丸谷才一という人 文壇では好かれたか嫌われたかよく知らず 本を読んでいてこの人好きだなあと思ったこともないのだが 池澤夏樹が言うように「軽い知的なエッセーの達人」であったことは間違いないだろう
時に理解できなかったり 興味の無い話だったりもするが 読んでいるとほう~と思ったり へ~と感心することが多々ある
少し前に手に入れたのは『無地のネクタイ』
岩波書店の「図書」に綴られた文章をまとめたもので 最後のエッセーとなる
そこに呉音と漢音に関する長年の疑問が解けた話が載っていた
漢字を調べると 音読みのところに呉音と漢音が書いてあったりするのは知っていたが 気にしたことはなかった
たとえば「日」の音読みには「ニチ」と「ジツ」があるが 毎日を「マイニチ」と読み 平日を「ヘイジツ」と読むことは 呉音か漢音かなんて考えずに覚えたわけで とにかくそういうものだと
でもそれなりの事情があったわけで それを丸谷さんは高島俊男の『ことばと文字と文章と』を読んで納得したとのことだった
『無地のネクタイ』には追悼の意味もあったのだろう 先に書いた池澤夏樹の言葉のある解説がついている
そこにはあくまで学者としてではなく ジャーナリストの目で「一夜漬けで勉強してきた」丸谷才一の姿が描かれている
こんなにも幅広いジャンルに渡って それこそ縦横無尽に高尚な話から下世話な話まで 洋の東西も問わず扱うことができたのは 単に博識というだけでなく 好奇心に支えられた知識の利用方法やアレンジ力ゆえだろう
高島俊男さんの本にも興味を抱き 今日は図書館に予約をポチッ
届くのが楽しみ