言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

奢侈税を支払うのは誰か

2011-07-19 | 日記
N・グレゴリー・マンキュー 『マンキュー入門経済学』 ( p.148 )

 1990年に、アメリカの議会はヨット、自家用飛行機、毛皮、宝石、高級車といった品目に対する奢侈税を新たに採択した。新しい奢侈税の目的は、税を最も容易に支払うことができる人たちから収入を調達することにあった。そのような贅沢品を買うことができるのは金持ちのみなので、贅沢品への課税は金持ちに課税する論理的な方法であると考えられた。
 しかしながら、需要と供給の作用が働きはじめると、その結果は議会が意図したものとまったく異なってきた。たとえば、ヨットの市場を考えてみよう。ヨットに対する需要はきわめて弾力的である。百万長者はヨットを買わなくても全然構わない。そのお金でもっと大きい家を買ったり、ヨーロッパでバカンスを楽しんだり、あるいは相続人に巨額の資産を残すこともできるのである。対照的に、ヨットの供給は、少なくとも短期においては比較的非弾力的である。ヨットの工場は代替的な用途に簡単に転換できず、ヨットを製造する労働者は市場状態の変化に反応して進んで転職しようとはしない。
 このケースでは、われわれの分析は明確な予測ができる。需要が弾力的で供給が非弾力的であれば、税の負担は主として供給者にかかる。すなわち、ヨットへの課税は主としてヨットを製造する企業と労働者に負担をかける。なぜなら、彼らの生産物の価格が下落するという結果に終わるからである。しかしながら、労働者は豊かではない。したがって、奢侈税は金持ちよりも中流階級により大きな負担をかける。
 奢侈税の帰着に関する想定が間違っていたことは、税が施行されるとすぐに明らかになった。贅沢品の供給者は、いかに経済的な困難を経験したかを議員たちに十分に認識させた。その結果、議会は奢侈税の大部分を1993年に廃止した。


 奢侈税を支払うのは労働者(=生産者)である、と書かれています。



 著者の主張は、「増税・贅沢税のもたらす結果」で引用した本の著者(経済学者ら)の主張と同じです。

 であるならば、この部分は引用しなくともよい、とも考えられるのですが、ところが異なっています。

 実際には、両方の根拠があり、たんに著者は「論理展開の都合上、片方の根拠のみを示した」とも考えられますが、

 2種類の(異なった観点による)根拠があることは重要であると考えられるので、今回は上記の引用をしています。



 なお、(贅沢税導入後の)台湾の不動産価格動向については、現在調査中です。