このブログで何度か紹介した伝説の演奏会。
今日2011年2月5日午後の放送です。
多くのクラシック・ファンに気付いてもらえればと願います。
思い出の名演奏
『カール・ベーム指揮:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団』
~1975年日本公演(NHKホール)~
放送局:NHK教育/デジタル教育1
放送日 :2011年2月5日(土)
放送時間 :午後2時~午後3時20分(放送終了)
<番組の感想:後記>
思いがけないプレゼントだった。
1975年の来日当時はFM小僧だったmimifuku。
NHKの招きによって実現した来日コンサートは、
演奏会当日連夜の生放送でリスナーの耳に届けられた。
1975年3月16日:初日。
ウィーン・フィルによる『君が代』の演奏が流れた時に、
ただならぬ演奏会がはじまったと予感。
初日のベートーヴェン・プログラムからアクセル全開。
第7番の最終楽章の最大ボリュームは、
翌日の教室(一部の音楽仲間)で話題になった。
今日のTV放送では、
1975年の来日公演は“応募抽選方式”がとられ、
17万人の応募があったと紹介された。
貴重なプラチナ・チケットを握り締め会場に足を運んだ方々。
コンサートが終わっても名残惜しく会場を後にしない興奮した聴衆。
オーケストラが全員舞台から去ってもカーテンコールに答える老ベーム。
後日電波にのって届けられた映像もまた、
ひとつひとつのシーンが異例尽くめだった。
本日放送されたプログラムは、
“ブラームスの交響曲第1番”&“シュトラウスの美しく青きドナウ”
昔の恋人は再会しても昔とかわることなく魅力的。
とそんな演奏会だった。
来日公演1975の頂点を極めた演奏とされる、
“ベーム&ウィーン・フィルのブラームスの1番”は過去にも再放送があり、
CDは何度かの再販を重ね現在はDVD(2枚組)も市場に存在。
放送された、
デジタル方式(DVD・ビデオ方式は基本的にアナログ映像)に収められた映像は、
テープの密度のチラつきが気になるものの40型のTVでも大きなストレスは感じない。
音声はフォルテ(強く)とピアノ(弱く)のダイナミックレンジがテレビ用に圧縮され、
本来耳にすべき音量との違和感は顕著で不満を感じないわけでもない。
~さらにヒスノイズ除去のために高音域の華も同時に削られているような?
しかし、
35年前の記録に現代の録画(録音)技術の水準を求めること自体が無理難題。
素晴らしい映像と音声の記録は日本の演奏史の金字塔であることに疑いを持たない。
私は、
“ブラームスの1番”と“ベートーヴェンの7番”と“マイスタージンガー前奏曲”
については1975年の来日コンサートの呪縛から逃れられないでいる。
FM放送からカセット・テープに録音したものを何度も何度も聴きかえした記憶。
摺り込まれた演奏記憶がヒスノイズだらけの貧弱な音の記録でも、
私の脳に刻み込まれた演奏芸術の価値は何一つ変わることはない。
1990年前後にCDが発売されるまで大切に保管された120分テープ。
よくも切れずにあったものだ。
~1999年に放送されたブラームスもビデオテープに保存所持(アナログ放送)。
ブラームスの交響曲第1番の著名な演奏としては、
・シャルル・ミュンシュのパリ管(1967年)。
・バーンスタインのウィーン・フィル(1981年)
・カラヤンのベルリン・フィル(1987年)
など他数点を所有している。
~近年ではヴァント、アバド、ラトルの名演もあるらしいが未聴。
古くはワルター、トスカニーニ、フルトヴェングラーの名演も揃う。
オーケストラ鑑賞が比較の産物ならば、
・ミュンシュのパリ管は金管の迫力が尋常でない熱演も全体に線が細い。
・バーンスタインはバーンスタインらしからぬ整頓された優等生的な演奏。
・カラヤンの壮麗は立派だがメロディラインの表現がやや淡白。
ではベームの演奏は?
全体的に緊張感の高い重厚で深みのある響き。
1楽章冒頭からの圧倒的な吸引力(ブラック・ホール?)は見事。
2楽章の“とろける”ようなバイオリンやオーボエの表現は秀逸。
4楽章前半のピチカートの緊張感から朗々たるホルンの音色。
誰よりも重厚な弦の響きで奏でられる第9のリスペクト旋律。
~ブラームスの1番はベートーヴェンの第10交響曲とも例えられた。
クライマックスに向けて聴こえる金管の金属音の高鳴りも、
ベームが支配する安定したテンポの中で決して下品にならない。
ただし、
ヨハン・シュトラウスも比較的シンフォニックな響きで演奏され、
ワルツの表現としてはどうなの?と疑問が。
クライバーの色艶(つや)が耳慣れてしまっただけに少しだけ違和感。
でもウィーン・フィルの気品は他では味わえない魅力。
素敵です。
スタジオ録音では無難で平坦な表現が多いベームが、
何故コンサートでは熱く燃え上がるのか?
