宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

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ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・13・ホーキング放射のシミュレーション

2019-03-21 15:25:23 | 日記
論文と言うのはちゃんとまじめに読まなくてはいけません。
「Hawking 輻射とブラックホールの蒸発」山内さんに書いてありました。
『Schwarzschild ブラックホールの表面重力は κ = 1/4M であるので,T = 1/ 8πM となる.
今まで1として扱ってきたプランク定数h と光速 c,重力定数 Gを復活させるとT=hc^3/8πkBMGとなる.(kB はボルツマン定数)』

ホライズンの位置での重力の強さを κと書いてκ = 1/4Mとしています。
ホライズン半径Rs=2*G*M/C^2、そうしてその場所でのBHの質量Mによる重力加速度をkとするならばk=G*M/Rs^2となります。
従ってホライズンでのkをksとするとそれは結局ks=C^4/4GMとなります。

つまりホーキングさんがやったのは、本当にホライズン上の無限小上空での微小な厚さΔでの解析結果であります。
そこでの解析結果として「黒体放射スペクトルを得た」と言っているのです。
そうして、そうであるならばBHは黒体と見なせ、その表面温度はT(K)である、従って後は「Stefan-Boltzmann の法則より云々」とそうなったのでした。


しかしながら実際はその上の層も重力を受けて仮想粒子の対生成をしており、またさらにその上もそうなっていて、そうして発生した仮想粒子がその存在時間中にホライズンにまで到達できる位置まで、ホライズン上空にそうやっていくつもの層が重層的に重なっており、本来はそれらの全ての層からの放射を足しこまなくては、積分しなくては全放射エネルギーは求まらないのでした。

そうして、そのように考えますれば、BHから離れて放射を観測する観察者にとっては、それはもはや「黒体放射スペクトルとはとても呼べないようなスペクトル」になる事は明らかな事であります。
何故ならばホーキング温度Tは所定の比例係数とその場所のでの重力の強さkとの積で表され、kはそれぞれの層が存在する位置がBH中心からどれほど離れているか、その距離をrとすれば、rの関数k=G*M/r^2となるからであります。
ちなみにホライズン半径Rsでの重力強さはksでしたがホライズン半径の倍の位置の重力強さは(1/2)^2*ks、距離が3倍ですと(1/3)^2*ksとなります。
(BHの質量Mによらないので、この表現方法は便利です。)

さてそうなりますと、ホーキング放射を出している一番下の層の温度が一番高く、その上の層の温度はそれよりも少し低く、その上はもっと低く・・・そうやっていくつもの層の重なりでのそれぞれの温度を算出し、その温度での放射スペクトルを仮想粒子がホライズンに届くかどうかを確認しながら、その各層のスペクトルを全部足しこんで、ようやく質量Mの時のBHの放射スペクトルが求まる、そういう事の様です。
そして、その放出層の積分に似た和分を取る範囲はホライズンからちょうどホライズン半径分だけ上空まで行えば実用上は問題がなさそうであり、厳密に、というのでもホライズン半径の2倍までの上空で十分の様に思われます。

各層のスペクトルを足しこむ際には、その層が持っている表面積がホライズンの表面積の何倍にあたるか、それを比例乗数としてその層のスペクトルにかける事を忘れてはいけません。
加えて粒子発生層がホライズンから離れるに従って、対生成した仮想粒子の片方が何時もすべてホライズンに向かう、とは限らず、ロスが発生する事も考慮する必要があります。

このような各層ごとのスペクトルの足し合わせ、と言うのは当該のBHには常にホーキング放射で失われたエネルギーが外部から補給される、つまり外部と熱平衡状態にある、という事を前提にしています。
実際にはそのような状況は例の2.7Kの宇宙放射とつり合いにあるBHでしか実現されていませんが、質量MのBHの実際のホーキング放射スペクトルを求める、というのであれば、そのようにするのが妥当であります。

そうして、そのようにして足しあわされたスペクトルはもはや黒体放射スペクトルの形状ではなくなり、そうしてそのスペクトルの持つ意味も本来の分光放射輝度I(v、T)と言う意味ではなく、BHのホーキング温度Tに対応した周波数別の放射の相対確率と見なすべきものへと変わります。<--リンク
そうやってBHの質量Mの数値ごとにスペクトルで表された周波数別の放射確率を決定する事ができます。
それができましたら、あとは仮想粒子の対生成が起こる位置、そして放射の起こる方向、それから周波数(つまり仮想粒子が持つことになるエネルギーの大きさ)それについてはスペクトルとして表された相対確率の大きさを考慮しながら、モンテカルロ法を使ってホーキング放射をシミュレートする、という事が可能になると思われます。

注1
上記でも述べましたが、各層のスペクトルを足し合わせた形状は温度Tの黒体放射スペクトルに対してピーク位置は周波数が低い方にずれ、また周波数の高い方のスペクトルは低い値に抑制された形になります。
つまり、温度Tの黒体放射を想定した場合よりも全放射エネルギーは抑えられる、したがってBHの寿命はその分だけのびる、という事になります。

注2
スペクトルを足し合わせたものが相対確率になる、と書きましたが、これは質量M1の時のスペクトルと質量M2の時のスペクトルを比較すれば相対的にどちらの場合の方が放射が起こりやすいかは決める事ができる、つまり放射効率の比較はできる、という意味になります。
しかしながら、絶対値としてのBHのホーキング放射効率、質量MのBHの時間当たりのホーキング放射での全放射エネルギーについては実測値は存在せず、したがって計算で得られた相対確率に時間をいれて放射効率(W)とする事は今のところは出来ない、という事になります。
それでも量子論で「あからさまにWが明示されたホーキング放射の計算」が出来るのであれば話は変わってくるのでしょうけれど。
それもなかなか難しいものと思われます。

注3
以下、ご参考までに。
「重力崩壊するダスト時空の量子化による 厳密な Hawking 輻射の導出」<--リンク
『・・・先ほどは地平面付近で近似をしたが、厳密な積分は級数展開することによって求められる。
最も優勢な項が (23) 式を与え、その他の項は補正項となる。
|β| 2 に対する最もの単純な補正項を計算すると、 |βωω′ | 2 ( 1 + 4 (3 + 10E) 2 ) (24) などとなる。
これは Graybody factor と言われる Planck 分布に対する補正因子となる。』

ホライズン上空に多層に重なる放射層を考えると、ホーキング放射は黒体放射スペクトルからずれる、というお話の様です。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク


http://archive.fo/qut6D
http://archive.fo/9H1nP
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