うめと愉快な仲間達

うめから始まった、我が家の猫模様。
犬好きな私は、チワワの夢を見ながら、
今日も癖が強めの猫達に振り回される。

逸らしてあげて

2022年12月17日 | カズコさんの事

最近は、

落ち着いていたのだけれど・・・

 

おはようございます。

昨日は、あと小一時間で終業という時刻、父さんからSOSの電話が鳴った。

「後で行くね。」

と伝えたが、父は、

「早く来てくれた方がいいと思う。」

と訴える。

たしかに、私は常々、早めに連絡してくれていいと、父にはそう伝えていた。

こじれ切った後では、面倒が長引くからだ。

母はいい。問題はいつも、父だ。

 

かずこさんは、怒る。

何を怒るのかといえば、それはいつだって同じだ。

一人の人間として尊重して欲しい。

それだけなんだ。

「わしをバカにして、自分だけ正しいように偉そうなものの言い方されるのが嫌や。」

かずこは、そう言って怒り狂う。

私は、長年、両親を見て来たから思う。

母の怒りは、間違っていない。

認知症になったせいで、我慢が利かなくなっただけだ。

 

男というだけで、仕事しかしてこなかった人間が、

なぜ偉そうなものの言い方をするのだろう?

私は、仕事をしながら、家事や育児に追われてきた。

なのにどうして、こんなやつに偉そうに命令されるのか?

分からない!腹立たしい!!謎だ!!!

と、かずこは純粋に感じている。

 

まったく、間違っていない訳だ。

そんな自分の妻が、認知症を患い苦しんでいる現状でも、

まだマウントしてくる父は、私からすれば、もはや哀れだ。

哀れ過ぎて、アドバイスが出来ない。

「尊重をしてやるだけでいいの」

と言ったところで、父にはまったく理解が出来ない。

おそらく、思考の出発点の段で、すでにまったく違うのだろう。

根本は、認知症じゃない。

いつだって、認知症が根本なのではない。

 

社会の矛盾や、下らない常識や、それぞれの凝り固まった固定観念が、

母の認知症のおかげで、浮き彫りになっているだけだ。

だから私は、悩んでしまう。

そして父の前でも母の前でも無言になる。

母は間違っていない。

だからといって、父が悪い訳じゃない。

私だけが正しいわけでは決して無いのだから。

 

「わし、もう出ていくつもりなんや!」

実家へ駆けつけて1時間で、この言葉を15回聞かされた時、

私は思わず、溜息のように吐き出した。

「あたしこそ、出て行きたい。」

すると、闇雲に捲し立てていた、かずこさんが敏感に反応した。

「なんでや?どうしたんや?

お前、出て行くんか?なんでや?何か嫌なことがあったんか?」

 

おや?

しめしめか?

 

かずこさんが興奮している時、

私は毎度、どう落ち着かせるか考えながら、

かずこさんの意味不明は言葉の羅列を探っている。

そこから拾い上げた言葉を機に、怒りや興奮を逸らし鎮めていく。

いつもは、なるべく楽しい話へ逸らせるのだけれど、

今日は、ここか?!と気付いた。

 

「うん、もう引っ越そうかと考えてる。

私は、こんな母さんの姿を見るのが、もう辛いんだもん。

よし、決めた。あたし、逃げる!」

わざと大げさに宣言すると、かずこさんは、

「お前が行きたいんなら、そりゃ行けばええ。

お前はお前の幸せを考えたらええんや。

わしのことは、そんなに考えんでもええんや。

ちょっと、ジジと喧嘩するくらい、屁でもねーわ、はっはっは。

わしは、負けんでな。」

と言って、ベッドに胡坐をかいて俯いた。

あんなに総毛だって見えた背中も、しょんぼりしぼんだ。

 

日はすっかり暮れて、かずこさんの部屋は薄暗くなったが、

かずこさんの足の爪が伸び切っているのは、かろうじて見えた。

「母さん、そろそろ、爪切らんといかんね。」

「ほやな。」

かずこさんは、まだ俯いている。

この人は、もう自分で爪さえ切れない。

そう思ったら、私は、さっき吐き出した自分の言葉に自分の胸を刺された。

あぁぁ、謝りながら抱きしめたい!

そんな衝動にかられた。その代わりに、

「そろそろ、晩酌する時間じゃないの?」

と、さらに話を逸らしてみた。

すると、かずこさんは、

「そうやそうや、お前も一緒に呑んでけ。」

と笑って、立ち上がった。

 

食卓では、父がとっくに晩酌を始めていた。

母と父の、ちょっとぎこちないながらも、普段のやり取りが始まった。

私も、何事もなかったように冗談を飛ばす。

何発も何発も飛ばしながら、

私は、心の中で、

母さん、ごめんね。ありがとう。と唱えていた。

 

そんな我が家の猫達は、

晩御飯が遅くなってしまって、ごめんなさい。

 

のんちゃん?

だからって、それはないんじゃない?

 

たれ蔵は、生きているのかい?

大丈夫なのかい?

のん太「ちらない」

知らないとか言わないのぉ!