私は中学を卒業するまで、山奥で育ちました。 当時、松茸はそんなに高価な物では有りませんでした。 今回は松茸の思い出話しです。
【父の知人の松茸山 (1)】
父は行動的な人間で、私を連れて数人の知人の家によく遊びに行きました。その一人に、村のために沢山お金を出す立派な金持ち(A氏)がおられました。広い松茸山を所有されていて、私にその山で松茸を採れと何回も勧めてくれました。
近所の年上の子供達から、A氏の松茸山に行こうと誘われました。「Aさんは時々見回りをするけど、目が悪いから、地面に伏したり、木の陰でジッと動かなかったら見付からないから大丈夫」と言っていました。
私は、A氏は目が悪くない事を知っていましたが、一緒に行く事にしました。 小一時間ほど松茸狩りをしていると、A氏が下の方から登ってこられました。 一緒に行った子供達は地面に伏していましたが、私は木の陰に立っていました。 A氏は、子供達が見えなかった振りをして、私の2メール程の所を歩いて行かれました。
子供達は「やっぱり目が悪いんだ!」と言って松茸狩りを続けました。目が悪かったら、けもの道しかない急峻な山には登れません。
【父の知人の松茸山 (2)】
県道の隣接地に製材所が出来ました。木の皮や廃材が沢山出て、毎年10月頃から4月頃まで、ドラム缶で一日中焚火をしていました。 私は下校途中に毎日その焚火で暖まりました。
ある日、猟銃を肩に担いだ中年の男性が二人、松茸を多量に持って焚火に参加しました。 彼らは、A氏の山の下の方と中腹に分かれて、誰かが松茸を沢山採るのを待っていたのです。
数人が十分過ぎるほど採った頃に、下の方にいた人が、「猪がそっちの方に逃げた!」と大声で叫んで、一発ズドンと発射しました。 上で待機していた人も、「来た来た!」とか言いながら一発撃ちました。 松茸を採っていた青年達は、袋をその場に置いて、一目散に逃げたらしいのです。
次の日に、青年が数人集まって来て、前日の怖かった話を始めました。 「もう少しで猟銃で撃たれるとこだった!」 焚火の周りいた子供達は前日、悪い二人の自慢話を聞いていたので、笑いをこらえるのが大変でした。
【父の友人の松茸山】
日本の松茸は赤松の根の近くにしか生えません。赤松を植えて20年~30年後から手入れが良ければ、松茸が生え始め、毎年少しずつ収穫量が多くなりますが、50年頃から少なくなり、大木になると殆ど生えなくなります。
実家の近くに住んでいた父の友人が、樹齢20年頃の若い赤松の山に松茸胞子を散布して、落ち葉を取り除くなどの手入れを続けていると、沢山採れる様になりました。私に、「採りに行け」と言ってくれました。
一歳年上の友達と二人で出掛けました。山の境界に金網をぐるっと巡らせて、一応は立入禁止の掲示がありました。子供達の楽しそうな声が聞こえてきて、近づくと三十人程が無茶苦茶に地面を掘って松茸を探していました。既に、沢山採っていました。
諦めて帰ろうとした時、金網の外にも赤松が数十本生えているのを見付け、行って見ると、信じられない程沢山松茸が生えていました。黙々と採り続け、二人とも段々興奮して顔が赤くなってきました。持参した大きな布袋が一杯になりました。
帰り路に、「採った場所は親にも誰にも言わない」と硬い約束をしました。この約束は数年間守られ、毎年二人で松茸狩りを楽しみました。
【叔父と松茸】
母の弟(叔父さん)は狩猟名人で、毎年20頭以上の猪や鹿を射止めていました。 時々肉がタップリ付いた”足”を軒先にぶら下げて置いてくれました。 ”シャイ”な性格で、そんな時は、何時も誰とも会わずに帰ってしまいました。
学校から帰ると縁側に大きな新聞包みがありました。 後にも先にも見た事のない、巨大な松茸が入っていました。 どこで採ったのか聞きましたが、何時もお茶を濁されてしまいました。
