マリヤンカ mariyanka

日常のつれづれ、身の回りの自然や風景写真。音楽や映画や読書日記。手づくり作品の展示など。

『R帝国』

2017-12-07 | book
このところ40~50代の日本の作家の作品を続けて読んでいます。
現代日本に、世界に、
危機感をつのらせている若い小説家たちの作品に、
読みごたえがあります。

R帝国 』中村文則(1977~)  
中央公論新社、2017・8


どのようにして戦争ははじまるのか、
「今」権力者は何を考え何を準備しているのか、
凡人には考えつかない怖ろしいことを考えているに違いないと思うのですが、
それでもやっぱり、庶民には権力者の考えてることはわかりません。
このような小説を読むと、
想像力が高められ思考を一歩進めることが出来るような気がします。

架空の近未来を舞台に物語は進みますが、
人々の不安や不満が、
差別と憎しみへとつながっていく仕組みがありありとえがかれます。
権力者にとっては全て予定通りのこと、
読んでいて苦しくなります。
しかし、現に日本で、今まさにその通りのことが進んでいるのです。

今が未来を作っていく、
当たり前のことですが、
その大切な「今」を見ようとしない人たち、
世界から遮断された「ここだけの世界」しか見ない人たち。
そのような人たちばかりになったとき、未来はあるのか?と問いかけます。

特に若い人に読んでもらいたい本です。
以下に、もう2冊紹介します。

馳星周(1965~) 『雪炎

原発の町に生きる人々の苦悩は
都会に住む人には想像もできません。
政治家や電力会社と暴力団の癒着もリアル。
原発の町から送られてきた電気を、
盛大に使っている都会に住む人に読んでほしい小説です。

東山彰良(1968~)『

抜群に面白い小説です。
台湾出身、この作品で直木賞を受賞しています
台湾と中国と日本の、近代の歴史的な関係なんてほとんど何も知りませんでした。
しゃべり声や、料理の匂いや、
舟の音、海の風・・・雑多な風景の中で、
どんな事態に立ち入っても、自らの意志で行動する主人公らに
心を揺り動かされました。
辛くすさまじい内容ですが、
青春の物語も絡んで、
どこか希望を感じる終わり方で、ホッとしました。





コメント
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