言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

借換債

2009-10-22 | 日記
森木亮 『日本国破産への最終警告』 ( p.49 )

「亡国の技巧」の第二は、特例法による赤字国債まで六十年償還としたことである。赤字国債は社会資本の耐用年数とはまったく無関係で、財政学上は歳入欠陥が生じたときに発行する国債である。だから、年度内に償還するのが大原則だ。これを建設国債と同じように六十年償還としたことは、まさに「亡国の技巧」の最たるものである。
 この財務省の二つの「亡国の技巧」の結果、「借換債」というとんでもない代物を生んでしまった。こんな国債は世界に類例がない。日本の財務官僚や政治家の会計音痴ぶりが、世界の笑いものになっているが、その自覚すらないのである。借換債は現在一〇〇兆円の大台に乗っているが、これが財務省の「奥の手」だと自慢しているようでは言語道断だ。


 日本では、建設国債のみならず、赤字国債まで 60 年償還とされている。その結果、「借換債」 というとんでもない代物を生んでしまった、と書かれています。



 冒頭、「『亡国の技巧』 の第二」 は、とありますが、「第一」 は、建設 「国債の 60 年償還ルール」 です。

 60 年償還ルール自体、異常であるが、そのうえさらに、赤字国債までもが 60 年償還ルールの対象となっている。そしてその結果、借金を返すための借金、借換債が発行されるに至っている…。

 と、書かれていると、いかにも大変な状況であるかに思われますが、実態は、すこしちがうと思われます。



YOMIURI ONLINE」 の 「借換債(かりかえさい)

道路や橋などの耐用期間を60年とみなし、建設資金を調達するため、国債は60年かけて償還するのが原則だ。

 60年満期の国債は市中では消化されないため、満期5年や10年などの国債で調達し、満期を迎えたら償還する。その時に代わりに発行する国債を借換債と呼んでいる。既存の借金を継続するためのものなので、政府の新たな借金にはならない。




 「借換債」 というのは、満期 5 年や 10 年などの国債を借り換えつつ、60 年かけて償還するものなので、60 年前の借金を返すために、あらたに、60 年後に返済するたぐいの借金をしているわけではありません ( 60 年満期の国債を償還するために、60 年満期の国債を発行するのではない ) 。借換債がどんなものかについては、

財務省」 の 「借換債による公債償還の仕組み

に、グラフを用いたわかりやすい説明があります。

 要は、サラ金の借金を返すために、あらたにサラ金から借金をしているような状況ではなく、「はじめから計画的に、借り換えを前提に借金をしている」 わけです。( 著者は 「日本の財務官僚や政治家の会計音痴ぶり」 が問題だと書いていますが ) 国債の 「ご利用は計画的に」 なされていると考えてよいと思います。



 しかし、そうは言っても、現在、大変な状況であることには変わりありません。

 税収 40 兆円前後であるにもかかわらず、50 兆円を超える国債が発行される可能性がある、と報じられています (↓) 。



YOMIURI ONLINE」 の 「09年度の新規国債 50兆円示唆 財務相」 ( 2009年10月20日 読売新聞 )

環境税10年度にも

 藤井財務相は20日の閣議後の記者会見で、2009年度の税収の落ち込みを補うために赤字国債を発行し、09年度の新規国債発行額が初めて50兆円を突破する可能性を示唆した。藤井財務相は「税収の落ち込みは大きい。この問題には国債増発で対応する。(09年度補正予算の見直しで確保した)3兆円は使わない」と語った。

 藤井財務相は、09年度の税収が想定した約46兆1030億円を大幅に下回り、40兆円を割り込む恐れがあると指摘。減収分を補うために赤字国債を発行すれば、09年度の新規国債発行額が当初見込んでいた計44兆1130億円を大幅に上回る見通しを示した。

