会長が入院したと塚ちゃんに連絡が入った
会社に来なくなってから二年の間 何度か短期入院をしている
潰瘍性大腸炎でK病院へ 心臓ではN病院へと通院していたけれども まぁ元気なほうではあろう
最近では N病院で主治医だった医師が院長として引き抜かれた小さな病院に通っている
今回は心臓付近に水が溜まったということで その治療のための入院
連絡を受けた塚ちゃんと イケメン君との三人で行くことにした
二人は前にも行っているが 私は初めてのお見舞いになる
3歳の娘を連れて来るイケメン君は少し遅れるというので 私と塚ちゃんが一足先に行くことにした
病院に一歩足を入れると 独特のにおいと雰囲気が過去の記憶をずるずると否応なしに引き出してくる
病院は嫌だ
入院なんかしたくないと したい人などいないだろうが多くの人はそうなるのだろうとわかっていても この空気は慣れるものではない
個室のドアをノックして入ると ベッドに寝たままで吸入器を口にあてている会長が 来たか と目で合図する
看護師がやってきて計測などしている間 私たちは病室の外に出て待った
「どうぞ」という声に促されて 私たちは再び病室に入る
元気そうで 格別変わったようには見えなかったが 点滴の管や胸に付けられた心臓の計測器などが病人であることを物語っている
入院生活の話や 病状のことなどをきく
看護師が 身体全部 頭も洗ってくれると嬉しそうに話すので てっきり女性かと思って話を聞いていたら男性の看護師とのこと
女性だったら嫌だという
女性大好きな会長なのに だからからか やはりそう思うものなのか
やがてベビーカーに娘を乗せたイケメン君がやってきた
途中で寝てしまったというその幼子はまだ夢の中
大人だけの会話が 途切れ途切れに続く
21日は会長の83回目の誕生日だった
そのことを話すと そうか? あぁそうだ 83になるのか 昭和5年 1930年だから計算しやすいんだ と
父よりも長く生きている と 私は心の中で思ったまま口には出さなかった
イケメン君の娘が目を覚ました
会長は 可愛いね と言いながら目を細める
社長夫婦とは折り合い悪く 孫など抱いたこともなかったようだが 家族はその数だけの姿があるものだ
もしも関係が悪くなければ 社長はもちろん この病室には孫もお見舞いに来ていただろう
身内が居なくて 社員がこうして来ている
1時間ほどして会長が もう帰らないと暗くなるよと心配をする
特に小さな子を連れた彼は ここから自宅まで2時間近くかかるはずだし 会長もお疲れのことだろうと思い 私たちは病院を出た
人を病室に残したまま去るのは何度も何度も経験しているが いつでも何とも言えぬ気持ちになる
駅で別れ それぞれが違う方向へと家路に向かう
少し疲れた心のまま 私は週末の手料理でイッパイやって寝てしまった
会社に来なくなってから二年の間 何度か短期入院をしている
潰瘍性大腸炎でK病院へ 心臓ではN病院へと通院していたけれども まぁ元気なほうではあろう
最近では N病院で主治医だった医師が院長として引き抜かれた小さな病院に通っている
今回は心臓付近に水が溜まったということで その治療のための入院
連絡を受けた塚ちゃんと イケメン君との三人で行くことにした
二人は前にも行っているが 私は初めてのお見舞いになる
3歳の娘を連れて来るイケメン君は少し遅れるというので 私と塚ちゃんが一足先に行くことにした
病院に一歩足を入れると 独特のにおいと雰囲気が過去の記憶をずるずると否応なしに引き出してくる
病院は嫌だ
入院なんかしたくないと したい人などいないだろうが多くの人はそうなるのだろうとわかっていても この空気は慣れるものではない
個室のドアをノックして入ると ベッドに寝たままで吸入器を口にあてている会長が 来たか と目で合図する
看護師がやってきて計測などしている間 私たちは病室の外に出て待った
「どうぞ」という声に促されて 私たちは再び病室に入る
元気そうで 格別変わったようには見えなかったが 点滴の管や胸に付けられた心臓の計測器などが病人であることを物語っている
入院生活の話や 病状のことなどをきく
看護師が 身体全部 頭も洗ってくれると嬉しそうに話すので てっきり女性かと思って話を聞いていたら男性の看護師とのこと
女性だったら嫌だという
女性大好きな会長なのに だからからか やはりそう思うものなのか
やがてベビーカーに娘を乗せたイケメン君がやってきた
途中で寝てしまったというその幼子はまだ夢の中
大人だけの会話が 途切れ途切れに続く
21日は会長の83回目の誕生日だった
そのことを話すと そうか? あぁそうだ 83になるのか 昭和5年 1930年だから計算しやすいんだ と
父よりも長く生きている と 私は心の中で思ったまま口には出さなかった
イケメン君の娘が目を覚ました
会長は 可愛いね と言いながら目を細める
社長夫婦とは折り合い悪く 孫など抱いたこともなかったようだが 家族はその数だけの姿があるものだ
もしも関係が悪くなければ 社長はもちろん この病室には孫もお見舞いに来ていただろう
身内が居なくて 社員がこうして来ている
1時間ほどして会長が もう帰らないと暗くなるよと心配をする
特に小さな子を連れた彼は ここから自宅まで2時間近くかかるはずだし 会長もお疲れのことだろうと思い 私たちは病院を出た
人を病室に残したまま去るのは何度も何度も経験しているが いつでも何とも言えぬ気持ちになる
駅で別れ それぞれが違う方向へと家路に向かう
少し疲れた心のまま 私は週末の手料理でイッパイやって寝てしまった