宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

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ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・11・ブラックホールの寿命計算について(2)

2019-03-14 00:40:36 | 日記

以下の議論については「Hawking 輻射とブラックホールの蒸発」山内さんを参照しながらのものになります。
しかしながら、最初におことわりしておかなくてはならない事は、これは上記論文への批判ではない、と言う事であります。
ただ単にこの論文が「ホーキング放射とBHの寿命」についてよく分かる説明をしているから参照しているのであって、他に他意はございません。
その意味では論文著者の山内さんには感謝する次第であります。

さてまずは重力場での粒子生成についての部分です。
所定の重力がある場所では仮想粒子対の生成と消滅が、重力場のない空間よりも頻繁に起こっている、そう解釈できそうです。
但し通常は不確定性原理で許される存在時間しか、仮想とはいえ、存在できない様です。

しかしここにBHに起因するホライズンがあると、対生成した仮想粒子の一方が「必ず」ホライズンに飛び込むので、その相方の粒子は実粒子化しホライズンから離れてゆく、つまりこれがホーキング放射である、そう言っておられます。
そのようにして多くの粒子がホライズン近傍の空間から飛び出してくる、それをエネルギー別に数え上げてみるとなんと黒体放射スペクトルと一致するではないか、これがホーキングさんが見つけた事の様であります。
そうして、その際にプランクの法則と照らし合わせる事でプランク則の温度Tに相当する部分が
T=h*C^3/(8*pi*Kb*M*G)
こんな風に書ける、と言う事でした。

そうして、「それじゃあBHは黒体と見なせ、その温度が計算できたのだから、エネルギー放射も計算できるよね」と言う様にロジックがつながっていくのでした。
しかしながら、T=h*C^3/(8*pi*Kb*M*G)が本当に従来使われていた温度と同じものなのか、そこがどうも怪しい、と言うのが最初の疑問です。

確かにその量を温度としてプランク則を使えばホライズン近傍から出てくる粒子のエネルギー分布は求められるのでしょうが、そのエネルギー分布を得るのにどれくらいの時間が必要だったのか不明の様です。
1秒でそれだけの粒子が飛び出してきたのか、それとも1時間観測しないとエネルギー分布のグラフが「連続したグラフ」にならないのか、いいかえますと単位面積、単位時間当たりにホライズン近傍の空間から外に向かって(あるいは観測者に向かって)飛び出す粒子数が不明である様に見えます。

そこの所が不明のまま、「いやこれは温度と見なせるから云々」というのでは、どうにも納得がいかないのです。

そうして、2番目は「ホライズン近傍」というあいまいな場所の定義です。
一体その層の厚さはどれくらいなのか?
そうして、その層はいわゆる「ホーキング温度T」で厚みがかわるのかどうか、そこが不明です。
粒子が放出される真空層の厚みは、不確定性原理によって制限を受ける事になる仮想粒子の到達距離との関係で重要になる所です。


さて、以上の様に不明なところがあるのですが、まあある程度の前提をおきながらの概算計算を以下に示します。
但しこれは一応のめどであり、「こんな風になるかなあ」程度のものとお考え下さい。

前提としては、諸式運用は従来のやり方を踏襲する。
但しホライズン上空の粒子が発生する真空層の厚さは不確定性原理による制約をくわえるものとする、という事になります。

発生する平均的な粒子一つ当たりのエネルギー、これは温度Tに比例すると考えてよさそうですが、そのエネルギーが倍になれば存在時間は半分となり、従ってほぼ光速で移動すると考えられる仮想粒子の走行距離は半分となる。
そうなると、粒子が発生する事になる真空層の厚さは半分になると仮定するのが妥当の様に思われます。

計算のスタートとなるBHの質量をミニBHとしてずうっと取り上げてきたM=1.73*10^11Kgとします。
この質量は従来計算ですと「ビッグバン直後に作られ、今頃蒸発するはず」のBH質量になります。

