昼休み。
前方から、学ラン二人がこちらに向かって歩いていた。
なにやら言葉を交し合っている。
もちろん、下方に固定されたぼくの視界には、彼らの顔は映らない。
映っているのは、上半身の消えた二人の黒服人間だ。
声が、だんだんと大きくなってくる。そして。
すれ違いざま。
「――そんなことしたら体が潰れるよ」
二人のうちの一人が、そう言った。
もちろん、ぼくに向けられた言葉ではない。
しかし、いやに耳に残るセリフだった。
……つぶれる。
ぼくは最初、不可視の超重力に体を破壊されていく人間を想像した。
しかし、それでは非現実的すぎる。
やっぱり、アレがいいだろう。
――飛び降り自殺。
ちょうど、今読んでいる小説でそういう事故が起きていたのだ。
高層ビルの屋上から、決死のダイブ。
落ちているという浮遊感。
なにかしゃべったとしても、声は空中におきざりにされる。
風ではない空気の抵抗に、目を開けているのが困難になる。
時間が引き延ばされる。
一秒が一分にも感じられる、最期の瞬間だ。
そして――
――――――
どういう音がしたのか。
地面と衝突したときの音は、どんなだろう。
しかし、そんなことに意味はない。
地面と接触した次の瞬間には。
死んでいるのだから。
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前方から、学ラン二人がこちらに向かって歩いていた。
なにやら言葉を交し合っている。
もちろん、下方に固定されたぼくの視界には、彼らの顔は映らない。
映っているのは、上半身の消えた二人の黒服人間だ。
声が、だんだんと大きくなってくる。そして。
すれ違いざま。
「――そんなことしたら体が潰れるよ」
二人のうちの一人が、そう言った。
もちろん、ぼくに向けられた言葉ではない。
しかし、いやに耳に残るセリフだった。
……つぶれる。
ぼくは最初、不可視の超重力に体を破壊されていく人間を想像した。
しかし、それでは非現実的すぎる。
やっぱり、アレがいいだろう。
――飛び降り自殺。
ちょうど、今読んでいる小説でそういう事故が起きていたのだ。
高層ビルの屋上から、決死のダイブ。
落ちているという浮遊感。
なにかしゃべったとしても、声は空中におきざりにされる。
風ではない空気の抵抗に、目を開けているのが困難になる。
時間が引き延ばされる。
一秒が一分にも感じられる、最期の瞬間だ。
そして――
――――――
どういう音がしたのか。
地面と衝突したときの音は、どんなだろう。
しかし、そんなことに意味はない。
地面と接触した次の瞬間には。
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