言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

長期不況とケインズ経済学

2009-05-19 | 日記
吉川洋 『構造改革と日本経済』 (p.38)


 経済学者・エコノミストの間でかわされた論争において最も重要な論点の一つは、日本経済がこれほどの長期停滞に悩まされているのはサプライ・サイド、需要不足、一体どちらに問題があるからなのか、というものだ。結論的に言えば「両方だ」というのが本書の立場なのだが、

(中略)

 サプライ・サイドに焦点を絞る経済学者・エコノミストが後を絶たないのは、「一〇年」に及ぶ問題は「長期」の問題であり、「長期」の問題は「サプライ・サイド」の問題だ、という考え方が経済学者の頭にこびりついているからだ。林(二〇〇三)の見解は代表的なものだと言えるだろう。

 「総需要を強調するケインズ経済学でさえも、需要不足は長期的には価格の調整を通じて解消されるとされる。ケインズ経済学は、景気循環のような短期の経済変動を説明するには有効かもしれないが、九〇年代の日本のような長期の停滞を説明するには無理がある」(林 二〇〇三、三頁)。


(註: 引用文中に引用文が含まれています)

引用文中に引用されている部分には、ケインズ経済学の論理は、長期に及ぶデフレ下では、有効に機能しない、と書かれているのだと思います。説得的なのですが、もともと、ケインズ経済学は、長期に及ぶデフレ下で唱えられたものではなかったのか、という疑問が頭をもたげます。

もっとも、ケインズ経済学は、長期に及ぶデフレ下で唱えられた、長期に及ぶデフレに対処するために考えだされた理論である、という私の理解が誤っているのかもしれません。調べてみたいと思います。

中国人研修・実習生の賃金例

2009-05-17 | 日記
NHKスペシャル『ワーキングプア』取材班編 『ワーキングプア 日本を蝕む病』 (p.140)

 この制度では、研修生は労働者とはみなされず、残業をさせるなど、研修以外の目的で働かせることは禁じられている。一年の研修を終えた後になる技能実習生は、一日の労働時間を八時間以内などと定める労働基準法が適用され、最低賃金法で定められた額以上の賃金で、使用者と雇用関係を結ぶとされている。
 しかし実際は、最低賃金を下回るわずかな額で、長時間働かせているケースが全国であとを絶たない。国際貢献という制度本来の目的を大きく逸れ、研修生や実習生が、人件費を削るための安い労働力として利用されているのだ。そのため、制度の根本的な見直しを求める声が強まっている。

(中略)

 五人の中国人は、二十代から三十代の女性ばかりで、故郷に夫と子どもを残して来た人もいる。勤務時間は原則として朝の八時から夜十一時までで、その間、昼に一時間、夜に三十分の休憩があるだけだ。休日は月に一度、あるかないかだという。共同生活をしているアパートと、作業場を往復するだけの毎日だ。
 賃金は、組合に言われた通りにしている。月五万円を、研修生には「手当」として、実習生には「給料」として支払う。「残業代」は研修生は時給二百円、実習生は二百五十円だ。
 こうした待遇は、もちろん違法だ。研修生の場合は、賃金の低さ以前に、規定の時間外や休日に働かせていることが問題だ。実習生の場合は、岐阜県に適用される、時間当たりの最低賃金六百七十五円(二〇〇六年十二月現在)を大きく下回っていること、労働時間の長さや休日の少なさが問題となる。
 しかし、女性たちはもともと違法な待遇を前提に来ているので、不平不満を漏らすことはない、と井上さん(引用者註:仮名)は言う。日本ではわずかな賃金であっても、中国では大金となる。研修と実習を合わせた三年の期間内に、できるだけお金を貯めようと必死だ。食事は極めて質素で、ご飯や、根菜を煮ただけの弁当を寮で作り、パックに詰めて持って来る。粉末で作ったスープを、ご飯にかけてかきこむ。支出をギリギリまで抑え、実族のもとに送金している。