 さらに地球温暖化対策税(環境税)の導入について「議論の進み方によっては前倒し的なこともある。政府税制調査会でも話が出てくる可能性がありうる」と述べ、早期導入に慎重な姿勢から一転し、2010年度から実施する可能性を示唆した。10年度予算の概算要求が過去最大に膨らむ一方で、税収減や暫定税率の廃止などで財源が失われるため、環境税で穴埋めを図る狙いがあるとみられる。


国債の 60 年償還ルール

2009-10-22 | 日記
森木亮 『日本国破産への最終警告』 ( p.46 )

 国債が累積したのは、財務省の「亡国の技巧」による。
 その第一は、「国債の六十年償還ルール」だ。六十年がいかに非合理的な期間かは、政府が定めている社会資本の耐用年数(これとてさしたる根拠はないが)が平均三十二年しかないことをもってしても指摘できる。日本の国債が原則として六十年という超長期償還制度になっているということは、社会資本は六十年以上の耐用年数に耐えられなければならない。
 ところが、別表「社会資本の平均耐用年数」を見ると、最も長い学術施設でも五十三年だ。道路は四十五年、下水道は三十四年だ。ということは、我々の子孫は使い物にならない公共施設を抱えながら、借金だけが残っており、なおかつ金利を払い続けなければならないわけである。
 会計学の常識では、耐用年数が三十二年ならば、二十年以内の償還が原則である。
 六十年償還という年限は、政令や省令にも規定はない。いわば恣意的な年限だ。これにくらべると、日本の地方債は多くが二十年償還である。諸外国の国債でも二十年から四十年が多い。いかに日本国債の六十年償還が異常であるかがわかるのではなかろうか。


 日本の国債は 60 年償還とされているが、その国債によって造られた公共施設は 60 年も使えない。社会資本の平均耐用年数は 60 年に満たない ( すべての社会資本を平均すれば 32 年 ) 。外国の国債は 20 ~ 40 年償還が多い、と書かれています。





部門別平均耐用
年数(年)
道路45
港湾50
航空17
JR22
鉄建公団等26
地下鉄等36
NTT16
下水道34
廃棄物処理15
水道32
都市公園19
学術施設53
社会教育施設
・文化施設
48
治水49
治山47
海岸50
農業32
林業27
漁業50
郵便27
国有林34
工業用水道40
合計
(平均として)
32


 引用文中の 「社会資本の平均耐用年数」 を、左に示します ( 出典は、「経済企画庁: 日本の社会資本(1997年)」 と書かれています ) 。

 この表を見ると、たしかに、公共施設の平均耐用年数は、60 年未満であり、すべての平均耐用年数の平均は、32 年です。

 したがって、日本は、おおよそ 32 年しか使えないものを造るために、期間 60 年の借金をしていることになります。



 これはすなわち、「私たち、いまの世代の者の利益のために、後の世代に借金を押しつけている」 ことにほかなりません。

 私たちは、国債を発行して、道路や空港を造り、その便益を享受している。国債は 60 年償還であり、当面、支払いは問題にならない。お金を払わず、利益のみを享受しうるのですから、これほど好都合なことはありません。

 しかし、後の世代の者は、耐用年数を過ぎて、もはや使いものにならなくなった道路・橋・空港などの建設費用を、支払い続けなければならない。これほど理不尽な話もありません。

 さらに、道路や橋・空港などは、耐用年数を過ぎたあと、修理するなり、再び造るなりする必要もあるはずです。とすれば、後の世代の人々は、自分たちに必要な社会資本建設費用と、私たちが造った社会資本建設費用 ( のツケ ) を、両方、負担しなければならないことになります。本当に、負担しきれるのでしょうか。



 私たちは、本来の実力以上に、裕福な暮らしを享受しているのかもしれません。

 景気対策などの費用として、次々に国債が発行されています。景気対策には雇用対策としての側面もあり、簡単に 「やめろ」 と言うわけにもいかないのですが、私たちは、贅沢すぎるのかもしれません。



 それではどうすればよいのか。次は、国債について考えたいと思います。