3度の来日のたびに話題になった、
ライブに於けるベームの凄味。
“そんなこんな”を思い出させる昔の恋人。
また1つ、
永久保存のライブラリーが増えた。
~以下NHKホームページより記事転載。
NHKが記録保存してきた、
クラシック音楽の名演を紹介する「思い出の名演奏」。
没後30年のカール・ベームが指揮した、
ウィーン・フィルの1975年日本公演をお届けする。
【放送される曲目】
「交響曲第1番ハ短調作品68」(ブラームス)
「美しく青きドナウ」(ヨハン・シュトラウス)
~1975年3月17日:NHKホール
「美しく青きドナウ(ヨハン・シュトラウス):リハーサル」
「交響曲第4番(ベートーヴェン):リハーサル」
【演奏】
指揮:カール・ベーム
管弦楽:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
<資料1>
【1975年来日公演:曲目リスト】
*1975年3月16日:NHKホール
・『君が代』
・『オーストリア国家』
・ベートーヴェン:交響曲第4番ロ長調作品60
・ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調作品92
*1975年3月17日:NHKホール
・ベートーヴェン:レオノーレ序曲/第3番
・ストラヴィンスキー:バレエ音楽『火の鳥』組曲
・ブラームス:交響曲第1番ハ短調作品68
*1975年3月19日:NHKホール
・シューベルト:交響曲第7番(8)ロ短調作品759『未完成』
・シューベルト:交響曲第8番(9)ハ長調作品944『グレイト』
*1975年3月20日:NHKホール
・ベートーヴェン:交響曲第4番ロ長調作品60
・ベートーヴェン:交響曲第7番イ長調作品92
*1975年3月22日:NHKホール
・ベートーヴェン:レオノーレ序曲/第3番
・ストラヴィンスキー:バレエ音楽『火の鳥』組曲
・ブラームス:交響曲第1番ハ短調作品68
*1975年3月23日:NHKホール
・シューベルト:交響曲第7番(8)ロ短調作品759『未完成』
・シューベルト:交響曲第8番(9)ハ長調作品944『グレイト』
*1975年3月25日:NHKホール
・モーツァルト:交響曲第41番ハ長調K551『ジュピター』
・ヨハン・シュトラウス:『南国のばら』
・ヨハン・シュトラウス:『アンネン・ポルカ』
・ヨハン・シュトラウス:『皇帝円舞曲』
・ヨハン・シュトラウス:『常動曲』
・ヨハン&ヨゼフ・シュトラウス:『ピッツィカート・ポルカ』
・ヨハン・シュトラウス:歌劇『こうもり』序曲
アンコールは、
・ワーグナー:楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー』前奏曲
・ヨハン・シュトラウス:『美しく青きドナウ』
からの、
どちらか1曲が演奏されました。
また3月25日(最終日)には、
・ヨハン・シュトラウスの『トリッチ・トラッチ・ポルカ』
・ワーグナーの『ニュルンベルクのマイスタージンガー』前奏曲
の2曲がアンコールで演奏されたようです。
<資料2>
【NHKで放送されたベーム&ウィーン・フィル】
*ウイーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏会
~1975年3月17日(NHK総合)
*ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏会
・ブラームス・交響曲第1番
~1975年3月19日(NHK総合)
*ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏会
~1977年4月29日(NHK総合)
*ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏会
・ベートーヴェン:交響曲第6番「田園」
~1979年6月21日(NHK総合)
*ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏会
・ベーム:86歳のベートーヴェン
~1980年11月6日(NHK総合)
*ベーム・ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏会
~1981年1月1日(NHK教育)
*ベーム・ウィーン・フィル・コンサート
~1981年3月22日(NHK教育)
*ベーム・ウィーン・フィル・コンサート
~1981年5月3日(NHK教育)
*巨匠カール・ベーム日本最後のコンサート
・ベートーヴェン:交響曲第7番
~1981年11月23日(NHK総合)
*20世紀の名演奏:第3夜
・ブラームス・交響曲第1番他
~1999年1月24日(NHK教育)
*思い出のシンフォニー
・カール・ベームの“田園”
~2001年11月25日(NHK教育)
*思い出のシンフォニー
・カール・ベームの“運命”
~2003年3月30日(NHK教育)
*思い出の名演奏:ベーム1975年日本公演
・ブラームス・交響曲第1番他
~2011年2月5日(NHK教育)
~再放送が含まれます。
それをを35年ぶりにまた味わうことができ、涙が出るほど喜びました。
コメントありがとうございます。
デジタルで放送されたベーム&ウィーン・フィルのブラ1。
本文でも文字にしましたが35年前の恋人は永遠不滅。
録画したブラ1のⅡ&Ⅳを3度聴きなおしました。
BSでは一度も放送されていない映像の高音質地上波デジタル。
CDも持っており何度となく聴いているのですが、
今回の放送は思いのほかに左右の分離の良さが耳につきました。
色々な発見をしながら“やはりコレは凄い!”
