出勤途中の道沿いに、
ぽつんと、一本の四季桜が生えている。
枝ぶりや葉の様子で、それが四季桜だと分かるはずはない。
私は、植物の名前に詳しくないのだ。
この道は、朝は決まって渋滞する。
動く気配がない渋滞の中、目に留まるのは、その木くらいだ。
こんな寒い中、その木の枝は桜色の花々に覆われていた。
だから私でも、それが四季桜だと気付いたというわけだ。
けれど、花が咲かない時期になれば、それが何の木だったか、
私はきっと、また忘れてしまう。
昨日も酷い渋滞にはまった。
一昨日もそうだったかもしれないが、敢えて覚えてなどいない。
ただ、昨日の渋滞は、あの四季桜のおかげで、はっきりと覚えている。
車は全く動かない。
ひらひらと自由に動いているのは、花弁だけだ。
「あっそうか、桜の花弁だ・・・」
脇を見れば、四季桜の花弁が風に吹かれ舞い落ちていく。
ぼーっとしていたせいで、ようやく目が覚めたように気が付いた。
良く晴れた冬の朝、ひらひらと桜の花弁が舞い降るだなんて、
まるで、あり得ない奇跡に出くわしたような気分になった。
けれど、現実はそんなに美しくない。
小さな花弁の行方を目で追っていると、
隣りの追い越し車線で渋滞にはまる軽自動車とその後ろのトラックの車間で、
無数の花弁が、つむじ風に巻き込まれていた。
小さな桜色の花弁たちが円を描くように翻弄される様は、
幼い子供たちが迷子になっているように見えた。
車が走り出せば、この花弁たちはボロボロに汚され、二度と飛べなくなる。
こんな時だ。
「あぁ、魔法が使えたら。」
こんな時、私は魔法が使えたらと願う。
魔法で、翻弄される花弁を全てかき集めてやりたいと。
おはようございます。
かき集めて、それからどうするのか?
そんなことは考えもせず、あぁぁ、魔法が使えたらと思える時、あるよね~。
そして、魔法使いに1つだけ、お願いが出来るという設定も、
時々想像して、そして、それを本気で考える時がある。
万が一のために、ちゃんと考えているのだ。
万が一魔法使いに、
「貴女の願いを、1つ叶えてあげましょう」と言われたら、私はこうする。
肌のシミシワを消したうえで、鼻をもう少し高くしたことの
バランスを取るために、目もぱっちり大きくして、
並びに前歯をちょっと引っ込めてから、ボディーはボンキュッボン!
にしたと同時に、足を5センチ伸ばすと共に、IQ140になり、
その足で宝くじを買い行ったら、一等が当たればいいなって。
願いは、その一つだけです。
と、一息で伝えてみる。
イケそうな気がする!
さて、我が家の白黒コンビも、
なんだか、魔法みたいだな。
のん太、子猫みたいに小さく見えるけど?
やたら大きく見えるたれ蔵の下半身は、もはや無いに等しく見えるけど?
いやはや、どうなってるの~?