宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

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ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・14・ホーキング放射のシミュレーション(2)

2019-03-21 21:55:27 | 日記
「ホーキングさんが考えたこと・13」でより具体的なホーキング放射のモデルを作る事ができましたので、離散的なホーキング放射のシミュレーションが可能になりました。
そうではありますが、BH質量が放射の量子性、離散性をを考量する必要がある前の段階では、従来の様な「古典的な連続放射モデル」がパフォーマンスに優れています。
それで以下、このシミュレーションモデルに従った場合の放射計算について述べていきます。

質量MのBHが単位時間に放射するエネルギーEは従来はこのように書かれていました。
E=σ・T^4*4・Pi・Rs^2
Rsは当該BHのホライズン半径、σがシュテファン=ボルツマン定数でありTは通常は熱力学温度ですが、ここにホーキング温度を代入します。
そして、σ・T^4の部分がStefan-Boltzmann の法則でありそれに放射体の表面積をかける事で全放出エネルギーEが求まる、そのように想定しています。

それに対して、ホライズン上空に多層に重なる仮想粒子放出層を想定するのが今回のやり方になります。
一番下の層は従来通りの記述になります。
そこから微小距離Δrだけ上に上がった放出層を考えます。
この層は上に上がった分だけ重力が弱まり、従ってその分ホーキング温度Tが下がる事になる、と言うのは前回の説明でした。
そうやってこうした放出層を何段にも積み重ねる事で、たとえばホライズン半径の2倍の地点にまで到達する事が可能です。

さてN番目の層までのBH中心からの距離をrとします。
このN番目の層の全放出エネルギーEを考えます。
それはStefan-Boltzmann の法則に従ってEr=σ・Tr^4*4・Pi・r^2と書くことができます。

ここで必要になるのはN番目の層の温度Trの値です。
そこで思い出す必要がある事は、ホーキング温度Tはその場所の重力の強さに比例する、という関係です。
BH中心から距離rの位置の重力の強さArはAr=G*M/r^2となります。
そしてその場所の温度Trは比例定数Bを使って、Tr=B*Arと書けます。

ホライズンでの温度をTsとし、その場所での重力の強さをAsとします。
ここでも当然Ts=B*Asが成立しています。
そしてAs=G*M/Rs^2です。

そうなりますとAr/As=(G*M/r^2)/(G*M/Rs^2)=Rs^2/r^2.
Ar=As*(Rs^2/r^2).
Tr=Ar*B=As*(Rs^2/r^2)*B=Ts*(Rs^2/r^2)である事がわかります。

その結果は
Er=σ・Tr^4*4・Pi・r^2=σ・(Ts*(Rs^2/r^2))^4*4・Pi・r^2になります。
ここで変数XをX=r/Rsとして導入し、上記をXを使って書き直します。
r=X・Rsであることに注意して
Er=σ・Ts^4・(1/X^2)^4*4・Pi・Rs^2*(X^2).
この式の前半が温度に関する部分で後半が仮想粒子放出層の表面積になります。

ところで、一番下の層では発生した仮想粒子の片方は必ずホライズンに飛び込むのでした。
しかしながら実はホライズンの接平面方向に飛んだ場合に限って、この粒子ペアはBHに吸収される事はないのです。
まあそれはそれとして、ホライズンから少しでも上空に離れますと、仮想粒子生成点を頂点として、BHホライズンに接線を引き、それをぐるっと一回しして出来上がる円錐の内部方向に発生した仮想粒子である場合のみ、BHはそれを吸収する事が可能となります。
その円錐を外れますと、仮想粒子はBHに吸収されることなく消える、という事になります。

さてこの円錐の一回しした接線と円錐の中心線のなす角度をΘとしますとこの円錐の立体角ωは以下のようになります。
ω=2π(1−cosθ)<--リンク

N番めの層を考えているので、その層までの距離はrです。
そうして半径Rsのホライズン球に対して距離rから接線を引き、円錐を作る事になります。
そうやってΘが決まりωを決める事が出来ます。

その状況全体を値Rsで割る事で球の半径は1となり、距離rはXとなりますが、Θとωの値は変わりません。
この状況でcosθはsqrt(X^2-1)/Xとなる事は絵をかいて確認をお願いします。
最終的にωはω=2π(1−cosθ)=2・Pi・(1-sqrt(X^2-1)/X)となります。

仮想粒子はペアで反対方向に飛び去る事を考慮してBHに飛び込める有効な粒子の割合はこの立体角を2・Piで割った値になります。
これが粒子発生を想定する球の表面積にかかる補正係数となりますから、N番めの層の表面積は最終的に
4・Pi・Rs^2*(X^2)ーー>4・Pi・Rs^2*(X^2)*(1-sqrt(X^2-1)/X)
に変わります。

以上からErは
Er=σ・Ts^4・(1/X^2)^4*4・Pi・Rs^2*(X^2)*(1-sqrt(X^2-1)/X)
↑=σ・Ts^4*4・Pi・Rs^2*(1/X^2)^4*(X^2)*(1-sqrt(X^2-1)/X)
↑=σ・Ts^4*4・Pi・Rs^2*(1/X^6)*(1-sqrt(X^2-1)/X)
↑=Es*(1/X^6)*(1-sqrt(X^2-1)/X)

