言語空間+備忘録

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消費者余剰と生産者余剰

2011-07-19 | 日記
N・グレゴリー・マンキュー 『マンキュー入門経済学』 ( p.167 )

 あなたがエルヴィス・プレスリーの未使用のファーストアルバムをもっているとしよう。あなたはエルヴィスのファンではないので、それを売ることにした。売却の一つの方法は競売を開催することである。
 ジョン、ポール、ジョージ、リンゴの4人のエルヴィスファンが競売に現れたとする。4人ともそのアルバムを欲しがっているが、支払ってもよいと思っている金額にはそれぞれ上限がある。表6-1は、それぞれが支払ってもよいと思っている最高価格を示している。それぞれの買い手の最高額をその人の支払許容額と呼ぶ。支払許容額は、買い手の財に対する評価額を測っている。それぞれの買い手は、アルバムの価格が自分の支払許容額よりも低ければ購入しようとし、高ければ購入を見送り、等しければ購入してもしなくても構わない。




 文中の表6-1を示し、引用を続けます。



表6-1 4人の潜在的な買い手の支払許容額

買い手   支払許容額(ドル)
ジョン      100
ポール       80
ジョージ      70
リンゴ       50



同 ( p.168 )

 アルバムを売るにあたって、競売を低い価格、たとえば10ドルからはじめたとしよう。4人とももっと支払ってもよいと思っているので、価格はすぐにつり上がる。競売は、ジョンが80ドル(あるいはそれよりも少しだけ高い価格)をつけたときに終わる。ポール、ジョージ、リンゴは80ドルは超える金額を支払う気はないので、この時点までに競売から脱落する。ジョンは、あなたに80ドル支払うのと引換えにアルバムを得る。アルバムを最も高い価格で評価した買い手がそれを購入することに注意しよう。
 ジョンはエルヴィス・プレスリーのアルバムを手に入れることでどのような便益を得るのだろうか。ある意味では、ジョンは安い買い物をしたといえる。彼は100ドル支払う意志があったにもかかわらず、80ドルの支払いですんだからである。このとき、ジョンは20ドルの消費者余剰を得たという。消費者余剰とは、ある財に対して買い手が支払ってもよいと思っている金額から、実際に買い手が支払った金額を差し引いたものである。
 消費者余剰は、買い手が市場に参加することで得られる便益を測る尺度である。この例では、ジョンは100ドルの評価をした財に80ドルしか支払わなかったので、競売に参加することによって20ドルの便益を得た。ポール、ジョージ、リンゴは競売から消費者余剰をまったく得ていない。彼らはアルバムを入手できず、何の支払いもしていないからである。
 ここで、やや異なる例を考えてみよう。あなたが同一のエルヴィス・プレスリーのアルバムを2枚売りに出すとどうなるだろうか。ここでも、4人の買い手に対して競売をするとしよう。簡単化のために、どちらのアルバムも同じ価格で売られ、2枚とも購入したいと思っている人はいないとする。そうすると、買い手が2人になるまで価格は上昇する。
 このケースでは、ジョンとポールが70ドル(あるいはそれよりも少しだけ高い価格)をつけたときに競売が終わりになる。ジョンとポールはこの価格で喜んでアルバムを購入しようとし、ジョージとリンゴはそれ以上の価格をつけるつもりはない。ジョンとポールはそれぞれ、支払許容額から実際の価格を差し引いた金額に等しい消費者余剰を得ている。ジョンの消費者余剰をアルバムが1枚しかないケースと比較すると、同じものに対して少ない金額しか支払っていないので、ジョンの消費者余剰は増大する。市場における総消費者余剰は40ドルである。


 消費者余剰の考えかたが説明されています。



 ここで、この考えかたを拡張します。下図において、価格が P0 のときの総消費者余剰は ### で塗り潰された部分(三角形)の面積であることはあきらかです。


 価格
   *xx      
   *##xx    
   *####xx   
   *######xx  
   *########xx 
   *##########xx         
 P0 *############xx       
   *       xx   
   *        xx     
   *         xx←需要曲線
   *          xx
   ****************************
  0             数量



同 ( p.170 )

 この例から得られる教訓は、すべての需要曲線に当てはまる。すなわち、需要曲線よりも下で価格よりも上の部分の面積は、市場の消費者余剰になる。なぜならば、需要曲線の高さは支払許容額を表し、買い手が財にどれだけの価値をつけるかを示しているからである。支払許容額と市場価格との差はそれぞれの買い手の消費者余剰である。したがって、需要曲線よりも下で価格よりも上の部分の総面積は、財やサービスに対する市場におけるすべての買い手の消費者余剰の合計となる。




 さて、ここで買い手と売り手を逆にした場合、すなわち「生産者余剰」について考えます。同様の思考過程を経れば、価格が P0 のときの総生産者余剰は ### で塗り潰された部分(三角形)の面積であることはあきらかです。



 価格
   *          供給曲線 
   *         xx     
   *        xx      
   *       xx       
 P0 *############xx        
   *##########xx 
   *########xx  
   *######xx    
   *####xx     
   *##xx      
   *xx       
   ****************************
  0              数量



 ここで、総消費者余剰のグラフと総生産者余剰のグラフを合成すれば、次のようになります。下図において、### で塗り潰された部分(三角形)の面積は、総消費者余剰と総生産者余剰の合計です。



 価格
   *xx          供給曲線
   *##xx         xx 
   *####xx       xx  
   *######xx     xx   
   *########xx   xx    
   *##########xx xx     
 P0 *############xx      
   *##########xx xx     
   *########xx   xx    
   *######xx     xx   
   *####xx       xx  
   *##xx         xx 
   *xx          需要曲線
   ****************************
  0              数量



 上記、合成グラフを見てみると、需要曲線と供給曲線の交点、すなわち市場で決定された価格・数量のときに「総消費者余剰と総生産者余剰の合計」が最大になることもあきらかです。

 以上により、「経済学の十大原理」の1つ、「通常、市場は経済活動を組織する良策である」は完全に説明された、とみてよいと思います。

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