うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

ねこばばぁ~計画?!

2024年09月30日 | カズコさんの事

金を手にすれば、

人の心など容易く変わってしまうものなのです。


おはようございます。

杜撰な契約書と19,000円の代わりに、かずこのネックレスは消えた。

私は、その契約書と19,000円を封筒に入れ、急いで買い取り業者へ電話をした。

「クーリングオフします。」

そう告げると、誠実そうな話し方をする男が、

「それがですね、もう大阪の本社に送っている状態のようで、

お返しするとしても、来週か、再来週になってしまう可能性があるんですが。」

と言って来た。

「あの、お金とかどうでもいいんです。

母は認知症で、売ったことも覚えていないし、今でもネックレスを探しています。

そうなると、延々探し続ける始末で、挙句にはパニックになって、

盗まれたと暴れ出してしまう。認知症ってそういう症状が出るんです。

だから、どうしても返して欲しいんです。」

そう縋ると、男は

「はぁ、そうですか。少しお待ちください。

折り返し、お電話いたしますね。」

そう言って、電話を切った。

その後、男は本当に折り返し電話を寄こして来た。

「まだ、こちら(大阪)には送っていないようなので、

明日にでもお伺いできます。」

ということとなった。

こんなの茶番だ。そう思いつつ、私は

「あぁぁ、良かったです。では、明後日にお願いします。」

と丁重に伝えた。

この時、私は、ふと『あること』を思い立ってしまったのだ。


当日、担当者〇井がやって来た。

見れば、若すぎると思えるほどの、度が過ぎる男前だった。

「さっそくですが、こちらのネックレスでお間違いないでしょうか?

契約書に訂正印が必要なので、印鑑をお願いします。」

〇井は、爽やかな笑顔で、まっすぐ私を見て、そう言った。

この男に、後ろめたさは無いのだろうか?

いや、あるからこそ、まっすぐ見ているんだ。

母が書いた契約書は、住所も名前さえも間違えている。

しかし、〇井はそこに訂正印を押すのではなく、

買い取り物品に斜線を引いて、

「斜線の上に印鑑を押してください。」

と言うではないか。

私は、思わずツッコんでしまった。

「いや、まずそこぉ~?」

「ん?何がですか?」

〇井は、驚いて見せる。

「だって、住所も名前を間違っているのに、

そこは訂正しないんだなぁっと思っちゃって。」

すると、〇井は、

「えっ?あっ!!本当ですね。これは本当に気が付きませんでした。」

と、本気で驚いているように見えた。

ああ、この男は、若いくせに慣れているのだと、思えた。

「あとね、不実告知でもあると思うんですよ。

このネックレスは18金と、契約書に明記していながら19,000円は

有り得ないでしょ?」

そう言うと、

「お客様の仰っているのは、インゴットの場合ですよ。

加工した装飾品は、金相場でやり取りしないんですよ!」

〇井は、きっぱりとデタラメを言ってのけた。

もちろん、そんな訳はない。


※加工品の場合、購入した価格は、金に加工賃とデザイン料が上乗せされている。

買い取りの場合、その加工賃とデザイン料は引かれ、

金相場のグラム換算でのみ計算され、

そこから手数料(数千円)が引かれた金額で、売買する。


今回のかずこのネックレスの場合、現状の試算だと15万円弱だが、

「ああ、そうなんですか。知りませんでした。勉強になります。」

私は、そう言って引き下がった。

「いえいえ、普通そう思っちゃいますもんね。

だから、僕らがちゃんと、ご説明させて頂いているんですよ。」

〇井は、笑顔に戻り

「あっ、そうだ。お金をお願いします。」

と言った。


来た!

『あること』とはこのことだ。

お金とは、母に支払った、19,000円のことだ。

私は、満を持して

「ん?なにがですか?」

と言ってみた。

言ってみたら、さっき〇井が発した「ん?何がですか?」と似ていて

我ながら驚いた。

「19,000円です。あの、お母様にお渡ししたお金ですよ。」

諭すように話す〇井の眼を、

私は、あえて、しっかり見る意識に囚われた。

目の前の男のように、

やっぱり人は、後ろめいた時は、あえてまっすぐ見ようとする。

そして、困ったような顔で、

「それがね、無いんですよ。

母は認知症なので聞いても覚えていないんです。

本当に支払いましたか?」

私は、まるで幼子が始めて見た物を「母さん、これなに?」と言う時のように首を傾げた。

すると〇井は、

「いやいや、ここに書いてあるでしょ?

もちろん、支払いましたよ。書いてあるでしょ?」

と契約書を掲げる。

「でも、この凡ミスを見落としたんでしょう、貴方?

支払ったつもりで、そこも支払い忘れた可能性はないのでしょうか?」

「あるわけ、ないやん?!」

この時、〇井がなぜか関西弁になった。

「そうですよね。じゃあ、私が立て替えます。はい、これ。」

私は、そう言って封筒から金を出した。

「あぁぁ、びっくりしたぁ。」

その後、〇井は安堵したせいか、

「こういう類の業者は、まだまだ来ますよ。

僕ら、こういうのを使って高齢者を探せちゃうんです。」

と言って、何かのサイトを見せたり、

「電話は留守電にするとかせな、あかんと思いますよ。」

など、アドバイスまでして帰って行った。


無事、ネックレスは取り返せた。

けれど、『あること』は失敗したのだ。

『あること』とは、19,000円を猫糞出来ないかという企みだった。

どうあっても、しらばっくれれば、

それこそ、出るとこ出てもらっても、こっちが勝つ。

訴訟を起こされたとしても、訴えられるのは私ではなく、

認知症のかずこなのだ。

運の良い事に、契約書には「立ち合い者なし」にチェックされている。

要は、その時、在宅していた父の立ち合いも無かったことを証明している訳だ。

ちなみに、父は昼寝していたらしい。

だったら、私は〇井にこう言ってやればいい。

「訴えてもらっていいですよ。ハッキリさせましょうよ。」

そう、訴えるのは業者であり、訴えられるのは認知症の後期高齢者だ。

こんな訴訟は、成立しない。

「やってもらうしかないです。私は現場にいなかったので、何も分かりませんから。」

だって、本当に無いのだ。

19,000円は、実家のどこを探したって無い。

私が隠し持っているからだ。

ああ、イケる!

これ、イケる!!

2日間、ほとんど眠らず、調べに調べた結果だ。

イケる!!!


しかし、私は途中で止めた。

「当たり前だろうが、おかっぱめー!」っと思われるだろうが、

私は、あのペテン師と対峙して、ようやく下らないなっと気付いた。

金額の問題ではなく、腹いせのためにとか懲らしめるためとか、

イケメンの苦悩する顔をみてみたいとか、

そんなことを、こんな人間を相手に企てることが下らないのだと。

これじゃ、同じ穴の狢だ。

でも、19,000円は、欲しかったです!


皆様も万が一、同じような被害に遭われた時は、

『188』消費生活ホットラインへ電話してみてください。

とても、親身になって相談に乗ってくださいます。

私が、

「19,000円、猫糞しちゃおうかしらんと思つちゃうんです。」

と計画を告白した時も、

「おかっぱさん、それはまずいです。

それやっちゃうと、なんというか・・・えっと。

あっ、でもそのガッツがあれば、猫糞するのではなく、

お金を返す時に、二度と来ないでっと強く伝えましょう!」

と道を正してくれましたから。


さぁ、のんちゃんや?

のんちゃん、かかぁ、怖かった~。

悪徳業者と会うの、怖かった~。


のん太「のんは、ねこばばぁのかかぁが怖いら」