Michiyo Kamei "Shape of life"いのちのかたち  

画家 亀井三千代 記
「身体曼荼羅」春画と解剖図
michiyokamei diary

亀井三千代 HP/Michiyo Kamei official web site 

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死ぬかと思った

2010年07月27日 08時46分16秒 | 日記

父の容態について、
急変するから気をつけてと、
医者をはじめいろいろな人から言われている。

父は肺がんだが、何より身体が思うようにならない。
頸はもうほとんど動かせない。
それはとてもつらそうだ。

昨日は熱が出て、痰もからみ、
水を飲むのもやっとだった。

母親が外出した間、父と二人だけの時間を過ごす。

水が飲みたいとのことなので
少しずつ飲ませる。
ゆっくり飲み込むがすぐに痰がからむ。

息苦しそうに見えた。
のどが痰でガラガラ鳴っている。
ちゃんと呼吸はできているのだろうか??

呼びかけにも応じない。

今、死んだらどうしよう・・・

怖くなった。

やがて母が戻る。こんなの大したことではない、大丈夫だという。

少しは安心したものの
実は自分がパニックだったことに気づく。

あるとき「死とは何だと思うか?」という問いに、
私は「無だと思う」と答えた。
すると、その人は「僕は移行だと思う」と言った。

そのときは何となく、そういう考えもあるのかな、と
漠然と受け入れたが、
今、父を前にしてその言葉が重く思い出される。
生と死の間を往き来しているように見えるのだ。

それは、移行だ。


夏の浴室

2010年07月22日 08時22分57秒 | 日記

浴槽から見る空。

浴室が外から丸見えなので、
目隠しに植木をおいた。

カーテンをつけるのはいやだった。

木はどんどん大きくなり、今は私の背丈くらいある。

春は虫がついて大変だった。
子供の手のような小さな新芽に
アブラムシがびっしりついたときは
ほとんど気が狂いそうになった。

誰かを洗ってあげるみたいに
浴室のシャワーをのばして
虫を洗い流してあげた。

彼らは、自分で意思表示できないから
しっかり見ていてあげないといけない。

水が足りなくても、虫に喰われても
叫ぶことができない。
快適なのか、つらいのか。

それでも、つきあいが長いと
葉っぱの様子や、それこそオーラのようなもので
彼らの異変に気づけるようになる。
植物好きの人ならわかってもらえると思うのだが。。。

不思議と、何かが変なのだ。

そして、その予感は的中する。

そういえば、
植物はヒトよりもずっと良くできている、と言った友人がいた。
変なこと言うな、と思ったけど
今ではなんとなく理解できる。

植物とつきあうのは、人とつきあうより楽だ。
意思疎通も可能だと思う。

人同士は、そもそも話ができるので
つらいだの苦しいだの勝手に言ってくる。
言葉のせいで事態がややこしくなり、
わけがわからなくなることもある。
だからついつい、こちらもアンテナをはずしてしまう。
不器用ないきもの。

切実に、心を合わせなくてはいけないのは、
本当は人同士だというのに。


ゴジラ雲

2010年07月21日 10時31分47秒 | 日記

暑い一日の終わりに
空が燃え尽きる。

日中どれだけ暑くても
まあいいか、という気になる。

これは横向きのゴジラ。

夕暮れ時、電車に乗っていると、
みんなが夕焼けをじっと見ているときがある。
それほど美しくて、おもしろいのだ。

雲がいろんな形を作り出す。
いろいろ想像する。
これは自然の造形。

絵画も同じ?
それは人工の造形。

とても空なんか見てる時間ないよ、
という人もたくさんいるだろう。
そんな現実は私だっていやというほど知っている。

でもやっぱり、少しは見てほしい。
人の眼は、何かを見ることによって
こんなにも楽しむことができるのだから。


赤い玉を吐く

2010年07月14日 09時14分35秒 | 日記

源平葛が、とうとう赤い玉を吐き始めた。

これが、その写真。何とも奇妙な現象。

それでも、植物の世界ではなんてこともないのだろう。

つい、先月はこんな状態だった。
http://blog.goo.ne.jp/michika-6/e/a7a70981a4b3b4843775d9184fc6badd

たった1ヶ月程度で見違える様子。
こんな変化を空気中にさらしてよく平気なものだと思う。

変な言い方かもしれないが、
人は見た感じ、
それこそ子供でもない限り
さほど劇的な変化はしない。
見かけの変化はゆるやかだ。

だけど、その身体の中は常に動き続けている。
呼吸しては動き、食べては動き・・・
体内はなんて変化に富んでいるのだろう。
閉ざされた体内に変化を抱える私たちにとって
変化をさらす植物は、その反転。
驚異に思う。

彼らを見て、
自分の身体を自覚する。


眠れぬ夜

2010年07月12日 02時37分44秒 | 日記

時々眠れなくなる。

原因はわかっている。
あの絵を見ると、眠れなくなるのだ。

私は、毎朝5時か5時半に起きる。
だから夜は比較的早く寝るようにしているのに、
ある作家の絵を見ると
必ず眠れなくなってしまう。

作家の名は山田宴三。
日本画家である。
現存作家では、最も尊敬している人だ。
また、私に「絵」というものを
教えてくれている人でもある。
この人を知れば知るほど
作家という生き物が見えてくる。
それは、想像以上にうすら怖い魔物だ。

先日、また彼の作品を見る機会があった。
私は彼の作品が大好きだ。
黒と白のナマモノ。
うごめく、生きた平面。

それは墨を使った作品。
絵の中にたくさんの「何か」が見える。
その「何か」は絵を手がかりに
私の想像力が生んでいるものだ。

見た瞬間に絵との距離がわからなくなる。
上下とか、揺れるし。
一瞬全体を見てから、それから
絵の中の「何か」を眼でなぞる。
延々となぞる。
そのうち、それ以外の何も見えなくなり、
絵の中に閉じ込められて揺れ続けることになる。

私の眼が受けとった情報を脳が処理する。
ただそれだけのことなのに、
そのあと、私は眠れなくなる。

今夜も眠れない。

墨の絵の前で話をした。

「何がしたいのか?」
その問いかけに、うまく答えられなかった。
くやしかった。
家に戻り、必死に考えをまとめる…。

いつかもう一度聞いてほしい。
次はもっと上手に答えられるから。

山田宴三HP
http://enzoyamada.web.fc2.com/