このBHが出来た直後のBH温度TはT=7.09*10^11(K)です。
その時の典型的なニュートリの走行距離は3.25*10^-15(m)であり、これがホライズンへの到達限界距離となります。
(これは陽子直径の8分の1程度の距離になります。)

このBHの温度がホーキング放射を出す事によって質量がへり、温度上昇してちょうど2倍の値になると、仮想粒子の到達距離は半分になる事になりますが、これを計算式の中に含めなくてはなりません。
その比例係数をRkとしますと、それは従来の温度Tでの全放出エネルギーE(T)を表すもの、それはStefan-Boltzmann の法則そのものでありますが、それに掛け算され、Rk*E(T)が修正された全放出エネルギーを表す事になります。

そしてその比例係数Rkは、今回はRk=(7.09*10^11)/Tという形になります。
つまり、計算スタート時には修正式を使った放出エネルギー計算は修正前のものと同じ値になる、但し温度上昇に従ってその値は徐々に少なくなる、と言う様になります。

この修正をくわえて、以下の諸式運用は前掲の論文に従って行ってください。
以下結果のみを示します。

修正前のBHの寿命式:A
t=(8.41E-17)*M^3(Sec)

修正後のBHの寿命式:B
t=123800000/(7.09*10^11)*M^2(Sec)

M=1.73*10^11Kg(今回のスタート条件)の時の寿命。
A式ーー>t=435445999700000000sec=138億年(宇宙年齢と同じ)
B式ーー>t=5227314502983070000sec=1658億年
修正式BによればBHの寿命は12倍に伸びます。
ちなみに修正式Bによれば138億年で寿命となるBH質量は0.5*10^11Kgとなります。

M=250000Kg(250トン)に到達してから・・・寿命まで。
A式ーー>t=1.314sec
B式ーー>t=10916073sec=126.3日
A式では「爆発的」ですがB式では「それほどでもない」のです。

ちなみにB式で1.32秒経過後に寿命となる質量は87Kgです。
この質量が1秒強でエネルギーに変わるのですから、地球上では「すさまじい爆発」と言う事になりますが、さて宇宙規模で考えますと「線香花火」でしょうか。
とてもガンマー線バーストと呼べるような現象につながる様には思えません。


以上の計算は「まあこんな事も考えられるので、もう少し真面目にBHの寿命計算はしないといけないよね」という例題であり、参考資料と言う事になります。

注1)
上記の修正式Bは基準点にBH質量M=1.73*10^11Kgを使っていますので、この質量以下のBHの寿命推定は出来ますが、この質量をこえるBHについては新たにその質量を基準点として、上記の考え方でキャリブレーションし直す必要があります。
つまり、この修正方法は2つの計算方法のスタートラインを合わせる質量によって、いくらでも異なる修正式が生まれる、と言う事です。

この任意性をなくすためには、重力場がある真空での単位体積あたりに生じている仮想粒子対のエネルギー分布とその個数、つまりは単位体積当たり単位時間で生じる仮想粒子対についての量子論からの計算結果が必要である、と言う事になるのです。

それができていれば、後はホライズンからの距離を考慮してホーキング放射の全エネルギーをStefan-Boltzmann の法則を使う事なく決める事が出来ます。
つまりはBHの寿命を正確に決定できる、と言う事になると思われます。

注2)
そしてBHが消えるかどうかの瀬戸際、ホライズンの半径が100プランク長を切る辺りからは、このホーキング放射プロセスは古典論近似計算からはなれて、離散的、確率的に計算を進める事が必要だと思われます。
そうやって何が起こるのか、本当にBHが消える事が出来るのかどうか、確認する事が必要であります。


以上の内容についてのコメント、ご感想などは
・不確定性原理と仮想粒子の対生成までお願いします。<--リンク


http://archive.fo/bh930
http://archive.fo/GW7V0

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