こうして一番下の層、それは従来は全放出エネルギーを表す、とされていたものですがそれに所定の補正値をかける事でN番めの層の放出エネルギーを表す事が出来ます。
さて、それぞれの層の厚さはΔrとしましたがこれもRsで割る事によりΔxとなり、あとはこの層を足し合わせる、積分すれば補正値が求まる、という事になります。

「ホーキングさんが考えたこと・13」で示しました様に、ホライズン上空に2倍のホライズン半径にあたる距離までの放出層を考えればまずは十分であろうとしました。

ここでWolfram|Alphaさんの出番です。<--リンク
「微積分と解析 」を選んで「定積分」に行きましょう。
クリックすると何やら出てきます。
積分範囲と式(1/X^6)(1-sqrt(X^2-1)/X)を入力(コピペ)しましょう。
少々苦労するやもしれませんが、頑張ってみて下さい。

積分範囲1から2では   0.10124
積分範囲1から3では   0.10179
積分範囲1から無限では  0.10183
積分は発散ぜず、ホライズンからホライズン半径の2倍、X=3まで層を積み重ねれば十分である事が分かります。

従来方法ではEs=σ・Ts^4*4・Pi・Rs^2が単位時間当たりBHが放出する全放出エネルギーである、とされていました。
提案方法では補正係数0.10179を掛けたE=0.10179*Esが妥当であろう、という事になります。

こうして、BHの寿命は従来の約10倍にのびる事になった、とそういうお話であります。

注1
しかしながら、いずれにしましてもホーキング温度Tが熱力学温度Tと同等である、という証明はなされておりません。
そうでありますから、相対比較はこうして可能にはなりましたが、絶対値としての寿命はどうなんだ、という事については、「BHの放射を実測せよ」、あるいは「ほかの方法でホーキング温度Tが熱力学温度Tと同等である事を証明せよ」が答えになるかと思われます。

観測ロボットさんへ
ホライズン上のホーキング放射強さを1.0としたときX=1.1では0.329、X=1.2では0.150、X=1.25では0.105、X=1.5では0.0224となります。
上記の計算結果からわかる様に「ホーキング放射の起きている現場」はホライズンすれすれの所だけではなく、例えばホライズン上空の距離がX=1.25という場所でも放射現象は起きておりそれを観測するのはそれほどに「命がけ」という事でもない、ということであります。

ちなみにBHの発光の様式、空間発光でしかも指向性を持つような発光体と言うものは人類は今までに遭遇した事が無く、非常に特異的な発光パターンが観測できると予測されます。
それはホライズン中心部からはとても強い光のビームが出ている、それはまるでこちらに照準を合わせているかの様にも見えますが、それに対してホライズン周辺部からはあまり光が出てこない、そういう特異的なパターンを示しますので、まず見間違うという事は起こらないと予想できますので、以上の事をご確認の上測定をされますようによろしくお願いします。

注2
Wolframで1から1.0001を積分範囲として指定し、実行して「積分の視覚的表現」を見てみると、それぐらいホライズンに近くて薄い層を指定すれば「補正係数は1と出来る」という事が一目瞭然、とても良く分かります。
そしてそれがホーキングさんが世界で最初に見た状況であると思われます。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク

PS
イチロウが引退したみたいだ。
少しショックだけれど「お疲れさん」のコトバを贈りましょう。


http://archive.fo/HSFGo
http://archive.fo/xxTHm
コメント

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・13・ホーキング放射のシミュレーション

2019-03-21 15:25:23 | 日記
論文と言うのはちゃんとまじめに読まなくてはいけません。
「Hawking 輻射とブラックホールの蒸発」山内さんに書いてありました。
『Schwarzschild ブラックホールの表面重力は κ = 1/4M であるので,T = 1/ 8πM となる.
今まで1として扱ってきたプランク定数h と光速 c,重力定数 Gを復活させるとT=hc^3/8πkBMGとなる.(kB はボルツマン定数)』

ホライズンの位置での重力の強さを κと書いてκ = 1/4Mとしています。
ホライズン半径Rs=2*G*M/C^2、そうしてその場所でのBHの質量Mによる重力加速度をkとするならばk=G*M/Rs^2となります。
従ってホライズンでのkをksとするとそれは結局ks=C^4/4GMとなります。

つまりホーキングさんがやったのは、本当にホライズン上の無限小上空での微小な厚さΔでの解析結果であります。
そこでの解析結果として「黒体放射スペクトルを得た」と言っているのです。
そうして、そうであるならばBHは黒体と見なせ、その表面温度はT(K)である、従って後は「Stefan-Boltzmann の法則より云々」とそうなったのでした。


