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記憶探偵〜益田啓一郎のブログ(旧博多湾つれづれ紀行)

古写真古地図から街の歴史逸話を発掘する日々。ブラタモリ案内人等、地域の魅力発掘!まち巡りを綴ります。

初三郎展30日最終日。中津・耶馬渓の初三郎原図発見へ手がかり見つかる?

2008年11月29日 22時21分11秒 | 吉田初三郎
 本日29日、いのちのたび博物館(北九州市)で開催中の「美しき九州の旅
『大正広重』初三郎がえがく九州」展の会場へ出向いた。会期中最後の会場入
りである。明日30日は最終日、その前日に改めて展示の記録写真を撮影して
廻った。何度も来館いただき顔見知りになった方も数名いて、今後の研究にも
参加いただければと願う。

 来館者を観察していて思うのは、特別展のこと、初三郎のことは全く知らず
に常設展の流れで展示を見て、初三郎の世界に魅了されている人が多いこと。
子ども連れで来て、とうに子どもは飽きているのだが、お父さんやお母さんが
1点ずつ丁寧に観ているケース。また、人に連れられて観に来て自身が虜にな
ってしまい、次は家族や別の友人と連れだって来るケースなどさまざま。

 何度も来場された方は例外なく展示解説を隅々まで読まれ、作品に込められ
た初三郎の主眼や構成労力、作品の背景なども知ろうとしておられる。何度も
顔を観る方から質問を受けていると、初三郎の作品は人間の知的好奇心を刺激
するネタの宝庫だと確信。

 また、思っていた以上に肉筆画よりも小さな印刷物に見入る方の方が多いこ
と。これは肉筆画は全てウォールケースや展示ケースに入っているため、虫め
がねを受付で渡されても観にくいことが一因。初めて作品を観る方には、肉筆
であろうと印刷物であろうと関係ない訳である。

 今回は北九州市での展示だったため、同じ福岡県内でも福岡都市圏や筑後圏
などからの来場者は少ない。可能であれば福岡市や久留米市など九州一円から
のアクセスの良い場所で改めて初三郎展をやる機会がほしいと思っている。印
刷物での展示であれば、場所は選ばない。今回、西日本の大半の折図をデータ
化し終えたので、必要に応じたプリント出力・パネル展も容易となった。

 初代0系の引退も初三郎展閉幕と同じ明日30日。博多駅は連日、鉄道ファ
ンで賑わっているそうだ。11月も終わりだが、私にとって11月最大のニュ
ースは、西鉄の路面電車がひょっとして「復活」するかも、というもの。天神
や博多駅に未直結の七隈線(3号線)の動向次第かもしれないが、もとの循環
線路線は現在の福岡市の施設・名所の分散をみると可能性はあるように思う。

 また、地下鉄七隈線(3号線)の未成区間、天神南から国体通りの春吉橋手
前から先は、やはり路面電車の相乗り区間(天神南~渡辺通)を作って、瓦町
(渕上の角、キャナル入口)から博多駅前通り・博多駅を経由して住吉通りを
柳橋を渡って、渡辺通り手前で地下に潜って七隈線に合流することが出来れば
利便性は抜群だと思う。住吉通りは中央の緑地帯をそのまま軌道に戻すことが
できる。

 こういう事を考えていると実に楽しい。地図を描くだけでなく地図を構成す
る内容まで創ること、これは私自身の独立時からの夢である。博多商人と呼ば
れる先人達、福博の近代史に名を残す方々は皆、まちづくりのグランドデザイ
ンを描ける人だった。先月亡くなった岩田屋の中牟田喜一郎氏がその象徴であ
る。お別れの会には3千人が駆けつけた。西日本新聞はぶち抜き6ページを特
集に充てた。遠く及ばないが、私も少しでも博多商人の先達に近づきたい。

 夜、眠る前には必ず本を読む。どんなに遅くてもである。久々に実家のある
豊前市の産業史(昭和42年刊)を読んだ。その前に読んだのは3年前、その
時は気付かなかったいくつかの名前が目に飛び込んできた。大阪商船の設立に
奔走し役員となり、自ら大阪商船のシンボルマーク「大」の字を創作したのは、
豊前の豪商・小今井潤治翁だという記述である。大阪商船・宇島港の絵はがき
(明治40年頃)を所有しているので「小幡・小今井」の文字を確認する。

 小今井家は萬屋という屋号で千束小笠原新田藩から私札(銀札)の発行も許
されていたという。宇島萬屋の銀札、2点私のコレクションにあるのですぐに
確認。興奮してくる(笑)。今では往時を察することも困難だが、行橋、豊前、
中津、宇佐、豊後高田に至る周防灘沿岸は鉄道網・道路網が発達する以前の海
路の最重要地帯として賑わった。明治30年の福岡県納税番付を見ると、意外
にも博多や久留米などの商人の納税額は少なく、県内上位は小倉から豊前に至
る豪商に集中しているのだ。

 小今井の楢龍舎という海運会社が大阪商船の前身会社、そして明治末から大
正初期にかけての実力者。これは吉田初三郎を最初期に支援したのが大阪商船
であり、瀬戸内航路上の寄港地の鳥瞰図作品が初期作品リストに並んでいるこ
とと密接な関係がある。宇島からほど近い耶馬渓の地へ初三郎を導いたのは、
意外や小今井氏だったのではなかろうか。この時期は耶馬渓鉄道や宇島鉄道な
ど沿岸私鉄(軽便鉄道)の開業時期とも重なる。初三郎の耶馬渓作品の原図は
未発見、これは本格的に調べる必要がありそうである。

今日の写真は、初三郎展会場内の一部。
29日、来場者が少ない時間帯に撮影。

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