mimi-fuku通信

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ジュリエッタ・マシーナ主演/映画『魂のジュリエッタ』をNHK-BSで観る。

2012-01-21 19:08:00 | 映画・芝居・落語

 NHK-BS放送では時に珍しい名作映画や、
 思いがけない贅沢な映画特集を放送することがある。
 *過去BS2でエイゼンシュテイン全集も放送された。

 ~2012年01月23日:午後1時~3時15分。
 NHK-BSプレミアムで放送予定の、
 イタリア映画の名匠であるばかりでなく、
 映画史でも指折りの巨匠として知られる、
 フェデリコ・フェリーニ監督作品
 映画:『魂のジュリエッタ』
 は、
 知る人ぞ知る傑作映画である。
 過去にも数度放送されている。

 映画:『甘い生活』以後、
 どんどん難解になっていく
フェリーニ作品。
 鑑賞者にとって、
 難解の頂点(?)に位置する名作映画、
 映画:『8 1/2(はっか にぶんのいち)

 
その女性版として認知され、
 難解度でも『8 1/2』と双璧の
 映画:『魂のジュリエッタ』
 
の主演はフェリー二監督の愛妻である、
 名女優:ジュリエッタ・マシーナ(1920-1994)

 フェリーニ監督の最高人気作品である
 映画『道(La Strada)』
 で、
 
ジェルソミーナ役を演じた名女優こそ、
 ジュリエッタ・マシーナだと文字にすれば、
 映画ファンなら知らぬ者はいないだろう。
 
 マシーナは、
 ポローニャ近郊の大学教授の娘として生まれ、
 ローマ大学の文学部に進学した才女でもある。

 その彼女が演じる頭の弱い娘:ジェルソミーナ。
 『道』の主人公:ジェルソミーナの演技(内面表現)は、
 それまでの総べての映画作品の中でも白眉とされ、
 多くの女優達の目標・指標とされた名演技だった。

 私は
 『道 (1954) 』
 『カビリアの夜(1957) 』
 『魂のジュリエッタ(1965)』
 『ジンジャーとフレッド(1985)』
 の4作のマシーナ主演作品を、
 過去に鑑賞(放送録画)しており、
 何れの作品も、
 目の離せない名演技に感嘆するばかり。
 *『カビリアの夜』は『道』に通ずる不朽の名作。
 『ジンジャーとフレッド』ではフェリーニ監督の懐刀、
 マルチェロ・マストロヤンニとの初共演。
 マシーナとマストロヤンニは大学時代の演劇仲間。

 4作品の内、
 『道』は何度も何度もTV(地上波含む)で放送され、
 廉価盤DVDも再販を繰り返し映像入手は簡単。
 また、
 2011年1月4日にNHK-BShiで放送された、
 『パッチギ』の井筒和幸監督のルーツを知る番組、
 
『チネチッタの魂:イタリア映画75年の軌跡』
 でも最も印象強く採り上げられていた名作中の名作。
 *映画『道』は2012年1月24日に放送予定(同時刻)。
 『魂のジュリエッタ』の翌日の放送なので是非お薦め。

 話を戻そう。
 映画『魂のジュリエッタ』は、
 フェリーニ監督の初カラー作品。

 注:オムニパス形式の映画:『ボッカチオ70』(1962)では、
 “誘惑”をカラー映像で撮影しているが単独作品んで初。

 フェリーニ監督の妻であるジュリエッタ・マシーナが演じる主人公:ジュリエッタ。
 この作品を創作したフェリーニの深層心理と主役:ジュリエッタの位置付け。
 実際の夫婦が共同作業で訴えかける妻(女)の葛藤と監督自身の自己分析。
 *伝統的な貞節やキリスト教(カトリック)的なモラルからの解放が深層テーマ?

 この映画を観る時、
 美しい天然色映像(色彩表現)と、
 ニーノ・ロータの多彩な音楽は、
 芸術(美術)作品を見る感覚が必要で、
 ストーリーだけに焦点に追うべきでない。
 逆に、
 時として出演者達が語るセリフを、
 ストーリーと絡めるのではなく、
 “独立した箴言”の如く捉えたほうが、
 鑑賞者の魂に訴えかけてくると感じる。
 でないと、
 『8 1/2』に通じる抽象表現(脈絡の見えない映像・筋書き)に、
 多くの鑑賞者は辟易し最後まで観る事が困難となるだろう。
 *ストーリーの意味付けは鑑賞後に各自が創作(想像)すれば良い。
 答えを出す必要は無いがユング的な夢とフロイト的幼児体験がヒントとされ、
 さらに、
 監督の教会(&信仰)不信と教会批判を許さないイタリア庶民の国民的体質。
 当時の時代背景やイタリア人の国民感情を考慮に映画を鑑賞すべきで、
 
『8 1/2』と『魂のジュリエッタ』の双子映画は安っぽいオカルト映画ではない。

 蛇足ながら、
 
ニーノ・ロータは音楽は切なく美しい。
 バンクーバー五輪ブロンズ・メダリストの高橋大輔選手が、
 フリー演技で使用したのが映画『道』のテーマであることは、
 あまりにも有名だ。
 