日本国内で、月に 5 万円の「給料」、1 時間 200 ~ 250 円の「残業代」で働く中国人がいる。しかも、文句を言わない。

ざっと概算すると、毎日、朝から夜遅くまで、ほとんど休みなしで働いて、年収 120 万円程度だと思います。帰国すれば大金になる中国人はともかく、日本人で、死ぬまでこの条件で働く、というのは厳しすぎると思います。


為替レートを変えれば解決しそうですが、それは個人の努力では不可能だと思われます。

母子家庭の世帯収入

2009-05-16 | 日記
NHKスペシャル『ワーキングプア』取材班編 『ワーキングプア 日本を蝕む病』 (p.97)

 男性は仕事をし、子育てや親の介護は女性の役割だという考えは未だ根強い。一方、そうした負担を抱えながら働く女性を支える社会の仕組みも整っていない。日本の母子家庭は百二十三万世帯(二〇〇三年)。別れた夫から養育費が支払われているのは、わずか十八%だ。母親の八割以上が働いているが、平均の年収は二百二十五万円。一般世帯の平均年収五百八十万円の半分にも満たない。


養育費が支払われているのは、18%。

8 割以上が働いている、というのは、「養育費が支払われていなければ、ほぼ全員が働いている」ということでしょう。


未婚女性よりも優先的に雇用すべきかどうかはともかく、母子家庭の世帯主 (女性) についての配慮を忘れてはならない、といえそうです。

ホームレスの定義

2009-05-16 | 日記
NHKスペシャル『ワーキングプア』取材班編 『ワーキングプア 日本を蝕む病』 (p.29)

欧米ではアパートなど自己の住居がなく、簡易宿泊所などを利用している人もホームレスと定義し調査も行なわれている。しかし日本では、ホームレスをいわゆる野宿者として捉えることが一般的で、マンガ喫茶や簡易宿泊所で暮らす人の数や現状について行政は調査を行なっていない。アパートに住むことを断念し不安定就労で日々の暮らしを営む人は、実態が掴(引用者註:原文は[才國])めないまま少なからぬ数に上っている。


日本では、統計データは割り増して考える必要があることになります。

日本は弱者に厳しい国、というより、見て見ぬふりをする国、なのかもしれません。

就職を望む人々の声

2009-05-16 | 日記
NHKスペシャル『ワーキングプア』取材班編 『ワーキングプア 日本を蝕む病』 (p.13)


若者たちは、「働かない」のではない。実際は、「働きたくても、働く場がない」のだ。それまで私たちは、フリーターやニートと呼ばれる若者たちは学生時代の延長のようにモラトリアムな生き方を自ら選択した人たちだと勘違いしていた。しかし、「働きたくても、働く場がない」――この単純ではあるが厳しい現実を知った時、大きな衝撃を受けた。働かない若者は、「世の中を甘く見ている」「税金すら払おうとしない怠惰な人間」だと思いこんでいた。

(中略)

出会った高校生たちは口々に私たちに訴えた。
「正社員で雇ってくれるところだったら、どこでもいいんです。安くても、厳しくてもいい。でも、本当にどこも雇ってくれない」


同書 (p.18)

「今、この会社を辞めたら先がない。しがみついていこうと思ったんですけど、母のことを思うと家を離れられなくて、退職という道を選びました。……正社員にこだわっていましたが、今は、準社員でも何でも、本当に仕事があって、確実にお給料がもらえて……というのが望みです。企業も海外だけに目を向けるんじゃなくて、日本でもこうやって働きたい人がいるんだから、日本の過疎地にも目を向けてもらいたいです」


心を動かされます。そこで、記憶しておこうと思い、書き写しています。


しかし、これを逆の立場、企業の立場でいえば、「確実に仕事があって、代金を頂けるなら、厳しくてもいい」ということになるのだと思います。

どうすればよいのか、道筋をみつけたいと思っています。