宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

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その3-1・ ホーキング放射のメカニズム

2023-02-25 01:49:02 | 日記

さて前のページで示した様に「2つの仮想粒子の対生成がホーキング放射が始まるプロセスの最初の出来事」になります。

そうしてこの2つの仮想粒子はそれぞれが粒子と反粒子の特徴をもつ仮想粒子ですが、そのエネルギーは2つともにプラスです。

それでこのエネルギーの出所は真空であり、短時間であればエネルギーと時間の不確定性によって真空は仮想粒子にエネルギーを貸し出せる、という事によっています。



さてそれで、前のページで確認したようにホーキング放射のプロセスではエネルギーと運動量の保存則が成立しています。

そうして実は運動量とエネルギーの保存を相対論的に計算する為には座標系の設定が必要となります。

それで前のページで行った座標系の設定は「仮想粒子が対生成した、その点に慣性系=座標系の原点を取る」というやり方になっています。

そうしてその様に慣性系=座標系を設定する事で、ホーキング放射が2つの保存則を満足させている事が確認できました。



さてそれで「その座標系の設定のやり方しかできないのか?」という疑問がわいてきます。

例えば「BHの中心に座標系の原点を置くのはどうなんだ?」となります。

そうして事実、通説では暗黙の了解として「座標系の原点はBHの中心である」となっています。

その結果、通説では意図するとしないとにかかわらず「BHはホーキング放射を出してもその反動では動かないものとして扱っている」とそいう事になります。



しかしながら実際はBHはホーキング放射を出す事で動く=移動するのです。

その状況は前のページで示した様にBHの運動量は

・ホーキング放射を出す前

・BH  ・・・Pbh(=BHが前から持っている運動量)

・ホーキング放射を出した後

・BH  ・・・Pbh+P(仮想粒子=BHに飛び込んだ方の仮想粒子の運動量分)

となっており、「ホーキング放射を出した後、BHの運動量は増加している」つまりは「BHは動いている」のです。

さてそうなりますとこのBHがホーキング放射を一回も出していない時にそのBHの中心に座標系の原点を設定してもホーキング放射を一回出せばBHはその原点から移動し始めます。(追伸1)


そうしてもちろん、BHが移動し始めたから、といって一度設定した座標系の原点を動かす事=観測者が立っている慣性系を変える事はできません。

と言うのはこの後このBHは多数回のホーキング放射を出すのですが、そのプロセスを記述し運動量とエネルギーの保存則が満足されている事を確認する為には最初に決めた座標系での計算を連続的に続ける必要があるからです。

その計算の途中で慣性系を変更してしまっては運動量は保存されなくなります。



さて以上の議論から「ホーキング放射を記述する為の座標系=慣性系は最初に一つ、決めなくてはならない」という事になります。

そうして次に考慮すべきことは「ホーキング放射を出す前と後で系の合計運動量は変化してはならない」という事です。

これは又「ホーキング放射プロセスでは系には外力は働いていない」という事と同義になります。



さてそれでこの場合の系とは前のページで示した様に

・真空が仮想粒子ペアを生み出す前の系

真空+BH

・仮想粒子ペア誕生後、BHがホーキング放射を出す前の系

真空+BH+仮想粒子ペア

・BHがホーキング放射を出した後の系

真空+BH+ホーキング放射

となります。

この3つの段階をホーキング放射の度毎にBHは経験するのですが、そうしてBHの運動量はその度ごとに変化するのですが系の合計運動量には変化はない、運動量は保存されるのです。(注1)

それを逆にいいますと「そのような慣性系を座標系として選ばなくてはならない」となります。



さて、以上述べた内容を満足できる座標系の設定=慣性系の選択は「仮想粒子が対生成した、その点に慣性系の原点を取る」という事で可能になります。

そうしてその事は「仮想粒子の対生成では系の運動量は増加しない」という事と同義であり「その様な慣性系が存在する」という事の表れでもあります。(注2)



注1:この3段階のプロセスのホーキング放射 n 回目に対するより連続的な表示(Σ i=1~n)は次のようになります。

・真空がn回目の仮想粒子ペアを生み出す前の系

真空+BH+Σ (i=1~n-1) ホーキング放射

・n回目の仮想粒子ペア誕生後、BHがホーキング放射を出す前の系

真空+BH+仮想粒子ペア+Σ (i=1~n-1) ホーキング放射

・BHがn回目のホーキング放射を出した後の系

真空+BH+Σ (i=1~n) ホーキング放射

ちなみにこうして計算される系の合計運動量は、BHが何回ホーキング放射を出そうとも、BHが最初のホーキング放射を出す前にもっていた運動量の値に等しくなります。

そうしてそれが「運動量が保存する」という事の内容になります。

注2:BHに最初に飛び込む事になる仮想粒子が対生成した点に座標系の原点を設定し、以降は何時もその座標系を使う。

それはまた「観測者はいつもそうやって設定された原点の位置から観測を行う」という事でもあります。

さてその様に座標系を設定する事で「仮想粒子の対生成では系の運動量は増加しないという条件を満たす慣性系を選び出した」と言えます。

そうして「仮想粒子の対生成では系の運動量は増加しない」という事は「仮想粒子の対生成は何時もこの慣性系に対して仮想粒子ペアの合計運動量をゼロにする様に行われる」という事でもあります。

さてそれでそのような認識はアインシュタインの期待に反して「宇宙には特別な慣性系が存在する」=「仮想粒子の対生成において運動量が増加しない慣性系が存在する」という事を暗示するものになります。

ちなみに「BHと言うのは仮想粒子の対生成という(目には見えない)状況をホーキング放射と言う形に実体化する(=可視化する)装置である」と見なす事ができそうです。

そうしてこのBH装置のおかげで真空と言うものが印のないのっぺらぼうなどではなくて、真空それ自身が固有の慣性系を形造っている、という事が分かるのでした。


(追伸1):BHが動く事による効果、あるいは結果

「BHが動く」という事は「BHは運動量を持つ」ということです。

さてそうなりますと「BHを消滅させる」という事は「BHの持つエネルギーと運動量を両方同時にゼロにする」という事になります。

そうしてもちろん、この場合の運動量とエネルギーは相対論的に扱わなくてはなりません。

他方で従来の通説では「BHは動かない」のでした。

従って「BHが運動量をもつ事」は無視されていたのです。

その結果は「BHを消滅させる」という事は「BHのエネルギーをゼロにする事」ととらえられていました。

そうしてこの場合のエネルギーとは単にBHの静止質量の事でした。

さてそれで従来はBHを単に「熱放射をだすもの」として扱い「熱放射の放出によってBHの質量がゼロになればその時点でBHは消滅したのだ」としていたのです。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/XuyRX

 

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