妻に寄り添う夫。
青木崇高が宿泊先の喫煙所で別の家族の姿を見て涙をこらえる表情は堪らない。
 
警察に行けば「お気持ちはわかりますが」と言われる。
愛娘がどこに行ったかわからない人の気持ちなんて、わかるわけないですよね。
「気持ちはわかる」は同じことを体験した人しか言ってはいけない言葉。
 
こうした親の気持ち、そしてそれを取り上げるテレビ局の視聴率至上主義
「面白くするつもりはない、事実を撮りたいだけだ」と言う砂田に、
警察官が言う、「事実が面白いんだよ」。だから報道は過熱する。
そして、視聴者は飽きるのも早い。進展がなければ忘れられるだけだし、所詮他人事。
 
失踪した子どもが見つかってよかったぁというエンディングを期待している方は鑑賞不可。
『チェンジリング』(2008)のことも思い出します。

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