 フェリーニが愛した日常とフェリーニが訴える深層世界。
 映画の世界を変えた名匠・フェリーニ芸術(対比)を、
 是非ご堪能ください。
 


 『魂のジュリエッタ』:私の謎解きと感想。
 *映画鑑賞後にお読みください。

 ストーリーは比較的単純で幸せと感じるもマンネリの夫婦生活の中、
 夫への疑惑が現実的な不倫として明らかとなり葛藤の中で意を決し、
 浮気相手の家に乗り込むも会う事ができず夫は“はぐらかす”ばかり。
 *夫の収入で生計が成り立つ専業主婦ジュリエッタの立場を考慮して鑑賞。
 
 それ以外のストーリーは、
 オムニバスのように付随されたジュリエッタの深層の映像化。
 フェリーニは『8 1/2』で、
 映像では表現不可能なものを表現したい葛藤
 
を即興的制作過程で具現化した。
 ここで指す、
 表現できない映像とは幻覚や超常現象ではなく、
 個人の過去の経験や記憶(=深層・環境順応)。
 深層と言っても心理だけではなく無意識も含める。

 記憶は言葉や教育だけではなく、
 過去の体験や育った環境や育った時代等、
 個人・個人によって大きく異なる。
 さらに、
 人間が持つ進化の過程での記憶(本能)や、
 言葉にできない幼児体験やトラウマ。

 鑑賞者が映画(映像)をストーリー仕立てに観ると、
 〝ジュリエッタが心痛からノイローゼにかかった心の病〟
 のように感じるかもしれないが、
 映像は、
 ジュリエッタの過去の記憶や、
 生きる上で得る情報(洗脳)の具体化であり、
 ひとつの決断(自分なりの答え)に、
 辿り着くプロセスに至る個人の判断基準としての、
 受けた教育や観念や道徳(=集団交流・団体行動)。
 さらに決断の決定権を持つ、
 無意識(社会通念・狭義な常識・環境把握)の記憶。

 そのように映画を観ていくと
 幼児ジュリエッタの炎の中の誓い(=教会との契約)。
 ~この契約は過激教徒の自爆テロ心理のヒントにも成り得る。
 火刑台から救い出す祖父の存在(無神論者=マルキストの象徴化?)。
 *唯心論と唯物論の狭間に答えを求めた20世紀の社会。

 ラストシーン。
 幻覚(これまでの価値観)に助けを乞うジュリエッタ。
 しかし母(時代的観念の象徴?)の道徳観を自らが拒否し、
 幼児ジュリエッタ(過去の自分の根源)を束縛から解放し、
 祖父は“現実を生きろ”の言葉を残しジュリエッタを突き放す。
 *過去ばかりでなく様々な誘惑(=新しい価値観?)も振り払う。
 最後に、
 ジュリエッタに話しかける本当の友達。
 *自分自身なのか伝統的価値観なのか?

 ラストの微笑みは“独立心の目覚め”と捉えれば、
 古い価値観からの精神的解放と読み解くこともできる。
 しかし、
 これはあくまでも私個人の見方(感想)であって、
 決して正しい理由(わけ)ではないし、
 決して正しい必要もない。
 *それぞれの現実(=個人の正義)があってよい。

 では、
 “あなたはどのように感じましたか?”
 色々な人の意見・見方を聞いてみたい。

魂のジュリエッタ
[DVD]
1965年作品
(昭和40年)

 さらに、
 映画作品を理解するためには、
 前後の監督作品を鑑賞し、
 作品に至る流れを捉える必要がある。
 *如何なる場合も点の視点は思考を狭くする。

 下記に私が視聴した、
 ジュリエッタ・マシーナ主演映画を紹介。
 *他に『岸(1955)』があるが私は未視聴。

 年代別の4作品(5作品)を鑑賞することで、
 フェリーニ監督の語り口の変化や、
 マシーナの変幻自在の演技表現を堪能。
 *無垢な少女・娼婦・上流階級婦人・芸人。

 映画が社会に強く影響を与えた時代。
 日本を代表する、
 巨人:黒澤明監督もこの時代を生き、
 数々の心に残る傑作を世に残した。

 戦中・戦後の欧州の映画語法。
 また、
 敗戦国(イタリア・ドイツ・日本)で製作された、
 貧弱な機材によるペナルティと強い語り口。
 
 ジュリエッタ・マシーナが映像を残した時代。
 昭和27年~昭和60年に制作された、
 主演作4本の時代表現(+機材の変化)。

 そんな見方ができれば、
 映画鑑賞の楽しさも倍増。

 でも、
 難しく考えず、
 先ず、
 絵(映像)を楽しもう。

 『魂のジュリェッタ』は、
 そんな映画だ。

[DVD]
1954年作品
(昭和29年)

 *参考価格:1204円

カビリアの夜 [DVD]
1957年作品
(昭和32年)

 *参考価格:3636円

ジンジャーとフレッド
[DVD]
1985年作品
(昭和60年)

 *参考価格:2800円

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