【友達の弁当のおかず】
父親がキノコ狩りの名人の幼友達(B君)がいました。毎年、種々のキノコを多量に採ってきて、塩漬けにして、一年中食べていた様です。
中学校3年になると、給食の無い土日に模擬試験や補修授業があって、弁当を持参しました。 B君の弁当には何時も沢山キノコの炒め物が入っていました。 B君は”うんざり”と言う顔をしていましたので、私はおかずを半分づつ交換しようと提案をしました。 美味しいキノコの炒め物にありつけた分けです。
【義理の母のプレゼント】
義理の母から、大きな松茸が沢山入った立派な桐の箱が届きました。 路上に黒山の人だかりが出来ていたので、覗くと松茸の叩き売りをしていたそうです。 「そこのオバちゃん、こんな松茸は買えないだろう!」と言われたので、数万円の値札の付いた一番大きな箱を指さして、「その値段で、2箱にしてくれたら買う」と言ってしまったそうです。
「よし! 売った!」と言われたので買ったそうです。 久し振りに松茸を堪能しました。 後で、義母の事だから、孫に食べさせたくて、話を作ったのではと思いました。
【お願い】
松茸の菌は極めて繊細です。 初めての方は松茸の採り方を勉強してから出掛けて下さい。松茸の菌が広がったのを『シロ』と呼びます。 シロからも松茸特有の臭いがするため、素人は臭いのする所を”むやみやたら”に掘り、貴重なシロを破壊してしまいます。 こう言う事は絶対に止めて下さい。
【警 告】
他人の山に無断で入って、キノコを採るのは犯罪(窃盗罪)です。立入禁止の表示の無い私有地に入るのは違法では有りませんが、許可を得ないキノコ狩り、自然薯掘り、山菜採りは違法です。 猪、鹿、野兎、雉などの狩猟で入るのは許されています。
松茸にも毒があります。いっぺんに多量に食べると、吐き気、下痢などの中毒症状になります。(私は、中毒になるほど食べてみたいです!) 父は、「腐った松茸は有毒だ!」と言っていました。
【父の知人の松茸山 (1)】
父は行動的な人間で、私を連れて数人の知人の家によく遊びに行きました。その一人に、村のために沢山お金を出す立派な金持ち(A氏)がおられました。広い松茸山を所有されていて、私にその山で松茸を採れと何回も勧めてくれました。
近所の年上の子供達から、A氏の松茸山に行こうと誘われました。「Aさんは時々見回りをするけど、目が悪いから、地面に伏したり、木の陰でジッと動かなかったら見付からないから大丈夫」と言っていました。
私は、A氏は目が悪くない事を知っていましたが、一緒に行く事にしました。 小一時間ほど松茸狩りをしていると、A氏が下の方から登ってこられました。 一緒に行った子供達は地面に伏していましたが、私は木の陰に立っていました。 A氏は、子供達が見えなかった振りをして、私の2メール程の所を歩いて行かれました。
子供達は「やっぱり目が悪いんだ!」と言って松茸狩りを続けました。目が悪かったら、けもの道しかない急峻な山には登れません。
【父の知人の松茸山 (2)】
県道の隣接地に製材所が出来ました。木の皮や廃材が沢山出て、毎年10月頃から4月頃まで、ドラム缶で一日中焚火をしていました。 私は下校途中に毎日その焚火で暖まりました。
ある日、猟銃を肩に担いだ中年の男性が二人、松茸を多量に持って焚火に参加しました。 彼らは、A氏の山の下の方と中腹に分かれて、誰かが松茸を沢山採るのを待っていたのです。
数人が十分過ぎるほど採った頃に、下の方にいた人が、「猪がそっちの方に逃げた!」と大声で叫んで、一発ズドンと発射しました。 上で待機していた人も、「来た来た!」とか言いながら一発撃ちました。 松茸を採っていた青年達は、袋をその場に置いて、一目散に逃げたらしいのです。