~高音質放送で聴こえなくてよいキズも耳につきますが…。
演奏芸術が醸しだす高揚感に興奮を押さえる事が困難です。
電波を通じて全国のクラシックファンが共有する感動。
幸いにnobuさんは観ることができたのですね。
できることなら事前に番組の発表があったならと悔やまれます。
多くの人達に聴いていただきたい歴史的名演です。
葉書を書いて応募して、銀座の赤木屋PGに、その為にしたバイト代を持って購入したも公演でした。当時は、NHKホールに向かう渋谷からの坂道(当時は、区役所前通り)や東京文化会館への上野駅からの坂道、まるで他流試合に臨むような気持ちでホールに向かったものです。
コメントありがとうございます。
伝説の空間に居られたのですね。
羨ましいかぎりです。
たぶん演奏会当日の夜は興奮して眠れなかった事でしょう。
そして誰かに自分が感じた興奮(経験)を伝えたい!
ラジオを聴いていた友人に自慢げに体験談を語る。
他流試合に臨んだtonic527さんの“そんな姿”を想像します。
クラシック・ファンにとって本当に大きなニュースでした。
文面を読んで気付いたのですがチケットは応募抽選で発送ではなく、
当選券を持ってプレイガイドでの交換だったのでしょうか?
それと録音を聴く限りでは爆音のように聴こえる、
最終楽章の音量はホールではどのように響いたのでしょうか?
そんな事も教えていただければと思います。
演奏も然ることながら、私の記憶に厚く刻まれたのは、演奏終了後の鳴り止まぬ拍手です。
放送で区切りがあるので途中削除されたのだと思いますが、30分ものアンコールの拍手に、なんとカールベームは7回も顔を出したと、女性解説者が説明しておりました。
巨匠もご高齢で、アンコールはできるだけ避けていた様子ですが、鳴り止まぬ拍手に根負けして、最後の1曲をプレゼントしたそうです。
つい最近、クラッシックから縁遠い生活をしておりましたが、知人の娘さんが絶対音感の持ち主のようで、良い演奏はないものか依頼されまして、カールベームの公演が頭の中に走馬灯のように浮かびました。
このご時世、つい色気を出してしまい、DVDはないものか検索しましたら、1975年NHK公演を発見致しまして、購入しましたが、惜しむらく、「ジュピター」はありませんでした。
しかし、カールベーム指揮ウィーンフィルの演奏は、あの当時を彷彿とさせ、感動が甦ってきました。
当時はまだTV放送では多重放送しておりませんでしたので、マスターテープの画像とFM放送のPCMステレオ録音を重ね合わせたのだそうで、NHKもやるもんだ!っと感心しました。
1975年の録音テープは、もうどこにあるかわかりませんが、あったとしても、テープが延びてしまい、聴くに耐えないと思います。
僅か半年前に再放送されていたのが非常に残念でなりません。
こちらにお邪魔させて頂いたのも、検索して辿り着いた次第ですが、不思議な縁を感じずに居られません。
また機会がございましたら、拝見しに伺います。
どうもありがとうございました。
コメントありがとうございます。
ラジカセにカセット・テープ。
当時の中高生の宝物でしたね。
ジュピターと言えば若いクラシック・ファンにとってはホルストの惑星から木星?
でも70年代当時にジュピターと言えば、
モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」。
第1楽章冒頭の雄大なフレーズの繰り返しは宇宙を感じ、
第40番の第1楽章の哀愁的なフレーズとは好対照。
*****
今回のテレビでの放送は1時間番組で、
ブラームスの「交響曲第1番」と、
アンコールの「美しく青きドナウ」のみ。
残念ながらジュピターの映像はNHKにも保存されていないようです。
*****
3月25日の演奏会は山本直純さんが司会をつとめた、
『オーケストラがやってきた』でお馴染みの「常動曲」が演奏され、
ベームの生声“いつまでも”が忘れられない記憶です。
当日の音源は過去にBOXセットのCDが発売された経緯があります。
いつの日か再版されると良いですね。
またコメントを頂ければ幸いです。