宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

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ダークマター・ホーキングさんが考えたこと・15・ホーキング放射のシミュレーション(3)

2019-03-24 01:11:45 | 日記
さて、提示したホーキング放射のモデルで寿命の計算は一応出来るようになりました。
しかしながら、ずうっと言ってきた問題「仮想粒子の到達距離の話」の決着がまだついていない様です。
それでこのページではその事について今回提示したモデルを使って検討してみます。

まずはエネルギーと時間の不確定性関係。
ΔE*Δt=h/2程度というのが厳しめの数値の模様です。<--リンク
ちなみにこのページではhはすでにプランク定数を2*Piで割っているものとします。

さて例によって中心から距離rの位置にある粒子生成点を取り上げます
まずはrをホライズン半径Rsで割ってXとします。

その位置の温度Trはホライズン温度Tsを使ってTr=Ts*(1/X^2)と書けます。
Tsが出ましたので、プランクの放射則にその値をいれると、Tsでのスペクトルが出てくるのでした。
そのスペクトルのピークの位置はΔE/2= hν = 2.82 Kb・T です。<--リンク
ただしここで、真空から借りたエネルギーはΔEですが、2つの仮想粒子に等分に分けられるので、粒子一つ当たりのエネルギーはΔE/2となります。

そうなりますと仮想粒子の存在時間ΔtはΔt=(h/2)/ΔE=(h/2)/(2*2.82・Kb・Tr)=(h/2)/(2*2.82・Kb*Ts/X^2)。
ホライズン側に飛んだ粒子の飛行距離Δlは速度を光速とするとΔl=C*(h・X^2)/(4・2.82・kb・Ts)

Ts=(h・C^3)/(8・Pi・Kb・M・G)を入れて整理すると
Δl=((2・Pi・X^2)/2.82)*(M・G/C^2)
Rs=2・(M・G/C^2)を使って
Y=Δl/Rsを求めます。
ここでYはRs単位系(勝手にそう呼んでいるのです。)で表した飛行継続距離となり、
Y=(Pi/2.82)・X^2=1.114*X^2となります。

これで温度Trで一番多く生成される仮想粒子の飛行距離が計算できました。

次に例のBH到達可能性を示す円錐を考えます。
BHまでの一番長い距離はその円錐を作っている接線であり、その接線の長さはXをつかってsqrt(X^2-1)となります。

それで、Yの値がこのsqrt(X^2-1)より大きければ仮想粒子はBHに到達可能なのだが、短いと到達する前に仮想粒子は消滅する、そういう事になります。
それで、比率1.114X^2/sqrt(X^2-1)の値を調べる事になります。

ここでまたしてもWolfram|Alphaさんの出番です。<--リンク
上記の式をコピペして極小値と書いてリターン。
X=1.41421の時に2.228と返ってくるはずです。
2.228が最悪条件ですので、幸いなことに一番多く発生する仮想粒子は円錐の側面を含み、円錐の中のエリアに飛んでいればBHに到達できると、そう判断できます。

しかしながら、この粒子のエネルギー量の2.228倍となった仮想粒子の存在可能時間は1/2.228倍となり、つまり円錐側面に沿った飛行距離がBH到達ぎりぎりという事になります。
そして、それを超えたエネルギーを持った仮想粒子はこの円錐側面に沿って飛行した場合はBHに到達できない、という事になります。
つまり、一番多く発生する粒子の振動数の2.228倍を超える振動数に対応したエネルギーを持つ仮想粒子が発生した場合はBHに到達するのはより難しくなる、という事になります。
それらの仮想粒子は所定の飛行コースには入っているのですが、飛行時間が足りない、航続距離が足りないという事が起こりえます。

この部分の効果、エネルギーがある値より高い、高周波側の仮想粒子がBHに到達しにくくなる、と言う要素は前回・14で提示した計算式には反映されていません。
したがってその効果を考慮にいれますと、BHの寿命は前回提示した計算式よりは多少は延びるであろう、という事になります。


以下、最悪条件X=1.41421の時の状況を確認しておきましょう。
Wolframを使います。
プランクの放射則を簡略化した式x^3/(e^(x/100)-1)を使います。(注2)
ここでxは振動数を表しています。
「x^3/(e^(x/100)-1) ,0<x<1500」<--こんな風に書いて入力するとスペクトルグラフが出てきます。

x=282にグラフのピークがあります。
この振動数の2.228倍ですと628になります。
0からその値まで積分します。
「0から628の範囲でx^3/(e^(x/100)-1)を積分」を入力、
答えは5.726*10^8です。
ちなみに2000あたりまでの積分でこのグラフは飽和し、値は6.494*10^8です。
ですので振動数628までですと88.2%ほどは問題なしですが、のこり12%程度は予想したエネルギー放射に届かないという事になります。

このような状況はXが1の方に、あるいは2の方に移動するにつれて改善されていくのは、「1から3の範囲で1.114X^2/sqrt(X^2-1)の極小値」と入力したグラフ形状から読み取る事が出来ます。
そうして付け加えますれば、もしそのグラフの値が1<x<3の範囲でどこでも4以上であったとすれば「ホーキングさんが考えたこと・14」で提示した式が何の修正をする必要もなく使えたという事であります。(注1

円錐の側面にそった場合の評価は以上ですが、円錐の中心線に沿った場合はどうなるのでしょうか?
その場合は、比率1.114X^2/(X-1)の極小値を調べればよい事になります。
WolframによればX=2で4.456がその値です。
つまり中心線近傍であればグラフは1<X<3にて4以上を十分にキープできている事になります。

振動数x=282*4.456=1256で同様に0から積分してみます。
「0から1256の範囲でx^3/(e^(x/100)-1)を積分」
答えは6.485*10^8で飽和値の99.86%をカバーしますので、中心線近傍では実質上の問題はなくなります。


以上、見てきましたようにX=1.41付近で条件が最悪となり、スペクトルグラフの高周波側に相当する仮想粒子群にロスが発生する事が分かりました。
これは結局ホーキング放射の出力を下げる事につながり、ひいてはBHの寿命が前回掲示した式での計算よりも多少延びるであろう事が予想されます。

注1
さて、当方の感覚からしますと、ここでは自然は、宇宙は妙に渋ちんに見えます。
真空が貸し出すエネルギーと時間の積の値が中途半端に見えます。
中途半端に周波数カットをしている様に思えて仕方がないのです。

「ΔE*Δt=h/2程度」では「太っ腹」ではありません。
ですからきっと宇宙はこの場合は「ΔE*Δt=h程度」と対応してくれているに違いないものと、密かに思っております。

注2
元々のプランクの式にはhとKbが入っていますが、それを1にします。
そうしてこの場合はホーキング温度、ではなく仮想温度Tを100に設定しています。
そうすると hν = 2.82 Kb・Tの式からピーク周波数が282となる事が分かります。

この層の10倍の温度を持つ仮想粒子発生層でも同様に考えます。
ピーク周波数は2820となりますが、後の議論は上記本文の繰り返しとなります。
そして各積分の値そのものは変わりますが、%で表された数値は変わる事はありません。
それが「プランクの式は温度に対しては形は変わらない」という事の意味になります。

ちなみに上記式に現れている hνのhは生のプランク定数であって、2*Piでは割られていませんが、幸いな事にこの部分のhが式の変形の所に現れる、という事はないのです。


・ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧<--リンク


http://archive.fo/XG2ih
http://archive.fo/u5Sd7
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