次の日に、青年が数人集まって来て、前日の怖かった話を始めました。 「もう少しで猟銃で撃たれるとこだった!」 焚火の周りいた子供達は前日、悪い二人の自慢話を聞いていたので、笑いをこらえるのが大変でした。
【父の友人の松茸山】
日本の松茸は赤松の根の近くにしか生えません。赤松を植えて20年~30年後から手入れが良ければ、松茸が生え始め、毎年少しずつ収穫量が多くなりますが、50年頃から少なくなり、大木になると殆ど生えなくなります。
実家の近くに住んでいた父の友人が、樹齢20年頃の若い赤松の山に松茸胞子を散布して、落ち葉を取り除くなどの手入れを続けていると、沢山採れる様になりました。私に、「採りに行け」と言ってくれました。
一歳年上の友達と二人で出掛けました。山の境界に金網をぐるっと巡らせて、一応は立入禁止の掲示がありました。子供達の楽しそうな声が聞こえてきて、近づくと三十人程が無茶苦茶に地面を掘って松茸を探していました。既に、沢山採っていました。
諦めて帰ろうとした時、金網の外にも赤松が数十本生えているのを見付け、行って見ると、信じられない程沢山松茸が生えていました。黙々と採り続け、二人とも段々興奮して顔が赤くなってきました。持参した大きな布袋が一杯になりました。
帰り路に、「採った場所は親にも誰にも言わない」と硬い約束をしました。この約束は数年間守られ、毎年二人で松茸狩りを楽しみました。
【叔父と松茸】
母の弟(叔父さん)は狩猟名人で、毎年20頭以上の猪や鹿を射止めていました。 時々肉がタップリ付いた”足”を軒先にぶら下げて置いてくれました。 ”シャイ”な性格で、そんな時は、何時も誰とも会わずに帰ってしまいました。
学校から帰ると縁側に大きな新聞包みがありました。 後にも先にも見た事のない、巨大な松茸が入っていました。 どこで採ったのか聞きましたが、何時もお茶を濁されてしまいました。
【友達の弁当のおかず】
父親がキノコ狩りの名人の幼友達(B君)がいました。毎年、種々のキノコを多量に採ってきて、塩漬けにして、一年中食べていた様です。
中学校3年になると、給食の無い土日に模擬試験や補修授業があって、弁当を持参しました。 B君の弁当には何時も沢山キノコの炒め物が入っていました。 B君は”うんざり”と言う顔をしていましたので、私はおかずを半分づつ交換しようと提案をしました。 美味しいキノコの炒め物にありつけた分けです。
【義理の母のプレゼント】
義理の母から、大きな松茸が沢山入った立派な桐の箱が届きました。 路上に黒山の人だかりが出来ていたので、覗くと松茸の叩き売りをしていたそうです。 「そこのオバちゃん、こんな松茸は買えないだろう!」と言われたので、数万円の値札の付いた一番大きな箱を指さして、「その値段で、2箱にしてくれたら買う」と言ってしまったそうです。
「よし! 売った!」と言われたので買ったそうです。 久し振りに松茸を堪能しました。 後で、義母の事だから、孫に食べさせたくて、話を作ったのではと思いました。
【お願い】
松茸の菌は極めて繊細です。 初めての方は松茸の採り方を勉強してから出掛けて下さい。松茸の菌が広がったのを『シロ』と呼びます。 シロからも松茸特有の臭いがするため、素人は臭いのする所を”むやみやたら”に掘り、貴重なシロを破壊してしまいます。 こう言う事は絶対に止めて下さい。
【警 告】
他人の山に無断で入って、キノコを採るのは犯罪(窃盗罪)です。立入禁止の表示の無い私有地に入るのは違法では有りませんが、許可を得ないキノコ狩り、自然薯掘り、山菜採りは違法です。 猪、鹿、野兎、雉などの狩猟で入るのは許されています。
松茸にも毒があります。いっぺんに多量に食べると、吐き気、下痢などの中毒症状になります。(私は、中毒になるほど食べてみたいです!) 父は、「腐った松茸は有毒だ!」と言っていました。