青い花

読書感想とか日々思う事、飼っている柴犬と猫について。

アンドロギュノスの裔

2015-02-02 08:25:16 | 日記
『新青年』黄金期の象徴的存在、夭折の天才として知られる渡辺温の文庫版全集。その短い活動期間に遺した短編、脚本、映画に関する随筆、翻訳・翻案など各分野の作品が執筆年代順に網羅されている。わけても印象的なのは『父を失う話』だろう。ある朝、父は髭を剃り落とし、息子が初めて見る服を着て、自分一人だけ船に乗り込む。「どうも、ありがとう。お丈夫で!」この突き抜け感はどうだろう。常識もヒューマニズムも軽々と飛び越える残酷メルヘン。ノスタルジックかつスタイリッシュな作品世界は今読んでも新しい。すべての浪漫趣味者が受けとるべき珠玉の短編です。
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