しかしながら実際はその上の層も重力を受けて仮想粒子の対生成をしており、またさらにその上もそうなっていて、そうして発生した仮想粒子がその存在時間中にホライズンにまで到達できる位置まで、ホライズン上空にそうやっていくつもの層が重層的に重なっており、本来はそれらの全ての層からの放射を足しこまなくては、積分しなくては全放射エネルギーは求まらないのでした。

そうして、そのように考えますれば、BHから離れて放射を観測する観察者にとっては、それはもはや「黒体放射スペクトルとはとても呼べないようなスペクトル」になる事は明らかな事であります。
何故ならばホーキング温度Tは所定の比例係数とその場所のでの重力の強さkとの積で表され、kはそれぞれの層が存在する位置がBH中心からどれほど離れているか、その距離をrとすれば、rの関数k=G*M/r^2となるからであります。
ちなみにホライズン半径Rsでの重力強さはksでしたがホライズン半径の倍の位置の重力強さは(1/2)^2*ks、距離が3倍ですと(1/3)^2*ksとなります。
(BHの質量Mによらないので、この表現方法は便利です。)

さてそうなりますと、ホーキング放射を出している一番下の層の温度が一番高く、その上の層の温度はそれよりも少し低く、その上はもっと低く・・・そうやっていくつもの層の重なりでのそれぞれの温度を算出し、その温度での放射スペクトルを仮想粒子がホライズンに届くかどうかを確認しながら、その各層のスペクトルを全部足しこんで、ようやく質量Mの時のBHの放射スペクトルが求まる、そういう事の様です。
そして、その放出層の積分に似た和分を取る範囲はホライズンからちょうどホライズン半径分だけ上空まで行えば実用上は問題がなさそうであり、厳密に、というのでもホライズン半径の2倍までの上空で十分の様に思われます。

各層のスペクトルを足しこむ際には、その層が持っている表面積がホライズンの表面積の何倍にあたるか、それを比例乗数としてその層のスペクトルにかける事を忘れてはいけません。
加えて粒子発生層がホライズンから離れるに従って、対生成した仮想粒子の片方が何時もすべてホライズンに向かう、とは限らず、ロスが発生する事も考慮する必要があります。

このような各層ごとのスペクトルの足し合わせ、と言うのは当該のBHには常にホーキング放射で失われたエネルギーが外部から補給される、つまり外部と熱平衡状態にある、という事を前提にしています。
実際にはそのような状況は例の2.7Kの宇宙放射とつり合いにあるBHでしか実現されていませんが、質量MのBHの実際のホーキング放射スペクトルを求める、というのであれば、そのようにするのが妥当であります。

そうして、そのようにして足しあわされたスペクトルはもはや黒体放射スペクトルの形状ではなくなり、そうしてそのスペクトルの持つ意味も本来の分光放射輝度I(v、T)と言う意味ではなく、BHのホーキング温度Tに対応した周波数別の放射の相対確率と見なすべきものへと変わります。<--リンク
そうやってBHの質量Mの数値ごとにスペクトルで表された周波数別の放射確率を決定する事ができます。
それができましたら、あとは仮想粒子の対生成が起こる位置、そして放射の起こる方向、それから周波数(つまり仮想粒子が持つことになるエネルギーの大きさ)それについてはスペクトルとして表された相対確率の大きさを考慮しながら、モンテカルロ法を使ってホーキング放射をシミュレートする、という事が可能になると思われます。

注1
上記でも述べましたが、各層のスペクトルを足し合わせた形状は温度Tの黒体放射スペクトルに対してピーク位置は周波数が低い方にずれ、また周波数の高い方のスペクトルは低い値に抑制された形になります。
つまり、温度Tの黒体放射を想定した場合よりも全放射エネルギーは抑えられる、したがってBHの寿命はその分だけのびる、という事になります。

注2
スペクトルを足し合わせたものが相対確率になる、と書きましたが、これは質量M1の時のスペクトルと質量M2の時のスペクトルを比較すれば相対的にどちらの場合の方が放射が起こりやすいかは決める事ができる、つまり放射効率の比較はできる、という意味になります。
しかしながら、絶対値としてのBHのホーキング放射効率、質量MのBHの時間当たりのホーキング放射での全放射エネルギーについては実測値は存在せず、したがって計算で得られた相対確率に時間をいれて放射効率(W)とする事は今のところは出来ない、という事になります。
それでも量子論で「あからさまにWが明示されたホーキング放射の計算」が出来るのであれば話は変わってくるのでしょうけれど。
それもなかなか難しいものと思われます。

注3
以下、ご参考までに。
「重力崩壊するダスト時空の量子化による 厳密な Hawking 輻射の導出」<--リンク
『・・・先ほどは地平面付近で近似をしたが、厳密な積分は級数展開することによって求められる。
最も優勢な項が (23) 式を与え、その他の項は補正項となる。
|β| 2 に対する最もの単純な補正項を計算すると、 |βωω′ | 2 ( 1 + 4 (3 + 10E) 2 ) (24) などとなる。
これは Graybody factor と言われる Planck 分布に対する補正因子となる。』

ホライズン上空に多層に重なる放射層を考えると、ホーキング放射は黒体放射スペクトルからずれる、というお話の様です。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク


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