写真は、木にできたこぶ。先日、鬼子母神の境内で発見したものだ。
なんてことはないのだが、妙に気になった。
木の表面が裂けて一つ内側の層が膨れてせり出している。
何が起こったんだろう。そしてこのこぶの中はどうなっているのか…。
今日は、父と二人でほぼ2時間を過ごす。
父はパーキンソンも患う末期の肺がん患者である。
日に日にやせ細る。胸郭のかたちはもちろんのこと、寝間着の上から腹部内臓の量塊まで見て取れるほどになった。
ただ、周囲もその状況に慣れてくる。
痰と格闘する切れ目のないうめきにさえも、私はもう動じない。
母がいないのをいいことに、父をスケッチすることにした。
前から決めていたのだ。
今日は描く。今日はチャンスだ。
ずっと見ていると、父は意外と動いていることに気づく。
足を動かし、手を動かし、微妙に体位を変える。
痰を出したいのか、仰向けのまま枕元のティッシュボックスに手を伸ばし、ティッシュを1枚つかむ。また1枚、また1枚…。
骨と皮ばかりの父の手は妙に長く見える。ゆったりとひかえめに、空中に弧を描く所作。いつのまにか父の指先に白い花が咲いていた。
その所作はとても美しかった。
やせ細り、死の空気が体中から漂っているというのに、それは見たこともないほど美しい。
結局、父をスケッチするのは意外と難しかった。その所作に見とれたのだ。
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